第10話 百合の駅

 写真部は水木金に活動している。

 写真集を見て写真の取り方を学んだり、休日には外出して10月にある文化祭に出す写真集を制作する為に写真を撮る。

 放課後に図書室に行く機会が減ったので大体火曜に行っているが、中学校より本の数が多く、読みたい本が多くてあの本に手を付けれていない。今日は火曜日。1番端の席に着き、本を開く。どこまで手を付けたっけな…

 奈桜はまた彩霞ちゃんと遊ぶらしいし、澪は今日委員会がある。茉莉は演劇部の子たちとリオンに行くんだって。私は1人で図書室。茉莉と一緒にリオンに行こうとも考えたけど、演劇部の人たちと接点がないから、きまづい。

 ある程度めくるとだんだん思い出してきた。そういえばまだ3話しか進んでなかったのか…そう思いながらページをめくる。



『百合の駅』

 うちは通学でいつも電車を使っている。

 その日は疲れきって電車の中で寝てしまった。目を開けると、いつも降りる駅を過ぎてしまったようで、電車のスクリーンの文字が化けていて、どこにいるかわからない。

 周りを見渡すとだれもいなくて自分1人のようだ。そういえば聞いた事がある。ある日電車にのっていたら、きさらず駅につくってゆう。けれど、それとはなにか状況が違う気がする。


「次は 白麻(はくま)〜 白麻(はくま)〜 お出口は左です。」電車のアナウンスが聞こえる。

 案外遠くまで行ってなかったようだ。白麻は秋桜市の上にある凜和市の左どなりだから…これならなんとか帰れそうだ。けど、白麻まで行くには乗り換えが必要なはずなんだけど…

 そう思いつつ降りてしまった私がダメだった。


降りてみるとビルが周りに少しあるはずの駅の風景ではなかった。近くには山があり、百合の花畑が周りに広がっている。ヤバい間違えた。とあたふたしているうちに、電車のドアが閉まる。次の電車はあるか確認しようとしても、まず時刻表がない。

 スマホでここがどこか調べてようとしても出てこない。やっぱり白麻の風景とは全然違う。

とりあえずきさらず駅の話と同じように線路を辿ってみよう。

そう思ったときに、百合のお花畑にいた女の子がうちに

「ちょっと待って!」と声をかけた。

「そっちには行っちゃだめ。帰って来れなくなるよ。」と言う。さっきまで百合の花畑にはいなかったはず…怪しい。


「どこから出てきたの?あなた誰?」

「ごめんね。急に話しかけてしまって。私は蓮井はすい 鈴梨りり。ここに迷い込んだのは2回目で、あなたが乗っていた電車の1本前の電車でここに来てしまったのよ。」

「頼りになります。うちはみなみ 千春ちはると申します。男に見えますが、女子です。2回目ってことは脱出できてるってことですから、なんでダメって分かるんですか?」

「はっきりはしていないんだけど…」と俯いて鈴凜さんは言った。

「同じく迷った人が君以外にもいて、私が案内しようと思ったら、私の言葉を信じれないみたいで、言葉も聞かず、そっちに行った子がいたの。私が現実に戻るとその行った子が行方不明だと報道されてたから、そっちの道は戻れなくなるのではないかなって思ったの。」

「そうだったんですね。うちは鈴梨さんのこと信じます。案内してくれませんか?」

 怪しいと思ったけれど、うちも家に戻りたいので、信じることにした。

 

花畑を歩きながら、鈴梨さんは言う。

「私が迷い込んだときその消えてしまった子と同じ電車にのっていたから、まさか違う電車がくると思っていなかったの。他にいなかったの?」「うちの場合は他にだれもいませんでした。この駅の名前は白麻だと言っていたけれど、駅自体には名前の看板ないですね。」

「あれ!?違う。私の場合は紅崎くれさきって言ってたけど、これってまさか自分のいつも降りている駅の場所によって違う?」

「一応うちは紅崎くれさき市の北紅崎駅から桜宮市の桜宮駅で降りようとしてました。」「あれ?降りようとしてた駅は同じだ。私は秋桜市の湘桜台駅しょうおうだいから行こうとしてたんだけど。まぁ。とりあえず、ここの場所から抜けようか。これなんだけど、」

 と鈴梨さんは花畑の百合を1本出す。なぜかこの百合はピンク色に光っていた。

「なぜか私が触ると百合が光って、光が帰り道を照らしてくれるの。そのおかげで前回帰ってこれたんだよね。」ついてきてと百合を持ちながら、手をつないで、鈴凜さんが前に進む。


駅の線路とは反対方向に向かっていく。歩いて5分くらいたったとき、奥にビルの光が見えてきた。

「やっぱりこの光が指している方向が当たってたんだね。」と、このときうちは油断していた。また、2分くらい歩くと、トンネルがあった。「このトンネルを抜ければ多分戻れると思う!」と自信満々に鈴梨さんが言う。

 トンネルを抜けると、光が強く目を瞑った。

 

目を開くと、あの白麻駅に戻っていた。

「あれ??」とうちと鈴梨さんが驚いて、後ろを振り返るとトンネルが無くなっている。

「まさか…あの時は1人だったから?それか道を間違えた?」そう思った鈴凜さんはまた百合の光に導かれながら進む。


またトンネルを通ると駅に戻ってくる。それを2回繰り返したところで、うちは気づいた。

「これってまさか2人で百合を触らないと意味がないのでは?さっき鈴梨さんが言ってたじゃないですか、『この前は1人だった。』って、2人で握ってトンネルのところまで行きましょう。なにか変わるかもしれません。」

「そうかな?試してみる価値はあるかも。」と百合の茎を2人で握ってトンネルのところまで進む。すると、トンネルの中に百合と同じ光り方をしている扉がある。

 

その扉を開こうと思ったら、鍵がかかってて、開かない。ここまで来たのに…

 鈴梨さんが「しょうがないわね。ここまで来たし。」と百合を持って鍵穴に近づけると百合がピンクの鍵になった。


そしてその鍵で扉を開く。「早く!行くよ。」と鈴梨さんがうちを引っ張る。扉に入るとトンネルを抜けた時とは違う光が眩しい。目を開くと、いつも見慣れた桜宮駅の駅前に立っていた。隣に鈴凜さんはいない。

 鈴梨さんは一体何者だったのだろう。

 うちを閉じ込めようとしてたのだろうか、

 それとも…


 4章が読み終わった。なんかいつもより1章の文章量が長かったような…まぁ、いいか。読んで30分たっている。うぇ…結構時間経ってる。私にしては珍しい。次の章読み終わったら帰ろ。と次のページをめくる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る