グラス・メテオ ー星と寿命とお姫様ー

仲仁へび(旧:離久)

第1話







 この世界の星には寿命が定められている。

 崩壊してく事が決まっている。

 その星に根付いた「ホロウ」が寿命を吸い取って、私達を滅ぼそうとしているから。







 私はお姫様、とっても偉い人。

 だから、みんな私に頭をさげなくちゃいけないのよ。


 もちろん、お姫様だから守られて当然。

 皆から、よいしょされて当然なのよ。


 でも、お姫様はとっても大変。


 いつも自信満々にしていなくちゃいけないし、いざとなったらみんなを助けなくちゃいけないの。


 だって私が一番偉いから、そうするのは当然のことなの。


 でも、そんなお姫様がピンチになったら、誰が助けてくれるの?


 よく分からないけれど、たぶん王様とかそういう存在ね。


 あ、でもこの世界には王様はいないんだった。


 みんなぽっくりいっちゃったのよね。

 おじいちゃんおばあちゃんだったの。


 寿命って怖い。


 たまに遊んでくれるいい人達だったのに。

 寿命を分けれたら一日くらい分けてあげたのに。







 私は、今日もお姫様。


 皆を困らせたりしてるちょっとおてんばさん。


 でも、いざという時は頑張るから大丈夫よ。


 明日から頑張る!


 え、それ駄目な方のセリフ?


 そんな事ないわよ。


 本当にその時が来たら頑張るんだから。


 本当の本当だってば!


 そんな頑張り屋さんな私は、今日もお仕事に精を出すわ。


 民達の言葉を聞いて、悪い所を改善。


 悪だくみしている人は、探して成敗しなくっちゃ。


 うん、とっても優しいお姫様ね。


 私ながら、ほれぼれしちゃうわ。


 だから、お仕事終わったらご褒美くれなきゃ、すねちゃうんだから!







 私は今日もお姫様。


 皆を困らせていた巨大な怪物ホロウを倒してあげたわ。


 皆の魔法で、いっせいに「えいっ」てやったのよ。

 私は号令係。

 我ながら、ほれぼれする発声だったわね。


 そしたら、その怪物が飛び散ってバラバラになって、世界中に散らばっちゃった。


 星みたいに光ってきらきらって。


 綺麗だけど、何だかとっても不安。


 よくない事が起こりそうで、ちょっと怖いわ。


 各地では、アクア・ホロウとかフレア・ホロウとか新種の怪物が誕生しているらしいし。


 これ、まずい事とかじゃないわよね。


 大丈夫かしら。


 ねぇ、あなたはどう思う?


 いつもみたいに、頭いい感じの推論聞かせて。







 私は、どうにか今日もお姫様。


 でも、ちょっと危ない感じ。


 皆を守れないお姫様って、お姫様じゃないと思うの。


 例の怪物がたくさん暴れまわって、たくさんの人が困ってるみたい。


 星の寿命ががんがん減っていってるみたいなの。


 どうにかしてあげたいけれど、解決方法が分からないわ。


 困っちゃう。


 どうしよう。


 あなたでも解決方法が分からないのね。


 じゃあ、誰にも分からないじゃない。


 ううっ、本当に大変だわ!








 私はお姫様よ。


 でもだからって、こんな時に特別扱いされるのは嫌なの。


 私だけ生き残るなんてだめよ。


 皆が頑張ってるのに、自分の事だけ考えられないわ。


 逃げてくださいって、言われても。


 逃げてどうするのよ。


 国民がいなかったら、お姫様はお姫様じゃないんだからね。


 だから、最後まで戦うの。


 だって、私はお姫様。


 皆を助けるのが、上に立つ者の役目でしょ。


 だったら誰がお姫様を助けるんだって?


 そんなの、今はどうでもいいでしょ。


 だって、そんな人この世界にはいないんだから。


 私より偉い人、皆死んじゃったじゃない。


 何でも解決してくれる頭の良い人なんて、いないじゃない。








 私はお姫様。


 でも、もうじきお姫様じゃなくなるわ。


 この命を使って、化け物たちの行動をとめるの。


 星魔法っていう特別な魔法なんだって。


 生きるものの寿命を使う代わりに、莫大な威力が出るの。


 きっと使ったら、しわくちゃのおばあちゃんになっちゃうんだわ。


 え?


 そういうのじゃない?


 難しいのはよく分からないわ。


 うぅ、やっぱり死ぬのはこわい。


 すごく体がふるえちゃう。


 でも、我慢しなくちゃ。


 皆を助けるためには必要な事なんだから。


 でも、ちょっとだけだけど。


 でも。


 もし、おとぎ話のような勇者様みたいな人がいるなら。


 こんなどうしようもできない状況になっても、私を助けにきてくれるのかしら。






 



 私は、お姫様なんだから。


 もう、ばかばか!


 国民は守られてなくちゃだめでしょ!


 どうして、私の身代わりになろうとするのよ。


 頭がいいから?


 理由になってない!


 私が怖がりだから?


 違うもん!


 最後の言葉、なんて言わないで。


 そんな顔しないでよ。


 身代わりになる方法見つけるくらいだったら、皆で生き残れる方法探しなさいよ!


 ほんとばか!


 頭なんか、ぜんぜんよくないじゃない!









 私はお姫様よ。


 あの決戦の日に命をつかって、お姫様をやめるつもりだったのに。


 でも、その代わりに……。


 世界も、皆も救われたけど。


 こんなんじゃ、笑えない。


 お姫様の仕事できない。


 お姫様は、いつも笑って皆を元気づけてあげなくちゃいけないのに。


 え?


 助ける方法があるの?


 聞かせて。


 何でもするわ!


 大丈夫。今度はもう怖がったりしない。


 だって、怖い事なんてあの日あった事以外ないもの。







 私はお姫様。


 皆のお姫様。


 私がお姫様になるためには、皆がいなくちゃだめなの。


 その皆には貴方だって入っているんだからね。


 だから、もう勝手に死んだりしないでよ。


 どうやったのかって?


 寿命を使う星魔法を、頑張って改良してみたの。


 すっごく大変だったんだから。


 一個でも間違えると、私とか協力してくれた人が血まみれになっちゃうけど。


 いたたたた!


 怒らないでよ。暴力反対。


 うう。


 助けてあげたのにぃ。


 なんで、笑ってるのよ?


 私の事、みくびってたって?


 もうっ。


 私はお姫様なんだから、これくらい当然よ。


 えらいえらい?


 すごいすごい?


 そんな子供に言うみたいに。

 もっとちゃんと褒めてってば。


 でも、許してあげる。


 私は、お姫様なんだから、寛容な所をみせないとね。


 そうそう、まだ言ってなかったわね。


 助けてくれて、ありがとう。


 そして。


「おかえりなさい」



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