第46話 井の頭公園バラバラ殺人事件

 1994年4月23日、東京都三鷹市の「井の頭公園」の野外ステージ脇のゴミ集積所で女性清掃員が(猫の餌を探すため偶然ポリ袋を開けたらしい、清掃の一環ではない)男性の足首を発見した。

 駆けつけた警察官らが公園一帯を捜索したところ、合計27個もの分断された手足や胴体の一部が袋に入って7か所のゴミ箱の中から発見された。

 袋は小さい穴のある水切り用の黒い袋と半透明の袋の二重になっており、漁師らが使う特殊な結び方できつめに結ばれていた。

 手足の指紋が削り取られていたため身元の特定は難航するかに思われたがDNA検査の結果被害者は公園近くに住む一級建築士の男性川村誠一氏(当時35歳)と判明した。

 この事件については当初から目撃証言などが錯綜し、怨恨説や事故遭遇説などが根強く語られ、遺体の状態が組織的な犯行を匂わせることから宗教団体による謀殺説まで浮上した。

 ちょうどこの事件の数カ月後にはオウム真理教による松本サリン事件が発生している。

 しかし必死の捜査にもかかわらず被害者の交友関係や職場関係からは犯人像が浮かばず、有力な物証も乏しいことから捜査は難航し2009年4月23日、犯人を特定することなく公訴時効を迎えた。

 切断された遺体は電動ノコギリのようなもので約20cmに分けられており、これは公園のごみ箱の投入口の大きさにちょうど合わせたものと考えられている。

 また理由は不明だが血が一滴残らず抜き取られていた。

 これにはかなり高度な医学知識が必要であると考えられ、また切断のされかたから少なくとも3パターンの切断方法が見られ、複数犯の犯行との見方が強まった。

 発見された遺体は全体の三分の一にすぎず、現在に至るも残りの部分は見つかっていない。

 事件発覚以前にすでに公園のごみ箱から回収され、処分されているのではないか、という見方が有力である。

 そんなに簡単に死体がゴミとして処分されてしまうのか、と当時報道に驚いたのを管理人は覚えている。

 というか当時大学生であった管理人は先輩のにしき義統氏のアパートが上石神井にあってシミュレーションゲームで対戦中にこの事件を知った。

 それほど距離が離れていなかったので現場まで足を運んだのだがかなりの人でごったがえしていた。


 過熱していた報道も事件の三日後中華航空140便の墜落事故が発生したためすっかり縮小され、ぽつぽつと経過報道がみられるのみとなった。

 このとき付近住民へのインタビューで被害者に良く似た男性が二人組の男に殴られていた、人と車が激突したようなドンッという衝撃音を聞いた、などという情報が寄せられる。

 また被害者が東京都高井戸の某宗教施設に通っていたことが判明すると、宗教間トラブルがあったのではないかという報道もあった。


 新しい事実が発見されないことからこの事件は世間の関心を失い、さらに11ケ月後地下鉄サリン事件が発生すると合同捜査本部も解散されることとなる。

 三鷹署はなお捜査を継続したが、犯人につながる有力な手掛かりをえることはなかった。


 ちなみに岡田斗司夫は被害者宅の二階と三階を間借りして住んでいたそうだ。

 またこの後耐震偽装で一級建築士の姉歯氏が逮捕されたり、オウム真理教などの新興宗教組織が話題になりこの事件との関連性などが取り上げられることもあったが効果はなかった。

 都市伝説では死体を解剖した検死官が、この遺体を切断したのは検死官だ、と言ったという噂もある。

 しかし切断の仕方だけでそこまで判断できる可能性は低く、やはり都市伝説のレベルにすぎないだろう。

 ただし容疑者が警察の身うちで捜査が及び腰になっている可能性はある。

 当初血抜きをするには個人宅の台所や風呂程度では不可能なので暴力団の関与を指摘する声もあるが、もはや真実に届くことはあるまい。



 派手な発見のされかたで早期の解決が予想されたこの事件後、東京でバラバラ殺人が続発している。

 

 東京多摩・夫バラバラ(2006年)

 東京渋谷&新宿・夫バラバラ(2007年)

 東京渋谷・妹バラバラ(2007年)

 東京日本橋・遺体バラバラ(2007年)

 東京足立・妻バラバラ(2007年)

 東京青山霊園・頭蓋骨バラバラ(2007年)

 東京多摩川河川敷・人骨バラバラ(2007年)

 東京お台場・フィリピン女性バラバラ(2008年)

 東京江東区・女性失跡遺体バラバラ(2008年)


 など枚挙にいとまがないほどだ。

 そして必ずしも検挙率が高いとはいえないところにこの猟奇殺人の恐ろしさがあると思われる。

 リアルタイムで現場を見た管理人にとってはなかなか忘れがたい事件である。

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