不機嫌な三好先生…

みゅー

読めないカルテ


〈ユア視点〉






カルテを手に取り頬がひきつく…




(このカルテ…)




嫌な予感が当たらないよう

願いながらカルテをめくると…

感は当たったみたいでため息が溢れた…




(なんて、書いてるの?)





そこに書いてある

癖字なんて可愛い言葉では

片付けられない文字は

1ヶ月前からの私の悩みの種だった…




何??クックロアチア?・・・

だいたい、飲み方もこんな字・・・

 



(・・・・)




いくら考えても分かるわけもなく

諦めて席を立ち廊下の一番奥にある

診察室へと足をすすめる





( 開いてる・・・)





診察室の扉は開いている状態で

患者さんが誰もいないことを確認し

憂鬱な気持ちで壁をノックした




少し奥の机に座っているドクターは何も

答えず何かを書いているようだった…




( ・・・また?)




目の前にいるのは分かっていても

勝手に入るわけにもいかず

もう一度壁をノックしてみた





ミヨシ「るせぇーな、何度も叩くな

  用があるならサッサっと入ってこい」





「すっすみません、失礼します」




(なら返事くらいしてよね)




と本人には言えない愚痴を心で漏らしながら

ドクターの机の横に近づいていき





「三好先生…あの…

  米良ヤヨイさんの…薬の事なんですけど…」





ミヨシ「チッ・・・ダラダラ話すな要点は?」





書き物の手を止める事なく

顔を伏せたままだが…

だいぶ機嫌が悪いのは伝わってくる



(今のご時世パワハラだよ・・)





「すみません

 薬の名前と…あと用法がわからなくて」





ミヨシ「はぁー・・・お前何度目だ?」





「・・・すみません」





ミヨシ「・・・・覚える気がねーから

   何度も聞きにくるんだろ?」





「・・・・・」





ミヨシ「チッ・・クロチアゼパムだ

  読めねーのか?毎食後だよ!!」





「ありがとうございます…」





頭を下げて逃げるように診察室から出て行き

鼻の奥がツンとするけど泣いてる場合じゃない…




自分の机に戻り直ぐに処方箋を印刷して

チェックのスタッフにカルテと一緒に渡し…




精神科の患者のカルテが私の方に

回ってこないようひたすら祈っていた…





(もう辞めたい…)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る