第23話 白翼人の動き
ユークレイス達がブロムと一緒に、王に会いに行く少し前の事である。
舞達は再度、黒翼人の世界に入ったのだ。
ブラックはユークレイスとトルマに思念で連絡をとり、王の真意を探るように指示を出したのだ。
私はまずはリオさんの部屋にもう一度行くことにしたのだ。
何か怪しいものが無かったか確認したかったのだ。
ブラックはすでに城までの空間把握は出来ているので、私達は一瞬でリオさんの部屋の外のバルコニーに移動出来たのだ。
窓をそっとトントンとノックするとブロムが驚いて出て来たのだ。
「ああ、舞さんまた来てくれたのですね。
先日は失礼しました。
無事で良かった。
魔人の王にも心配させてしまいましたね。」
「私は大丈夫よ。
リオさんの具合はどう?
気になる事があって、またこちらに来たのですが。」
私はリオさんが具合が悪くなってから、この部屋に変わった物が無かったか聞いてみたのだ。
「特に気になる物はなかったと思いますが。
最近は置いてありませんが、綺麗な花は絶えず置いていました。
外に出れないリオが可哀想かと思い、部屋を華やかにしてたのです。
この世界の花だけでなくあなた方の世界にも綺麗な花があると摘んで来てくれる者もいて・・・」
「それは・・・」
話を続けようとした時、綺麗な少女がベッドから起き上がったのだ。
「あなたが舞さんですね。
兄から話を聞きました。
本当にありがとうございました。
もう、だいぶ体の調子はいいのですよ。」
リオさんが話しかけて来たのだ。
以前見た時はもっと痩せて青白かったのだが、その時よりは少しふっくらして、顔色も良くなっていたのだ。
私は元気になったリオさんを見る事が出来て良かったと思った。
ブロムに先程の話の続きを聞こうと思ったとき、ブロムの二人の弟達が入って来たのだ。
「失礼します。
兄上、もはや猶予はありません。
アルゴンが、国境で待機している部隊に今から合流する様です。
このままでは戦争は避けられません。」
クロルは私達を見ると驚いた顔で、頭を下げて挨拶したのだ。
アルゴンの事を早急にどうにかしなければいけなくなったようだ。
「アルゴンが城にいないのであれば、兵士として潜入している私の部下を連れて、王の所にいくといいでしょう。
王の本来の考えを知る事が出来る者がいますから。
もし、ブロム殿と同じように戦争を良しとしないのであれば、アルゴンを止める事はできると思いますよ。」
ブラックは真剣な顔でブロムに伝えたのだ。
「わかりました、急ぎます。」
ブロムはそう言うと、二人の弟達には国境に行くように伝えたのだ。
自分は父である王を必ず連れて向かうので、攻撃の時刻を出来るだけ引き伸ばすように頼んだのだ。
私達も黒翼人達にわからないように国境に向かうことにした。
ブラックも行ったことがない場所には瞬時に移動は出来ないので、アクアに乗ってみんなで移動することにしたのだ。
それも、誰にも見られないルートで行くとすると、あの地下の森を抜けていくのがベストであったのだ。
「えーまたあそこを通るのか?
気が進まないな・・・。」
アクアはそう言ったが私も同じであった。
二度とあの巨大なイモムシ達には遭遇したくなかった。
「大丈夫、私に任せなさい。」
ブラックはそう言うとニヤリと笑ったのだ。
一度、人目につかない所に移動すると、アクアは巨大なドラゴンに変化したのだ。
そして私たちを乗せると、地下の森に向けて木の間をすり抜け急降下したのだ。
暗い森の中に到達すると、やはり暗闇の中に何やら怪しい気配があるのだ。
しかし、以前と違い襲ってくる気配は無かった。
「ねえ、ブラック。
結界か何かを張っているの?」
私がそう聞くと、笑いながらブラックは答えた。
「いいえ、何もしてませんよ。
前に精霊の森に行った時も同じことがあったでしょう?
魔獣と同じように、ここの生き物も本能でわかるんですよ。
自分より圧倒的に強い者には刃向かったりしないのですよ。」
なるほど。
ブラックがいるから、向かってくる者もなくスムーズに通れると言うわけなのだ。
アクアやスピネルでも十分強いと思うのだが、やはり格が違うのだろうか。
そして、あっという間に指示された国境を通り過ぎてしまい、戻ろうとした時である。
アクアが何かに気付いたのだ。
「この上は白翼人の国のはず。
私の目には一瞬だが、上に多くの人がいるのが見えたぞ。」
アクアはかなり遠くでも見通せる目をもっているのだ。
確か、アルゴンは先制攻撃をかけると言っていたはず。
なぜ、白翼人も国境に集まっているのだろう。
こちらの動きがわかっていると言うことなのか。
そうなると、こちらから攻撃を仕掛けると、罠にハマるのでは?
ブラックが魔力探知を働かせ、上の状況をある程度読み取ったのだ。
「ざっと、2万の兵士がいますね。
ユークレイス達に伝えます。
ブロム殿の弟方に話してもらうようにしましょう。
ある意味、攻撃を止める理由になるでしょう。」
再度、考える時間を持ってくれればいいが、アルゴンは思考誘導の魔法を兵士たちにかけてまで、戦いを起こそうと思っているのだ。
そんな簡単に引き下がるだろうか。
私とは関係のない国の戦いではあるが、私は不安でならなかった。
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