第82話 隠遁の賢者無双!
翌朝 5時にアラームで起きる。
横の部屋でゴソゴソしてるので覗いたら兄(ロセ)が起きていた。朝食は多分食べられる時間で大丈夫だが、妹(ミニス)が起きるまで寝かせておこうと六時ごろから厩舎の前にいる事を伝えて鍛錬に行く。
井戸水で顔を洗い、水を飲んだら厩舎に向かう。早いのに桶の中に水が張ってあった。ヨシヨシと顔を撫でてクリーンを掛けてやる。厩舎の中も掛けて、横の荷車の馬二頭にも掛けてやる。
夜が明けるのが遅くなって、顔を洗って用意してる間に段々うっすらと明けてくる感じになってる。馬の世話をしてたら段々と明けて来た。とりあえず前が見えたらいいや、明日から型を先にやろう。
ランニングに出発だ。
いつもの感覚で走って半分位の距離になったら宿まで引き返そうと思っていた。身体強化で魔力を回して、魔力眼と真実の眼で色々な景色を見て何の建物か、どこが代官の屋敷か視て行く。ドンドン走る。出店が設営を始めている、売り始めてるお店もあった。
あ!こういう時は串焼きだ!
と突然思ったとたん串焼きの屋台の方向が分かった。
一本銅貨一枚で一番売れる店と情報がでた。門の近くだからかな?コモランという鳥みたいだ。麦などの雑穀類を餌にするため農地に多いらしい。あっちの
真実の眼があっちの世界とこっちの世界をハイブリッドで教えている。多分アルが分かりやすいように表示されているんだろうと気にも留めず走っていく。
はぁはぁ言いながら店に着く。
「おじさん二本頂戴」焼いている串焼きに美味と出ている。
「坊主、朝から鍛錬か、偉いな。銅貨二枚だ」
「うん、走ってた」そのまんま答える。
「冒険者の格好が似あうな。頑張れよ」と声を掛けてくれる。
「えへへ、うん。頑張る」
10歳の子供を演じ切る俺。(イヤ、7歳だってば!)
「二本弟と妹に持って帰れるかな?」
「三本以上はそこの葉に包んでる、いいぞ二本焼くぞ」
「はい、銅貨四枚」
「おう、熱いから気を付けてな」
「うん」と近くの建物の段差に座って食べる。
あっちの門に近い荷馬車に護衛やる冒険者がゾロゾロいる。馬車や荷馬車がバラバラに止まって、こんな感じで集まるのね。
「二本包んどいたぞ」
「ありがとう!」
串焼き屋の元冒険者の親父は単純労働向きで色々な動きや意味を考えて動く冒険者に向いてなかったと思ってる(笑) 串焼き屋で今家族と幸せに暮らしてるなら正解だよ。命掛けより大正解だ。
「おじさん!美味しかった!ありがとう」
「そうかい、また来てくんな。気を付けてな!」
手を振って走り去る。
中身も平民そのままだ。
街を一通り回って何も引っ掛からないのでそのまま宿に向かって走って帰った。
厩舎の前に六時に着いて馬を見ながら型の復習。師匠は拳闘士じゃないので体重の乗った突きによる一撃必殺技は無いが剣で磨かれた実践の捌きは拳闘士よりも上と思う。無手で剣を持つ騎士団を捌いて崩すのだ。
三セットの型をやった所で兄(ロセ)が俺を呼びに来た。アル兄ちゃんと小さな声で呼んでくれる。
「お!ロセ、ミニスは起きたか?」
「うん、起きた」
「そんじゃ迎えに行こう」さっとクリーンを掛けておく。
歩きながら言う。
「師匠は朝遅いからな。俺たちで食べてよう」
「うん!」
部屋に行き、布を渡して井戸で顔を洗って来いと二人に言い捨て、食堂で朝食セットを三人前頼んでおく。一人前銅貨4枚(400円)だ。
ロセとミニスが食堂に現れると直ぐに朝食が来た。
串焼きを出してやる。目が点になってる(笑)
パンとシチューとサラダに焼き豚みたいの乗ってる。親父さんが宿泊客のセットが余ったと半分に割ったミカンを付けてくれた。領主の孫に残り物ではあるまいな?(笑) 美味しかった。
親父さんは結構博学で商売Lv3、算術Lv2、交渉術Lv2、家事Lv3、料理Lv3、馬術Lv3、威圧Lv2、格闘Lv2、光魔法Lv1、土魔法Lv2と宿屋だけあって満遍なく職能を手に入れ上がっている。街で長らく暮らせて行ける見本の様なスキル構成だった。まぁ、この商区の古いまとめ役だけあった。
食事の最中ロセを検索で視ると、第12開拓区という割札がなんとか視えた。これで分かるはず。どうも難民が執政官事務所で札をもらって開拓村に行くと村で住人として受け入れられるみたいだ。
食事を終えて部屋に行くか、と聞くと厩舎で馬を近くで見たいと言った。
俺は守備隊のいる門へ向かった。
守備隊で第12開拓区を聞くと西門から出て開拓区の外れと聞いた。これで安心した。昨日の人
宿に帰ると師匠が食堂にいた。
「師匠!おはようございます」
俺の顔を見て、スープを飲む手を止め聞いてくる。
「アル、おはよう。何処か行ってたのか?」
「門の守備隊の所へ。西門から開拓区の外れの村だそうです」
「子供の村が分かったのか?」
「多分第12開拓区と思います」
「そうか、良かったな。無駄に探さずに済む。食事を終えたらベント卿の所へ行こう」
厩舎にいるロセとミニスに宿を出る事を伝える。
二人に荷物は無い。
俺は階段を駆け上がって背で親父さんの「うるせぇ!」を聞きながら部屋へ戻る。うるせぇ!言われる領主の孫(笑) 屋敷で誰にも言われないから笑えた。
チャッチャッと用意して鼻歌で階段を下りて行く。親父さんにニコニコ手を挙げて「お世話になりました!」と大きな声で言う。
ニヤリと「気を付けてな」と返してくれた。
ノストリーヌ(馬)の所へ行き。馬具を装着してると師匠も来る。次は荷馬車に馬をセット。ロセとミニスを乗せて準備完了。
用意が出来たので馬に乗って、師匠の馬を横に連れて歩く。街中だから師匠の馬が気になってしょうがない。
導師の宿に行き、師匠がベント様のお迎えだと伝えている間に厩舎に行って導師の馬の機嫌を取る。俺の顔を見て喜んでくれるので挨拶代わりのクリーンだ。
宿の使用人が馬具を持ってきて付けてくれる。さすが最高級!待っていると師匠と導師が出て来た。
「開拓村が分かったそうじゃの?」
「多分12開拓区の村だと思うのですが、行ってみない事には」
「良い良い、目途が付かなかったら一日潰すからの」
「はい、参りましょうか」
「そうじゃの、行こうか」
「西門はこっちだな、と師匠も馬車を回す」
ロストの街は慌ただしかったな、ホント通過してるだけで街もゆっくり見られない。夜討ち朝駆けの忙しさだよ。俺の前に出てくる混沌衆が全部悪い!
師匠が先頭で街中をほどなく進むと荷馬車が止まる。昼を仕入れると言うので、近くの屋台を物色し肉串とパンに炒め物のサンドも買っておいた。葉っぱにくるんで蒸してあったのでホカホカだ。
師匠はパンと焼けた丸鳥と酒の壺を持ってるので多分葡萄酒だと思う。
街の人は結構恩寵が育ってる人が多いので付与する必要がない。一人剣術Lv5が居たのがすごい。凄腕の傭兵だ。うちのお父様と騎士団の副団長クラスだ。
西門が見えて来た、出るのは簡単だ。
簡単に見えて警察24時みたいに見てるのか視た。
違う!
にこにこ話掛けて目を見てるよ、目の動きを見てる。怖!スゲー!毎日見てると見えるものが有ると守備隊に教えられた気分だ。
12開拓区は交易路(大型馬車が余裕ですれ違える)沿いでこの時間なら14時から15時に着くらしい。ロセとミニスが攫われた時間を考えるとロストから6、7時間と時間的に合うのでその村で合ってると思う。
昼休憩で師匠と鍛錬!型の練習が中途半端だったので発散した。
発散しても負けまくりのボコボコでその辺の枝で叩かれまくる。模擬剣が掠りもしねぇ、一回も受けて貰えねぇ(笑)
15時近くになって12開拓区が見えて来た。
ロセもミニスも自分の村とホッ!としている開拓村は見ただけで貧しいと思う。これはないわ、なんか思惑がありそうな気がする。導師が村に入り村長に取次ぎを求める間に子供を見た村の人間がもう騒いでる。
程なくして村長が畑から野良着でやってきた。
「この子供らを人攫いから助けたんじゃがの」
「まさしく!昨日探しておりましたロセとミニスです。おい!セロスを畑から呼んで来い!ジェーンは夜通し探して家で寝ている。すぐに子供を連れて行け」
村長の興奮した指示が出て、村が活気着いた。
「旅の貴族様、村の子供を助けて頂きありがとうございました。何もありませんが、家に寄って休んで下さい、子供の親からも礼をさせますので」
「礼は良いが、家族が一緒の所は見たいの、少し寄るかな」
「こちらへどうぞ」
多分、代官とか担当執政官が寄る家なのだろう、少しマシな家に案内された。
馬を井戸の脇に繋いで、塩を嘗めさせヒールで喜ばせておく。
村長にはハーブティーを出して貰えた。
今の現状を聞くと人攫いは夜明けの起き抜けに子供を攫って南に逃げた後、東に向かった様だった。
視ても分らない訳だ。子供は袋詰めだし、人攫いはロスト抜けるまで街道を通ってない。何処走ってるか視ても分からなかったのよ(笑) 地形を見たことも通った事もない上に違う道と来た。視界に無けりゃ探査でもわかんないわ、おかしいと思ってたんだよ。
導師にちょっと相談した。
「灌漑用水路って魔法で作ると難しいですか?」
「ふむ、ここに用水路か?やれんことは無いが魔力分しか出来んの。川からはかなりあるぞ」
「基本的な魔法だけ教えて貰えませんか?寝静まってから私が練習がてらにやってみます」
「アルが夜に作るのか?面白いの、夜は付き合うぞ」
「ありがとうございます!」
しばらくして村長と一緒に家族が来た。
導師にありがとうございますと膝を付いて礼を言う。
「良い良い、それで
「馬でございますか?」
「この家族も村もみんなで子供を探したんじゃろう。村で維持できるなら置いて行くがどうじゃ?ロストの往復も楽になろう?」
「なんと!その様な事を、元来盗人の物は捕らえた者の戦利品、その様な事まで・・「よい!旅の途中じゃ、荷馬車など要らぬ」」
「すぐ、村の者を集めまして話合いしてみます」
「やっぱり、難しいかの?」
「何分にも、人が食うのに困っておりますので」
「そうか・・・ふむ、話し合って見るがよい」
「ところで、一夜の宿を貸してくれぬか?」
「わかりました、ここは視察で執政官様が来られる所なのでここでどうぞ、夜具は後程お持ち致します」
「夜具はよいわ、外套もあるでの。それではここを借りるぞ」
「は・・・ごゆるりと」
「アル、リード卿、馬を出してあの小さな山に行くぞ」
「はい?」
「灌漑用の土魔法を覚えたいんじゃろうが」
「はい!」
山に着くと導師が指示した。
「リード卿、山で狩りをしてきてくれんか?今夜村の者に食わしてやる肉じゃ。多いほど良いな」
「また、面白い事をされますな。わかりました」
「アル、最初にホールの魔法を使ってみい」
ホールを使い次第に腕を掴まれた。
「よし、それじゃ。良く違いを見ろ」
導師が俺の身体に魔力を通して編んでくれる。
「こうですか?」
「出来とるの、そして・・・こうじゃ、こう変える」
「いきなりでは無理だ、さっきの奴から変化させて行く」
むむむ・・・
「もう一度見せていただ「こう、そしてこう変化」」
「よしよし、練れておるぞ、変えて行け・・・そうじゃ」
「これが基本じゃ、それを大きく。角で掘れるじゃろ」
「そして、良く見るのじゃぞ、ここを細かくしてやると土が締まって固くなる、石の様に」
「こんな感じで・・・いいですね!」
「なんじゃ、そこだけ上手いの!(笑)」
「やっぱりイメージでしょうか、硬さは自在になります」
「大きさまでは無理なので、一度Lv上げてやります」
「アルにはそれがあるの(笑)」
「実験がてらやってみます。Lv5でこれぐらい」
「Lv7でこれぐらい」
「良いが、川との高低差にもよるな」
「土手から4、5m下でしょうか。川の近くで試しますね」
「そうじゃな」
「ちょっと山に行きたいのですが」
「なんかあるのか?」
「馬の餌を探そうと」
「なんじゃと?」
「2匹分の美味しい草を(笑)」
「何ぞあるのか?」
「ちょっと(笑)」
「分った。日が暮れぬうちに
・・・・
朝起きると村の横に川があった、昨晩作った用水路である。元の繋いだ川から村まで3kmには丸木橋まで掛けてあった。
村を過ぎると開拓地に沿って枝分かれの支流となり用水路はまた元の川に帰っている。始点から終点合計9km。支流2本。出来た川向うの未開拓地に牧草地が増えていた。
そして村で植えたばかりの根菜も実っていた。
にんじん、大根、ごぼう、さつまいも、じゃがいも、里芋が全て品種改良など無い野生な感じで原種と思う。芋系はテレビで見たペルーの農民が荒れ地で育ててた感じの芋だ。大根も最初カブと思った程に長くない大根だ。
ただ実ったのではない。第1~10段階に分けて成長に差を付けた。実っていた根菜は一部が種となる。これから二か月以上も毎週収穫できるはずだ。冬を越せばまた種が出来るしな。冬でも土の中で育つんだよ、冬野菜って感じなのかな。
馬と荷馬車は村の物になった。
師匠が捕った獲物は各家に配られた。
村人の仕事に沿ってスキルも付与した。
全部導師がやったことになっている。賢者様だからな(笑)
土魔法Lv7はLv1に。成長率>成長促進Lv10はSPに戻った。
いいんだよ。4、5時間土魔法がLv7になったってこんなのは瞬間的な強さだ。混沌衆の強さには関係ないさ。
成長促進の魔法は、導師が魔法を見たが再現不可能だった。
しかし、夜中に「ほほー!」「おっほっほ!」と笑いながら支流を作りまくる導師は子供の様に転移で跳ね回っていた。悪戯坊主というか座敷童が開拓地で遊んでいると言うか・・・爺いが
導師にはキャンディル領で根菜に成長促進を掛ける事を約束させられた。領地が飢えない冬を導師はその目で見たのだ。
「売られた方が幸せ」などと絶対言わせない。
次回 83話 アルのご先祖様
----------------
この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
読者様にお願い致します。
応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。
ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます