第183話  ギルド長との密談


3月12日。


ダンジョン攻略は44Fまで行っていた。


31Fシルバーウルフ:皮

32Fマンドレイク  人と植物 人参

33Fアルラウネ   人と蜘蛛 糸巻

34Fハルピュイア  人と鳥 爪、羽根 精神

35Fラミア     人と蛇 鱗

36Fオライオン   人と馬 

37Fウェアウルフ  人と狼 爪、牙

38F木人      人と瘤の木

39Fカトブレパス  人と牛

40Fモルモ―    人と蝙蝠   

41Fセイレーン   人と鳥 爪、羽根  精神

42Fグライアイ   鬼老婆3姉妹:複数形 単数はグライア

43F軟体ゴーレム  不定形土人形

44Fケライノー   赤黒い女(半吸血鬼)



光曜日と雨の日に神聖国は行くけれど、毎日4人で1階ずつ制覇したら俺の物理攻撃の限界44Fまで来た。


半吸血鬼で物理攻撃が効きにくい。だから手間取ってる間に押し込まれちゃう。


最初はねぇ吸血鬼って知らなかった。斬りまくっても復活して来るからどうなってんだこいつら!と笑ってたら、シェルに教えてもらってやっと知ったの、道理で手間取ると思ったんだよ。だから44Fは魔法でさっさと撤退した(笑)


このダンジョンで初めて物理で押せないモンスターだった。

今回のPTでは迷った挙句に俺は鉄の剣からミスリルの短剣にチェンジした。そゆのって武器に頼るようでさぁ、なんか身にならない気がしてたんだよ。


ミスリルの短剣の二刀流で充分行ける。身体強化の魔力を剣に覆って斬れば行けるのだ。まだ剣で経験値が稼げる(笑)


ちなみにうちの3人は瞬殺だ。俺より強いんだから文句言えない。ケライノーが3匹来たら俺一人じゃキツイ。まぁそんなレベルだ。



・・・・



3月15日。

世界は動いた。


サント海商国圏の同盟商国にミランダから正式に申し入れがあり。植民地の移譲と海上輸送と交易船の契約がもたらされた。


海商国の商船を封鎖して嫌がらせしてたので流石にサント海商国には移譲契約を持って来なかったが、サントの息の掛かった商国連合国に打診されたのだ。そんな事は豪商達は読んでいた。どこに移譲しようが植民地はどの豪商が仕切るか植民地の分割協議で決まってるのだ(笑)


すでに無くてはならない重要品目の砂糖原料を供給する植民地やプランテーション(大規模奴隷農園)化した植民地からの食料は届かない。鉄鉱、石炭、希少金属を採掘する奴隷鉱山の植民地からの収奪船も来ない。火薬原料の硫黄と硝石が植民地から確保できない事態。 覇権国の産業や経済が止まったのだ。


植民地から収奪していた重要交易品目が止まってしまった事で、周りの国からの非難と圧力と債務履行を迫られ、海上輸送と防衛が出来る大手商国へ移譲されたのである。


ミランダは自国も困る事態に陥り、植民地開拓した莫大な投資を最後まで捨てなかったが、最後には権利を委譲した。帝政国ミランダが折れた。


ハーヴェスも同じく植民地をワールス共和国に委譲し重要交易品産出国の拠点は豪商によって押さえられ以後運営されて行く。



ハーヴェス帝国の植民地移譲の条件は人的労働力の派遣である。植民地から収奪していた重要交易品や護衛サービス業が無くなったので、原料を輸入し基礎技術を使って加工品の輸出と人的輸出で外貨を稼ぐようになったのだ。植民地に運営されていた収奪会社はワールス共和国。会社で働く人材はハーヴェス帝国となった。



覇権国が海上軍備と収奪物資を無くした日から海商国は手持ちの物資をすべてミランダ含む周辺国に向かわせた。植民地へは政権を傀儡化かいらいかする指導者を向かわせた。傀儡政権樹立以後は植民地の国は商国同盟の庇護に入るのだ。


各地から次々と帰って入港して来る魔導帆船。商国同盟は、鹵獲したミランダの品はハーヴェス商圏へ。ハーヴェスの鹵獲品はミランダ商圏へ巧妙にせっせと運び、売り続けたのである。


その辺の戦略は鬼である。物資が届かなくなり高騰する相場で奪ってきた品物を売り、わが世の春だった覇権国及び追随する周辺国の外貨を奪い疲弊させて行く。アルは言われたままに運んだに過ぎない。アルでは到底思いつかないだった。


貿易で頼んだ約束の品が来ないと怒ったり。債務が履行されない困った周辺国はせっせと必要な物を約定通りに届け続ける商国同盟に感謝した。


商国同盟は2か月半の間に持ちうる力を全開放し、血のにじむような努力を経て、制海権、海上輸送路、世界の信用を一気に勝ち取った。


商国同盟の船を襲えば海賊も船ごと鹵獲され奴隷にされると謳われた。以後海で商国同盟に戦いを挑む者は居なくなった。



タクサルとレプトは商人になって初めて世界を意のままに動かす意味を知り、自分の役割をまっとうするため世界を飛び回って経験値を稼いでいた。



・・・・



3月18日。


ギルドでダンジョンのドロップ品の買取をお願いすると、ギルド長が話があるとの伝言があった。3人の所に行くともう食券を買っていたので。食べてから行くと返事した。


誰かギルドでイキリやがったかなぁ。悪さして捕まったじゃ無いだろうな・・・。何もしてなくても身内がしたらアルのせいだ。心配で食事も楽しめない程だった。


今の時点で580人程に増えているのだ。

そんな多数派クランは雷鳴しか存在しない。が少しずつ流れて週に3PT~4PT(15~20人)来るようになっている、月に60~80人増えて行くペースだ。若い冒険者にはクランに入れば宣誓の儀が受けられ。恩寵修行に入る事が出来るのは魅力だった。


2月のクラン収入は平均1日銅貨6.5枚(650円)の宿泊代で一気に増えた。月の収入は大金貨5枚(1000万円)程になって来ている。※宣誓の儀の貸付金除く。


食事をした後、3人に帰ってもらいギルド長の所に行った。


「アルベルト卿、わざわざ呼び立てて済まない」

「なんかありましたかね?」

「クランの事だがな、ギルドの手の届かぬ事をやってくれて目から鱗が落ちた。かような運営があったとはな」


「?」


「メルデス代官より年に20人。ギルドの冒険者研修所に入る資格と奨学金を出すそうだ。今度の4月1日に10人。10月1日に10人の枠をアルベルト卿に与えても良いので卿の意向を聞きたいとのことだ。条件は研修所の入学金小金貨2枚とギルドポイント免除、恩寵取得間の寮生活と3食付きだ、入所後の期間は3年間無償で恩寵研修を受講できる」


「ニールセンさんが?回り道をしても実力は付きますね」


「ただな、アルベルト卿のクランの制度上推薦すれば10%分の加入費が入らなくなる」


「それは良いのですが、現状回っているPTを歯抜けで推薦すれば残された者の生活が成り立たないです(笑)」


「それもあるな(笑)」


「代官も悪気で言っておらん。ミウム伯の妹御のお孫に気を使ってメルデスでの公的権限を増そうとしておるのだ。それは分かってくれ」


「はい、ありがたい事です。ただ現状として若い時に一番必要な苦楽を共にして助け合って高める協調性を学ぶ時期にPTを引き裂きたくないと思うのです」一番若い奴が言う。


「ふむ」


「どのPTもリーダーはメンバーが認めた者がなっています。意志の強さ、決断力、努力と信頼を集める者です。推薦するならリーダーからするしかないのです。その話を私が振った瞬間リーダーは悩むでしょうね? 自分が集めて一緒に戦ってきた仲間を置いて己を高める事に苦しみ、そしてメンバーも置いて行かれる寂しさと悲しさに悩みますよね?」


は葛藤を済ませてると思います。ギルドポイントを貯めたメンバーと決別したか、メンバーとの盟約を持って入ってる筈です。うちのメンバーの場合は寝耳に水となります」


「言われる通りだ・・・」


「ただ抜け道はありますよね?」

「抜け道?」


「ギルドがこいつは光ると目を付けた者を私に推薦する。私のクランに加入と同時に研修所に推薦する」


「(笑)」

「(笑)」


「まぁギルド長次第ですね(笑)」

「頼んだらやってくれるか?」


「有望な冒険者は育てたら国の宝になります。ギルドが育てずにどうするんですか(笑)」


「ギルド憲章違反ですよ(笑)」

憲章の理念にそう書いてある。


「わっはっは!一本取られたな(笑)」


※ギルドは冒険者の為に設立され運営される、可能な範囲に於いて技術の研鑽、その活動に対して協力を惜しまない。


「うちは2~3日保留にさせて下さい」

「そうか」


「本人が研修所で高めたいなら自分で動くと思います」

「そうだな、その方が良いかも知れんな」


「うちはソロの見どころの有る奴に声を掛けます」

「ギルドも推薦できる者をピックアップしておこう」


「ニールセン代官にはよしなにお取り計らい下さい」

「わかった」


「先程の話をなさったら如何でしょうか?」

「良いのか?」


「良いでしょう!ミウムの宝を育てる計画ですよ(笑) 推薦されたソロの冒険者は出来上がって良いPTリーダーになりますよ」


「そうだな、為政者であればな(笑)」



「3月25日ぐらいまでに。後一週間ですよ!」

「うむ、わかった。呼び立てて申し訳なかった」


「いえ、いい話でしたよ。マスターと代官の気持ちが分かりました(笑)」


「そう言ってもらえると嬉しいな(笑)」


「あ!最近クランのメンバーが600人近いんですよ」

「また増えたな(笑)」

「先生も紹介ください。あの教官候補のリスト見せて下さい」

「ちょっと待て・・・これだな」

「これです!2~3日貸して下さい、順に当たってみます」

「わかった、持って行け」


「それでは失礼いたします」

「うむ、励んでくれ」



換金カウンターで受け取りして帰った。



・・・・



寝る前にリストに目を通す。


・銀級3位。戦争へ夫婦で行って旦那を無くした未亡人子供2人。

・銀級3位。戦争に行って左腕を無くした冒険者。

これ治したら禁忌っぽいけど、エリクサーあるしなぁ・・・。


・それ言いだしたらこの足の無い冒険者も。

・・・キリがねぇなぁ。


最悪噂になったら隠遁の賢者のエリクサー薬と言訳だ。問題になったらクルムさんから賢者薬の証拠品にエリクサー奪う(笑)


・この家族の介護の冒険者は行けるぞ。何も問題ない。


いいや!絨毯爆撃で行け。アルムさんなんて60年前の銀級3位で大森林で王者なんだ。8年ぐらいのブランク行けるだろ。

人手不足よりよっぽどいいし、収入上がってるんだ。今回を機に賃金も上げるべきだろう。


あとギルド嬢も2人ぐらい欲しいなぁ。

ギルドマスターに言って引き抜くか。伯爵家のメイド待遇なら行けるだろ。


考えながら寝た。



・・・・



翌日。


読み書き終えた後にクランハウスに寄る。


事務のリナスに言って現状の教官及び管理と事務の棒給1.5倍を伝える。次の支給日から上げるように言う。

近いうち事務を3人に増やして、教官も倍増すると伝える。


ソロの魔鉄級5位の冒険者を年齢の高い順にピックアップも頼んだ。高くても現在21か22だ。


そのまま、リストの家族を訪ねて行く。


銀級3位の未亡人ニーナ42歳はメルデスの隣街ケルンで親と一緒に暮らしていた。冒険者の教官にならないか誘った。親71歳ミリラ、子供10歳ミルスと8歳ミーナで子供は読み書きの勉強もさせると言った。親の足が悪いと言うので治してやった。持ち家ごと仕官出来ると揺すりまくった(笑)


支度金小金貨2枚で移住して来ることになった。

そのまま、5日後に迎えに来て4月1日から勤務。


左腕を無くした銀級3位キャプター36歳は私塾の講師をしていた。朝の読み書きも先生出来ちゃう、俺が教えてもらいたい。


左腕が治るのであれば現状の塾生を恥を忍んで他の塾に面倒見てもらう様頼みに行くと言わせた。


昏睡治療で塞いで痩せた左腕を切開して光魔法Lv10で再生させた。オークと一緒で良かった(笑) 昏睡魔法を取って癒しのヒールで回復させる。起き上がった時に導師の腕輪を見せ賢者の弟子だと教える。



左腕を再生して気を良くした俺は足首を無くして義足になった銀級3位35歳ロスダンを探した。ギルドがリストに入れた頃とは違って串焼き屋の助手で獲物をさばいて串に刺す仕事をしていた。

串焼き屋のおっちゃんはアルムさんと朝に寄って知っていた(笑) 裏方までは知らなかった。



足を治して導師の腕輪を見せると冒険者に戻れると泣くので教官だぞ!教官だぞ!と慌てて刷り込んで納得させた。串焼き屋がずっと面倒を見てくれたと言うのでクランの敷地で店を作ってやるから売らないかと串焼き屋も誘う。シマのヤクザにショバ代納めなくて良いのですぐ来ると言う。


住処の整理含めて5日後に迎えに来て4月1日から勤務。



最後は家族の介護で朝から晩まで働き詰めの銀級3位夫婦45歳セロンズと40歳マリアンナだった。


行くと死病だった。視ると教会でのピューリファイを何度も受けているが根治していない。魔法の出力が弱かった。


夫婦も掛かっていた。結核である。

ピューリファイ(浄化シールド)を家中に掛けて、体に手を当ててそのまま魔法を照射していく。


両親の親は亡くなっていた。子供の兄弟カール10歳とバンズ8歳は両親の親から感染し重篤だったが助かった。夫婦も最近咳が出て微熱が出ていた。近所に感染者は居なかった。


死病と知って誰も家に近付かなかった。夫婦もまだ重篤になっておらず菌を撒き散らす状態では無かった。支度金で旨いものを食って5日後までに引き払って4月1日から勤務。

帰る時にも家全体にピューリファイの継続紋と軍用魔石を乗せておく。


一日の最後にギルド嬢を2名推薦してくれとギルド長にリストを返しながら言う。結婚退職するギルド嬢がいると言うので誘ってもらう。別に通ってもらえばいいのだ。



俺は13歳で求人票を書いた。ギルドの依頼票だ(笑)


クラン雷鳴。事務員二名募集。


クランハウス内の事務管理、棒給管理。

冒険者相手、冒険者ギルド職務経験者に限る。


・通い勤務。月銀貨15枚。募集人員:若干名。

光曜日完全休日。昇給あり。


・住み込み勤務。月銀貨15枚。募集人員:若干名。

風呂付宿舎を用意。光曜日休日。昇級あり。



・俸給月16日銀貨15枚支給(着任月でも1月分)

・年間休日59日(光曜日休み+12月30日~7日)

・風呂付職員宿舎完備。

・アットホームな職場です。

・親切丁寧に指導します。

・現職ギルド嬢歓迎。

・メルデス冒険者クランシェアNo.1。

・実績により昇給有。

・夢に向かって頑張りましょう。

・やる気、根気、元気求む。


途中からブラックの謳い文句か!と気が付いてテンプレは消した。



・・・・



翌日にまだ若い18歳のギルド嬢マイアとエレクトラが誘い合って面談予約をリナスにしていったそうだ。リナスは感触良さそうなので求人票を取り下げに行った。


視るとギルド嬢だけあってミウム領都で教育を受け、身元はしっかりしていた。ギルドで役に付いてないので棒給も安く風呂付宿舎に惹かれている。


※普通は水浴びか、水拭きか、この季節はかまどで沸かした湯と井戸水でぬるま湯の行水である。


4日後、結婚退職予定者の28歳ルミナスも子供が出来たら辞める事を条件に働きたいと言ってきた。


面談時に子供が出来たら自由に休職出来る事。子供に手が掛からなくなったらまた雇う事を言うと聞いていた事務員達の顔が明るくなった。



銀級3位教官

ニーナ(42歳) キャプター(36歳) ロスダン(35歳) 

セロンズ(45歳)マリアンナ(40歳)


クラン事務員

ルミナス(28歳)マイア(18歳)とエレクトラ(18歳)


施設管理 

(71歳)ミリラ


教室

ミルス10歳とミーナ8歳 ニーナの子

カール10歳とバンズ8歳 セロンズ・マリアンナの子



アルベルト再生工場が埋もれた冒険者を表に出す。





次回 184話  三羽烏再び

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               思預しよ

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