日曜日

〈ユア視点〉






今日は家でゴロゴロしようと思っていたけど

お兄ちゃんから飛鳥さんが来ると聞いて

出かけることにした…




(休みの日に仕事関係の人とは会いたくないし…)





とは言っても行く所もあんまりない…

この狭い田舎じゃ買い物に行っても

誰かに会いそうだし…

同級生の仲の良かった子達は皆んな

都会に進学してそっちで就職してるからな…





「はぁー・・何にもないんだよね、ここは…」





かと言って、コンパニオンまがいな

ゴルフなんて絶対に行きたくないし…





(・・・来年はもう少し都会に就職したい)





結局どこに行く当てもなく車を走らせて

職場のスタッフがいないであろう

隣町の小さな図書館に車を停めた




(いつ以来だろう…)




と中に足を進めていき

医療関係の本の所で立ち止まり

人差し指でタイトルを横になぞりながら歩き




「患者から見た精神科…」




患者さんから見たらどんな感じに

見えているんだろうとなんとなく疑問に思い

本の分厚さを確認して数時間で読めそうと

判断してその本を持って席についた




その本は一人の対人恐怖症の人物が

そうなるまでの過程と病院に通う日々を

記録のようにその本人が書いた本だった




読み終えて本のページを開いたままぼーっと

していたら視線を感じ顔を上げた




ミヨシ「読み終わったか?」




「・・・・三好先生?」




いつもの白衣姿じゃなかったから

一瞬誰だか分からなかった…





ミヨシ「・・・お前何してんだ?」




「え?」




ミヨシ「今日は大事な用事があるんじゃないのか?」




「・・大事・・な用??」




ミヨシ「・・・ゴルフそうやって断ったんだろ?」




「・・・・・・!?・・あー!・・

  なんで三好先生が知ってるんですか?」




ミヨシ「皆んな知ってるぞ」




「え??・・佐々木さん!!」




ミヨシ「これが大事な用なのか?」




「・・・どーして嘘って分かってるのに

  そうやって聞くんですか?」




ミヨシ「ふっ・・賢くなったな」




「・・・(笑った…)」




ミヨシ「で、ここで何してんだ?」




「家に、兄の友達が来るから…出てきたんです…」




ミヨシ「薬剤師の髙橋か?」




「それも知ってるんですか?」




ミヨシ「この前聞いた」




「休みの日に職場関係の人と

  わざわざ会いたくないじゃないですか…」




ミヨシ「・・・悪かったな」




「え?」




ミヨシ「俺はお前の職場の医者だぞ」




「・・・・そう…ですね…」




私服姿に帽子を深く被っているからかか…

目の前の三好先生は職場の雰囲気と

全く違い…同じ職場だと忘れていた…




「・・・すみません」




ミヨシ「まーいい、その本読んだなら貸せ」




「読むんですか?」




ミヨシ「元々今日はそれを借り来たんだよ」




「私が読んでいたからずっと待ってたんですか?」




ミヨシ「・・・面白かったか?」




「面白いっていうか…なるほどって感じです」




ミヨシ「・・・・」




「患者さんから見る精神科…三好先生は

  私の考えてる感じと違ってて…なるほどって」




ミヨシ「・・そうか」




「・・・・・・」




ミヨシ「腹減ってないのか?」




「え?お腹?・・そういえば…」




ミヨシ「3時間も読んでりゃ腹も空くだろ…」




「・・・そんなに前から見ていたんですか?」




ミヨシ「・・・帰るか?」





時計を確認すると16時前でお昼も食べてない

事を思い出して何か食べようと思った





ミヨシ「お前が好きそうな店があるぞ?」




「え??」




ミヨシ「休みの日にわざわざ会いたくない

  職場同僚の俺と一緒にいってみるか?」




「・・・三好先生は…嫌じゃないんですか?」




ミヨシ「嫌だったら見つけた時に帰ってる」




「・・・・お邪魔…します…」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る