第30話 アルゴンの処遇

 黒翼人の城の一室で、私達はベッドに横になっているアルゴンを囲んで様子を伺っていた。

 すると、アルゴンが静かに目を覚ましたのだ。

 私をじっと見た後、小さな声で呟いたのだ。


「・・・もう、ずっと訪れていなかった魔人の国の夢を見ていました。」


 アルゴンはユークレイスの魔法で魔人の国の様子を無意識に見ていたようだ。


「目が覚めましたか?

 私の事がわかりますか?

 黒翼人の王は一時的に私に貴方を預けてくれました。

 何か話したい事があれが伺いますよ。

 貴方が行った事に関しては、黒翼人の王にお任せするつもりですが。」


 ブラックはアルゴンに向けてゆっくりと話しかけたのだ。


「ブラック様ですよね。

 昔、遠くからお見かけした事がありましたよ。

 お話ができて光栄ですよ。

 今の私からは何も話すことはありません。」

 

 アルゴンの表情は先程とは違い、とても穏やかだったのだ。

 そして、私を見ると微笑んだのだ。


「ああ、人間のお嬢さん。

 私を助けてくれたのは、あなたでは無いですか?

 駆け寄って来てくれたのを覚えています。

 ・・・それに、お嬢さんが言った通りだと思いました。

 彼女が望んでいた事は、こんな事では無かったと。」


「あの、一つ聞いていいですか?

 リオさんの具合が悪いことは知ってますよね?

 ・・・気を悪くしないでくださいね。

 その事で、貴方が関係していることはありますか?

 王家に生まれた女性は若くして亡くなるという話があるそうですが・・・。」


 私は目覚めたばかりのアルゴンではあるが、どうしても聞きたかったのだ。


「信じてもらえるかはわかりませんが、特に私は何も。

 カレンが亡くなった時、王家の都合のいいように原因不明の病と報じたのを覚えています。

 その後も確かに亡くなった王女もいましたが、地下の森に興味本位で遊びに行った事が原因だったかと。

 王家に都合の悪い亡くなり方をした場合は全て病のせいにしていたはずです。

 私は何百年も城で働いていましたから、ある程度の話は知っていますよ。

 まあ、今の王家の人達がみんな知っていたかは不明ですが。」


 アルゴンが今更嘘をつくとは思えなかった。

 確かに王家に都合の悪いことは公にしないというのも理解できるのだ。

 そうだとするならば、リオさんの症状は誰によってもたらされたものなのだろう?

 幸い、この部屋には私と魔人の友人しかいなかったのだ。


 私はブラックを見ると、私の考えがわかったようでみんなに伝えてくれたのだ。


「この話は黒翼人の方達にはまだ黙っておきましょう。」


 ブラックがそう言った後、ドアがノックされたのだ。

 そしてブロム達3兄弟が入ってきたのだ。


「アルゴンは目覚めたようですね。

 父や大臣達の話し合いの結果、白翼人との戦いは回避する事になりました。

 ・・・そして父は言ってました。

 操られていたのは自分の弱さが原因だと。

 アルゴンについては魔人の王に預けたいとのことです。」

 

 ブロムはそう言うとアルゴンに向かって伝えたのだ。


「アルゴン、身体が回復したのならば、この世界からすぐに出ていくのだ。

 そして、二度とこの世界に足を踏み入れる事は許さないとの、王からの言葉だ。

 だがどんな理由であれ、この国の兵力を高めてくれた事実は感謝しているとも言っていた。」


「・・・ありがたく、王の言葉を受け入れます。」


 アルゴンはそう言うと頭を下げて顔を上げる事はなかった。


 

            ○


            ○


            ○



 アルゴンは薬のおかげであっという間に回復し、ユークレイスとトルマが一足先に魔人の国に連れて行くことになった。

 今後については、ブラックと幹部達で考えるようだ。


 そして、私とブラック達はアルゴンの件が一段落したので、リオさんの部屋にお見舞いに行く事にした。

 実はある仕掛けをする為に、前もって精霊にお願いしようと思った事があるのだ。

 三つ貰った種は国境のところで二つ使ってしまったので、残りは一つだけだった。

 私は手に種を乗せて精霊を呼んだのだ。

 そして、リオさんの部屋に行ったら、ある物を出してもらおうと思ったのだ。

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