第17話 森からの脱出
スピネルが白い糸を全て燃やすことで、イモムシ達が消えてくれる事を望んだのだが、そんな簡単では無かったのだ。
イモムシ達は直接的な攻撃に変更したのだ。
つまり体当たりを仕掛けて来たのだ。
スピネルが作ったドームにぶつかるたびに大きな振動があった。
そもそもこちらに向かってくる姿自体見たくもないのに、このドームが破れたらと思うと、卒倒しそうであった。
「キリが無いよ。
燃やすのは簡単だけど、この辺りの草木も燃えてしまうのが問題だね。
燃え広がったら大変だからね。」
この辺り一体が燃えては上の街にも影響があるはずなのだ。
簡単に炎を使う事が出来なかった。
「強行突破するぞ。
スピネル、合図をしたらドームを解除しろ。
舞を頼んだぞ。」
スピネルは頷くとアクアの合図を待った。
アクアの額の石が光ったと思うと、それがスピネルへの合図であった。
パッとスピネルのドームが消えたと同時に、アクアはあっという間に大きくなり、木々や草をなぎ倒し巨大なドラゴンになったのだ。
まわりにいたイモムシ達は下敷きになったり、踏みつけられたり、翼が動く事で起きる風に飛ばされたり、ひどいあり様になったのだ。
スピネルに抱えられた私は浮上して、アクアの背中に乗ったのだ。
アクアは回転して太い木を避けながら、上に向かったのだ。
しかし、途中まで上がったところで、急にアクアの動きが止まったのだ。
急ブレーキをかけたような状態になったので私はアクアから落ちそうになった。
しかし、スピネルが支えてくれていたので、驚きはしたが問題はなかった。
どうしたのかとアクアの足元を見ると、何かに左足がぐるぐる巻かれて下から引っ張られていたのだ。
よく見ると、木と一体化して隠れていたカメレオンのようなものが、アクアの足に舌が巻き付いていたのだ。
もちろん、アクアほどは大きくは無いが、かなりの大きさのものであった。
今度は巨大な爬虫類系とは、どうして嫌いなものばかり現れるのだろう。
ヘビやカメレオンなど、舌が長い爬虫類が嫌いなのだ。
アクアは足を振り回して、カメレオンのようなものを振り落とそうとしたが、かなり巻き付いており離れないのだ。
見かねたスピネルは左手に炎の剣を作り、アクアの足に巻き付いた舌を躊躇なく切り捨てたのだ。
そして、アクアに乗った私達は暗い森を抜けて、黒翼人達の街のあるところまで上がって行けたのだ。
ドラゴンの姿のアクアを見られるのも問題なので、勢い良く上がった後、街から少し離れたこの世界の入り口の辺りに降りたのだ。
「二人ともありがとう。
地下の森が燃えなくてよかったわ。
でも、二度と行きたく無いところだわ。」
アクアは人型に戻ると、こう言ったのだ。
「あの踏んづけた時の感覚。
二度と味わいたく無いぞ。
それに、舌が足に巻きつくなんて。
燃やせるものなら燃やしたかったぞ。」
アクアは苦々しい顔をして話した。
「それにしても、地下にあんな場所があるなんてね。
それに、魔人の国の絵は一体どういう事なんだろう。」
スピネルがそう言うと間髪入れずに声をあげたのだ。
「簡単な事だよ。
魔人の国に、住んでいた者がこっちに持って来たのだよ。
あの異世界へのトンネルを他の者が知っていてもおかしくは無いからな。」
確かにその方が、合点が行くのだ。
魔人の世界に長く留まれない黒翼人が絵を描いて持って帰るより、魔人である何者かが黒翼人の国に持ち込む方が簡単なのだ。
そう話をしていた時に二つの黒い影がこっちに近づいて来たのだ。
いち早くアクアが発見し木の影に隠れて見ていると、見た事がある二人だった。
「あ、クロル達だわ。
大丈夫よ。」
それはブロムの二人の弟達であった。
クロル達は私を見つけると、すぐに私の元に降りて来たのだ。
「舞さん、大丈夫でしたか?
行方不明になったと聞いて、兄から捜索するように言われていたのです。」
私は魔人の友人である二人を紹介した。
彼らのこともブロムの弟であり、病気のリオさんの兄達である事をアクア達に伝えたのだ。
「では、この方達も魔人なのですね。
この国にすでに三人の魔人の方が来ており、兄上が対応しております。
彼らも舞さんを探しに来たと言ってました。
一人は魔人の王でしたよ。」
ブラックがこの世界に来ている。
私は何だかその事を知って、嬉しく感じたのだ。
心配・・・してくれているのだろうか。
早くブラックと合流したいと思ったのだ。
それはそうと、地下の部屋で見た絵や暗い森についてクロルとアルに聞いてみたのだ。
「あの森を抜けたんですね。
すごいですね。
正体不明の生き物がウヨウヨいるので、下に降りる事はないのですよ。」
クロルは青ざめた顔で話した。
「建物の地下があることは知っていたが、行ったことは無かったな。
今は使われていなくて、下につながる階段も封鎖されているから、何があるか知っている者も少ないだろう。」
アルはぶっきら棒に話した。
王家の人間でも知らないとなると、本当に秘密の部屋という事らしい。
だが、あの絵を持ち込んだ者が必ずいるはずなのだ。
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