〈アスカ視点〉







後30分もすれば休憩だな

なんて思いながら薬を仕分けしていると

なんだかガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきた





アスカ「なんです?」



薬「病棟患者か?」





先輩薬剤師と顔を見合わせていると

調剤補助の長友さんが「見てきます」と

走って出て行った





精神科病棟の患者が脱走でもしたのかと

思っていたが帰ってきた長友さんは興奮していて






ナガトモ「あっあの!受付の若い子!!

三好先生を怒らせたみたいです!」





薬「久しぶりだね、前はしょっちゅうだったけど」





ナガトモ「前とは違いますよ!

  今回は、三好先生、外来患者の前で

  凄い勢いで仕事辞めろって

  怒鳴り散らしたみたいですよ」





アスカ「え?外来の前で?」





ナガトモ「そうですよ、だから他の患者さん達も

    驚いたみたいで…

    ちょっと騒ぎになったみたいです」





アスカ「辞めろって…何したの?」





ナガトモ「なんか診察中に部屋に入ったらしくて

    中の患者さん少し興奮気味だったのか

  少し暴れたみたいですよ?」





薬「診察中に?なんでまた?」





ナガトモ「・・・さー?

  でも病棟看護師の見てた子が

  (辞めちゃうかもね)って言ってましたし…

  今回の怒り方は激しかったみたいですよ?」





アスカ「・・・・・」





結愛ちゃんが入って直ぐにも

三好先生に毎日怒鳴られてると噂されていたが

薬局のここまで騒ぎが響いた事なんてなかったし

いつもは三好先生も外来の前じゃなく

自分の診察室で扉を閉めて怒ってた…





(何したんだ?)





俺は結愛ちゃん関係の噂が一番拾える

休憩室に早足で昼食を取りにいった



扉を開けるとすでにガヤガヤと皆んな

話し込んでいて顔見知りの男性スタッフの横に

腰を降ろして「何があったんですか?」と

小声で聞いた





男「俺もさっき来たばっかりだけど

  女性スタッフは皆んな三好先生に怒ってるよ」





少し驚いた…

結愛ちゃんが三好先生に怒鳴られる噂の時は

誰も彼女をフォローする事なんてなかったから…





カワベ「内線にもでないのが悪いのよ!」




キムラ「用事があってかけてるんだから

   出ればいいのに、出ないなら

  仕方なく部屋に行くしかないじゃない!

  コッチだって仕事でやってるんだから!

  それをあんなに…皆んなの前で

  怒鳴らなくたっていいじゃないですか!」




ミワ「結愛ちゃん可哀想ですよね…

  薬局からも嫌味言われて

  三好先生からは辞めろなんて言われて」




カワベ「本当に辞めるなんて

   言いだしたらどうしよう…」






全部を聞けてはないけど大体の話は分かった…

前のように結愛ちゃんが

悪いわけではないみたいだが

精神科の診察中に部屋に入るのは

あまりいい事ではないし、長友さんの話じゃ

興奮した患者が暴れたなんて言ってたしな…

三好先生が怒るのも分からなくもない気が…





ガチャッと扉が開いて

事務長が入って来たかと思ったら

凄い勢いで女性スタッフ達が事務長に詰め寄った




 

看「三好先生にちゃんと言ってくれました?」





事「まださっきの患者が興奮してて診察中だよ…」





ミワ「あの患者さん

  結愛ちゃんに急に飛び付こうとしたんでしょ?」





看「見てないから分からないけど興奮してるから

  今も女性看護師じゃなくて

  病棟から男性看護師を呼んで対応してる」





キムラ「散々三好先生に問い合わせしろって騒いでた

  日下先生は騒ぎ中にちゃっかり消えてるし」





ミワ「あの薬剤師ホント最低!」





事「結愛ちゃんも気まずいだろうから午後は

  俺と一緒に系列施設の見学に連れて行くよ」





カワベ「辞めるって言ってもちゃんと

  引き止めてくださいよ!!」






数ヶ月前はあんなに

文句しか言っていなかったのに

結愛ちゃんもだいぶ馴染んだんだなと思った…





(・・・辞めるかもな…)






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