第335話  神とは違う尺度の眼



3月17日朝、サント海商国のバーツさんから移民面接の準備が整った連絡が入った。


面接予定日は3月28日(光曜日)朝9時からバーツ海神商会の港湾事務所で行いたいと予定を聞いてきた。もちろん予定があってもキャンセルで行く(笑) ガイナックの軍用魔石の相場は焦らなくて良いと言われた。


コアさんから、密偵のベンジャーさんはハルバス公と一緒に公爵領に向かったそうだ。もう一安心。


唯一疑問なのは俺の恩寵の話を一切聞いて来なかったことだ。恩寵の質問から派生するシナリオが当初の作戦のままだと発動しなかった。 俺の事をとハルバス公爵が言った瞬間にシナリオを改変して俺の恩寵で行った事を導師とアルノール卿に全部被せる作戦に見事に乗せたコアさんのが際立った(笑)


疑われている恩寵を聞かれ、それをアルの恩寵では無い事を一つ一つの実例を出して説明するより、コアさんの説明の方がワザとらしく無く信憑性がより高くなるのだ。


思い出すたびに笑えて来る。


食事後の朝の9時、宿の前に今日の護衛の王都守備隊の人と一緒に貴族院の政務官と執政官が四人見学に来たので大司教が快くOKした。守備隊の小隊長に野次馬が解散した後に物取りが何件か発生したと聞いた。


野次馬で陽が落ちて家に帰るのが遅くなり街路灯で明るいので近道で寂しい道を歩いた者が多数いたのだ。俺の遭遇した昨日の強盗は野次馬狙いじゃ無いけれど、やっぱ明るくなっても裏道の夜は怖い。


S.Aは人口が多い所に集中して建てるので人通りが多く野次馬が溜まり易い。そんな場所は裏道も近いのだ。スリ、物取り検索で野次馬を見ると物色してるのが二、三人居た。そのまま守備隊に言い付ける(笑)


言い付けて守備隊が向かった瞬間に気が付いて脱兎だっとのごとく逃げ、守備隊員に追われて行くのが面白い。


検索していて、あそこの二階の右側の部屋に昨日の泥棒いますと伝えると守備隊が踏み込んで捕まえて来る。悪い奴は守備隊見ただけで逃げるか挙動不審になるという(笑) 警察二十四時!みたいだ。


そんな事をしながら大司教が錫杖を振るうとS.Aがみるみる形を成して一緒に警備詰所が出来上がる。ゲートにフクロウの小さな像を作り終わると春らしく沈丁花じんちょうげが芽を出してみるみる花が咲いて行く。シズクの芸だ、その春の香りを一陣の風で群衆に撒き散らすスフィア。


政務官と執政官も最初は目が点になっていたが、慣れたら拍手する様になって、野次馬たちも拍手してくれるようになった。そして、シレッとあの人怪しいですと指差すと逃げて行く、守備隊が追って行く。リアルなで面白い(笑)


お昼の時間で政務官と執政官は納得して帰って行った。同僚たちにも見学させて欲しいと大司教にお願いして帰った。


芝生でお昼を食べていると貧民の子が近くで見ていたので何気に野菜サンドを一つやった。やったら最後!近くの貧民や流民の子が二十人ほど集ってどうしようもなくなってしまった。


「アル君!何やってんの!」

「アル!いい加減にせい!」

「ごめんなさい、ごめんなさい。もうしません」


そんな問答の合間にもアルムさん、クルムさんの弁当を奪いに来た貧民の子の手をバシバシと叩いて撃退している。


「こらー!」守備隊が追い散らしてくれた。


貧民の子が居なくなっても、護衛二人が御子に罵声を飛ばす大司教一行。


どうしても人口の多い平民街にS.Aを作る都合上、裏に入ったすぐに貧民街もあるのだ。馬糞だけじゃ無くて人糞もたくさん落ちてるぞ!あーもう!クソ!と捨て糞に当たってクリーンで粉に消す。


ティン!と来た。


取り合えず追い散らされてない周りにいる貧民の小さな子たちに持ってた飴を一個ずつやって帰した。


「コアさん、サルーテに貧民連れてっていい?」

「構いません」

「そんじゃ、夜に誘拐して来る」

「アル君!(笑)」

「それは良いのか?盗賊ではないぞ!(笑)」


「貧民は誰も守ってくれないからさぁ。貴族は守る義務も無いから追い払うでしょ?居なくなれば良いんだよ。王都で死のうがサルーテで死のうが一緒だよ。働かないなら野垂れ死ねだ!(笑)」


「アル君、またまたー!(笑)」

「面倒見るんじゃろが、アル(笑)」


「見ないよ、仕事のある場所に誘拐するだけ(笑)」

「あっちでコアさん達と用意しておくわね」

「今日の20時なら家族とか揃っていいかな?」

「貧民ならいるんじゃないの?」


「そんじゃさぁ、メイド部隊が預かってる流民互助会のお金で露店で食べさせて最初のキューブハウスや毛布の面倒見てあげて、朝にはS.Aの鑑札持たせて綺麗にして四部会に預けちゃってくれる?あいつらに仕事斡旋させて面倒見させるから」


「かしこまりました」

「一日大銅貨五枚は稼げるよね?」

「城壁のガラ運びでもそのぐらいかと」

「充分、一日働いたらもうやって行けるさ」

「お腹いっぱい食べられるかと(笑)」


「あ!一週間したら互助会の会費取るように(笑)」

「アル君!(笑)」

「それはどうなんじゃ?(笑)」

「困った時の互助会。困ってないなら取るよ(笑)」


「新しい方のキューブハウスの前が良いかな?」

「そちらに四部会を集合させておきます」

「そっちの方が話が早いか、お願いね」

「お任せください」


「さぁ!お昼からも頑張りましょう」


・・・・


15時半の休憩にお父様から三件の街路灯契約が済んだ連絡を聞いた。宿に案件を届けてくれるそうだ。


・・・・


貧民、仕事ない、家族、働きたい。検索すると結構いた。

流民センターの受け入れがパンクするといけないので最初は二百人をシャドが巻いて連れて行った。


・・・・


明は良かれ悪かれ親のスネをかじる学生だった。帝大には色々な国から奨学金を受けた留学生が居た。発展途上の国が国費で優秀な生徒を送り込んで来るのだ。


地球でもこの世と同じく途上国の多くの若者が学校に通わず、職業訓練も受けず、名前も書けず、就業していない状況なのだ。貧しい国を先進国並みにすると留学生は語った。


明の地元にはホームレスが沢山いた。おっちゃんが乳母車に生活の全てを乗せて歩いていた。それでも高校は出ているのだ。景気の良い時代にはいくらでも仕事があり、日々の仕事を求める人であふれかえっていたと聞いた。しかし時代に取り残される様に一人で路上生活していた。


映画を見るとスーツに美女を連れて専用ヘリで次のビジネスやパーティーへ飛び回る富豪の生活があった。そんな専用ヘリが飛び回る空の下ではスラムで何ドルを盗み、人を撃ち殺す一瞬の世界も映画には描かれていた。


留学生の言葉、映画で描かれる境遇の違い、街を歩くホームレス、その対比を滑稽だと思っていた。生まれた場所、生まれた環境、与えられた教育で天と地の差もある今を皆がひしめき合って生きていた。その対比を受け止めきれずに当たり前の事に気が付かなかった当時の明がいた。


この世界も一緒だ。きらびやかな法衣を着て歩いても、今食べる物が無い者がすぐ近くの手の届くところにいる。アルは一度死んで戻ってきた魂だ。人はどんな境遇に生まれようと魂を磨いて帰る事を今は知っている。物質的な差など磨く魂に取っては意味が無いのだ。器の世界を何度も旅する魂を知っている。旅の途中に一時留まる現世、器としてやることさえやればアルには未練が無かった。


そんな不公平に見える現世。善かろうが悪かろうがしてやれることがあるなら力になってやりたかった。サンドイッチが欲しくて群がるならそんな街にいる必要などない。


そんな世界はクソ喰らえだ、新しい街で新しい人生を見つけた方がいい。街を見捨てて食えるところを斡旋するから外に行けばいい。傍から見れば偽善と思うかもしれない。


一回死んで、その世界を知っているのだ。それを知ること。魂の本質を知れば正義も悪も偽善も何もかも、だと知っている。人の作った物に踊らされたくなかった。宗教、政治、法律、教育、アルは真理の眼で宇宙のことわり、本質を視て死んだのだ。人の勝手な思い込みや世界観や固定観念に毒されて本質が見えないのは害悪とさえ思っていた。


人が蓄積した知識は必ず先人の知識を元に織りなすために形骸化し、それを理解すれば己の意思や己の考えとして肯定してしまうが違う。世の正義と悪を決める法律がそうなのだ。そんな物は根本が違えばすべてひっくり返ると一緒なのだ。


順法の言葉の元、その時代の法律には人種差別、異教差別、民族差別とその土地土地によって差別は異なり、人権は無かった事を当時は是として来た地球。奴隷が法律で駄目になれば法律で定められてない借金で縛る、農園に住ませた家族で縛る。違う話なら海に流す下水を法律の元で浄化ししすぎて海洋生物を絶滅に追い込む事を最近知った人類だ。マイクロプラスチックの問題もそれを発明した時点では画期的な品物だったがその末路を最近知って愕然がくぜんとする人類なのだ。


※(海の貧栄養価が進み微生物が死滅するサイクルで植物プランクトンや動物プランクトンが生きられず、藻類が減少し魚や貝が食べる微生物が居なくなり魚も少なくなって海獣も少なくなるサイクル)


同じ様に戦時中だから、防衛だからと大量殺戮兵器や核ミサイルの使用をほのめかす国、保有しようとする国。人を殺したら懲役何年と裁く国が大多数の中、ミサイルで一般人を殺す者は裁かない世界。核廃絶に口だけの祈りを捧げながら、非核三原則を掲げるのに核廃絶条約に調印しない国もある。


その国は調印しても、と言ったそうだ(笑)


国民に還元されない税は意味が無くても続ける国だ。貧しい民に鼻も引っ掛けないのはこの世みたいだ。


声を上げても届かない。真理を視た法学生だったアルは思う。順法の精神は何処にあるのか?法自体が不完全なのだ。新しい犯罪被害に対応して法が次々と改正されて行く世界。最高裁は何故裁かないのか、地球も不完全な人の定めた勝手な理屈に振り回されている事を知っている。


それは人を守るために制度化した国が、いつの間にか国を守るために人がいる本末転倒の世界だ。だからそうなっていたテズ教国を狩った。


でも、矛盾だらけの世界でも良いとアルは知っている。失敗から人は学び先へ進むのだ。失敗を知ったら反省すれば先に進む。不完全こそ完全への道だ。完全は言い過ぎかも知れないが少しでも良い方向へは進むのだ。


道草を食いながら・・・。


人の魂が器に入り人生を磨く尊い行為は秩序だろうが混沌だろうがしか無い。時代や歴史や化学や文化や法律や教育など、その時代に生まれた器を取り巻く環境に沿って磨くだけだ。。延々と続く魂の輪廻の旅でやがていつかは辿り着く創造主への道を歩くだけなのだ。どんな綺麗ごとを言っても、どんな悪事を働いても魂が磨かれるか曇るかで自分で責任を取るだけだ。


究極の自己責任だ。どれほど人が現世に引っ張られ魂を磨く以外の事に目が行くのか、人の貴賎や名誉、金銭欲や愛欲、物欲に振り回され人を踏み台にする人もいる。人間以外にそんな動物はいない。それで磨くも道草食うのも器に入った自由の現世。堕ちる者も浮かぶ者もいる。堕ちようが浮かぼうが自己責任だ。


だから何も助けなくて良い。だから誰にも言わない。誰もアルが視て来た事を知らないからだ。何も言わなくても気が付いた者は反省して先に進む。何も言わなくても、何もしなくても神々の様に磨いて先に進むのだ。アルは何もしなくて良い。


アルは分かった上で感謝と義理でやっている。

助けてくれた神様に、生かして連れて来てもらったこの世界にとても感謝している。生まれも良い、周りの人も優しい、食べたい物が食べられる、加護だってくれた。アルはとても感謝している。


感謝しなさい、感謝を神に祈りなさいと言うのは実は自分への言葉だった。感謝する思いで、神が見守る人達を助けている。人を多数巻き込む混沌をアルは防ごうと思っている。


何も考えていない。感謝するだけだ。

義理とは世の道理だ、神に感謝の贈り物も金品も通俗的な物は送れない、そんな物は穢れの元だ。だから神への感謝の気持ちを神の見守る魂たちに良かれと尽くす。


神の加護と恩寵を使い、神の見守るを磨ける環境に導いている。与えるつもりなど無い。安易に助けるつもりなど無い。安易に助けては魂は磨けない。器で生まれた現世で生き延びる事、より器が魂を磨ける環境を作る事を考えている。


神に言わせたら戦争に巻き込まれるのも、盗賊に殺されるのも人の人生と言う。神に混沌は捨て置けと言われた。


曇る者と磨く者を一緒に考えるなとも言われた。この宇宙が生まれてから那由他なゆたの年月を見ている神にはそうだろう(笑) 


アルはそんな話を鵜呑みにしていない。


一寸の虫にも五分の魂ということわざがある。細菌から植物、動物からモンスターまで魂はあるのだ。アルはその魂のあるがままに磨こうと頑張る生き物たちを知っている。カゲロウという虫は成虫になって何時間しか世を謳歌おうかしない。それは子孫を残す為だけに成虫になるという究極に凝縮されたカゲロウの人生の集大成なのだ。アルは人間だ、情報を得て体験してカゲロウの様に人間としての集大成として磨く事を考えている。


明は一生を終えた。

終えた一生でおぼろげながら知っている事がある。


明の知っている事は一つだけ。そのやり方しか知らない。ただの大きな小学生だった明が入った野球の世界。そこで見る事、知る事、話す事の全てが体当たりの体験だった。上下関係もそこで学んだ、人は生きて触れ合うだけでお互いのベクトルを重ね合わせてより良い方向へ行けるのだ。


明は自分を取り巻く環境を皆と一緒に体験する事で人が描くベクトルの選択肢を視た。選択肢を自分の描く夢と合成すると自然とより良い方向や未来が見えて来る事を知っている。リトルリーグからシニアリーグ、中学野球から練習会に行った事、全てが明を形成する体験だった。


アルは同じ時代に一緒に生きるなら戦争で20歳で死ぬより、100歳まで生きた方が良いに決まってると思う。神に取っては一瞬のまたたきでも人に取ったら100年は長い。善く魂を磨けば、輪廻の順番は早く、転生を待たないと聞いた。長く現世で生きて善く磨けば行列に並ばない分 得じゃん!と思っている。


アルは神とは違う尺度で現世の魂の一生を見る。


神の加護と恩寵で、磨く環境を整えてあげる。


だからサルーテのそんな環境に放り込む。閉塞した貧民街での生活から働けば食える場所に放り込む。その世界を体験する事で見えて来る欲もあると思う。その将来の希望の欲を見据えて磨けば良いのだ。失敗したら反省して磨けばいいのだ。


ロスレーンを旅立った日からそれだけだ。


アルの欲は、あわよくばヒルスン兄様の領民になってくれたらいいな。そんなよこしまな考えが少しあるかもしれない。それでもサンドイッチに群がるよりはマシだと確信している。



・・・・


王都コルアノーブルの夜


最初の二百人。貧民街の廃屋に転がったり、座ったり、寝たりしてる家族を20時にキューブハウスの前の河原の土手下に連れて行った。サルーテの河原が凄く明るいので視ると、メイド部隊がライトの魔法を河原のそこら中に付けていてくれた。


四部会を見るとすでにと、末端の一人残らず集まっていた。最初の手下が七百人ぐらいだった筈なのに千百人も居た、ベークスの元締めも手下も元気そうだ(笑)


土手下から訳も分からず上がって来た貧民家族をメイド部隊コアさんの命で四部会が迎え撃って行く(笑) 


「ホラ!来ました。ハウスに案内しなさい!」

「へい!」

「はい!」

「お任せを!」


それぞれが家族をワンセット捕まえて、アルムさんとクルムさんシズク、スフィア、メイド隊の前に連れて行く。


キューブハウスの前に露店をたくさん呼んで来たアルムさんとクルムさんがいた。食べさせて休ませて明日の人足仕事へ行かせるのだ。俺は王都から河原の土手下へ貧民を運ぶだけだ。四部会の衆が千百人もいたので遠慮も無く連れて来た。知らぬ者が見たら河原にドンドン人が湧く怪異現象だったろうと思う。


21時までにサルーテに三千人連れて行った。大人と子供は半々だろう。貧民街の子供は生きるのにしぶといから奮闘を願った。


俺は21時に運び終わり次第に宿で寝た。


朝起きてアルムさん達が帰ったのは22時頃と聞いた。



・・・・


3月18日。


起きて顔を洗って冒険号で鍛錬と思っていたらハーヴェス艦隊のコアさんから連絡。ガナンに明日着くと言うのでハーヴェス艦隊にガナンの王の側近、貴族の側近を連れて行った。


食事前に大司教(ニウさん)から緊急報告があると聞いた。


ドネスクで王に扇動された騎士団が!と自主的に決起し王都のテズ教大教会に来たそうだ。(平たく言えば王の不満にポーズを付けたい奴らだ)教会前の広場で長々と口上を述べたと聞いた。


「よく、いきなり乗り込んで来なかったね(笑)」


「騎士団も神をまつる教会には手を出したくないと思います。民衆の前で武力で教会に討ち入りたくない気持ちが出ております。民衆に口上を聞かせて横暴では無い事を見せたいのです」


何も知らない大教会の司教、司祭、シスターをテズ教国の総本山に転移装置で送ったニウさん。教会前の広場に出て騎士団に正対し、神教国の名を出して対応するとテズ教だと思っていた司祭が神教国と名乗られて驚き、王宮に帰った。



騎士団の口上。それは王が怒ってアジテーション演説した通りの内容だった。


騎士団の口上。


---


テズ教は信徒国であるドネスクと結んだ戦時協定を一方的に破棄し、戦時となっても協力しないと返答した。背後のテズ教会、司教の俸給、聖騎士の鎧と剣はドネスクでの寄進によって成り立っているにも関わらず戦時の危急に助けぬとは神を語るに安すぎる盟約の誓いでは無いか!テズ教司祭に物申す。ご返答あれ!


---


それを聞いて出て行ったニウさんの口上。


「私は神教国タナウスの司祭ニウと申します。テズ教国の司祭様はここにはおりません。ドネスクからテズ教総本山を監査する現状神教国に参られた密使の方はこちらの国ドネスクに帰った筈。今一度王宮から参られた密使の方にお確かめください」


「神教国に戦時協定を結んだ覚えなど無いと!」


---


「そこはテズ教会ではないか!なぜ異教徒の司祭がおる!」


「今のテズ教会を神教国が預かるのは密使から聞いた王様が知っている筈です、王家にお確かめ下さい」


え!そうなの?とは言わなかったが、家を間違えて文句言っちゃった?と騎士団は慌てて帰った。


今さっき起った話なので進展は無いと言う。



騎士団はテズ教大教会には神教国の司祭がいるがどうしましょうと報告した。王家も驚いた。怒る対象者が居なかった。詐欺師にだまされて消費者センターの派遣社員に怒るようなもんだ。


民は王家とテズ教で何かあったのか?と噂をするが真相を知る者など居ない。


朝食を食べ終わった8時に教えてもらった。


昨日連れて行った王都の貧民たちは7時に朝食を食べさせてもらい、鑑札を下げてS.Aの使い方を教わった後に四千人以上無制限と言う城壁作りの人夫の列に並んだそうだ。四部会の若い衆がキューブハウスに帰るまで今日一日引率するそうだ。


「四千人以上無制限ならもっと連れてっていいの?」

「まだハウスは受け入れできます」

「きょうはさ、働きたい人で選別して連れて行くよ」

「かしこまりました」

「昨日で子供連れは居ないから多く無いと思う」

「アル様」

「何?」

「S.Aを出た皆の顔が輝いておりました」

「S.Aで綺麗になって輝いたんじゃないよね?」


ALL「(笑)」


「ありがとう!今日もがんばろう!」

「おー!」アルムさん今晩も行く気だ(笑)


・・・・


その日のS.A建設は王都の西側をやったのだが大捕り物があった。俺が盗賊団の根城を検索してしまった。普通に悪いことしようとしてる人で群衆を視界に入れたら、悪い事しようとしてる人が大量にプロットされて焦った。


盗賊の集団が居るから騎士団と踏み込んで下さいとその家を教える。教えた端からS.A制作に掛かる。


次の場所のS.Aを作り終わった時に無事に捕縛したと聞いた。他国からコルアノーブルに来た大きな隊商を狙う一味で賞金首だったそうだ。


晩は、働きたいを連れて行こう。



・・・・


晩に働きたい人を千六百人連れて行った。働かないと食えないから働いて食いたい貧民のほとんどは連れて来た。連れて来られないのはすでに倉庫番とか皿洗いとかゴミ掃除の依頼を受けてる貧民で、ちゃんと食べてるからだ。


倉庫番は大店の倉庫の留守番だ。倉庫に寝泊まりして三食大店から届けてもらえる。店で商いが済んだ荷物が届くと保管場所に案内する仕事だった。


12歳未満の孤児が四十人居たので教会に連れて行ったら二年前に赴任した司教様で御子様とバレた。毎月クランの宣誓の儀でかすめ取ってるから白金貨一枚喜捨してきたら大喜びで引き取ってくれた。


聖教国の教会付孤児院は喜捨しなくても孤児を引き取ってくれる。でも、今日いきなり四十人の孤児を連れて来られては内心『ウェー!御子様マジで?』という心のフラッシュは俺には隠せない(笑)


王都教会の司教だって人間だ。




次回 336話  子供脳と大人脳

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