恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

第44話 大阪西成女医不審死事件

大学のひとつ上の先輩が西成の出身で、熊谷では古タイヤが燃えていないことに驚いていたとか、お好み焼きの焼き方で広島県人に喧嘩を吹っ掛けたとかいろいろ逸話がある人だった。

管理人の西成に対するイメージは、この先輩のせいでかなり歪んでいるものと思われる。

　この事件は2009年11月16日に大阪市内で発生した「大阪西成女医殺人事件」と呼ばれる。

　大阪市内を流れる木津川の渡船場で医師の矢島祥子さん（当時34）の遺体が発見された事件で、事件発生から11年経った今も、矢島さんを殺害して遺体を遺棄した犯人は捕まっていない。

　被害者の矢島祥子さんは、西成区あいりん地区でホームレスなどの支援活動を行っていた人物だ。

　その活動のきっかけは、大阪市内にある淀川キリスト教病院に勤務しているときにホームレスの現状を目の当たりにしたことだったという。

　矢島さんは務めていた病院を退職し、あいりん地区に通いやすいように西成区鶴見橋のくろかわ診療所に勤務、医師として働くかたわら、夜回りやホームレス支援活動などを献身的に続けていた。

　ホームレスはおろか近隣住民からも“さっちゃん先生”と呼ばれ、とても慕われていた。

　また報道番組にも取り上げられ、「西成のマザーテレサ」という異名も有名である。

　事件当日、矢島さんが勤務していた診療所を後にしたのは朝方の4時15分であり、その後消息不明となった。

　まだ日の出前の暗い時間である。

　それ以降彼女の足取りはつかめぬまま、2日後の16日に木津川の渡船場で水死体となって発見された。

　この事件に関し、大阪府警察本部は矢島さんの遺体を検視した結果、死亡直前に知人に送った手紙等を根拠に、「過労による自死」と判断した。

　しかし不審な点が多いことから2010年9月14日、再捜査要求、苦情申し立てが大阪府公安委員会に対して矢島さんの遺族から行われる。

　そしてついに2012年8月22日、遺族が提出した「殺人・死体遺棄事件」としての刑事告訴状が受理され、再捜査が行われることとなった。

時系列を並べると以下の通りである。

■2009年11月13日22時ごろ

旧知の来客とくろかわ診療所で30分程度雑談をする。その後、矢島祥子さんは診療所内に残って残業をしている

■11月13日23時過ぎ

約30分間外出していることがカードキーの情報から判明している

■11月14日深夜0時以降

診療所内のパソコンで電子カルテのバックアップをしている

■11月14日4時15分

矢島さんは警備システム（ALSOK）を作動させて、診療所を出る

■11月14日4時16分

警備システムの警報が作動する

■11月14日4時50分

警備会社の警備員が診療所に駆け付けるが、特別な異常はなく、診療所には誰もいなかった

■11月14日4時50分ごろ

知人男性（交際相手？）にメールを送る（メール自体は未確認で証言のみ）

■11月14日8時30分

矢島祥子さんの自宅から話し声がしたという証言あり

■11月14日

知人男性（交際相手？）に絵葉書を投函した

■11月15日の朝

診療所のスタッフが西成警察署に矢島祥子さんの捜索願を出すが、受理されず

■11月15日10時20分

診療所所長の黒川渡医師より群馬県在住の家族に矢島祥子さんが行方不明であるとの連絡が入り、家族が高崎警察署に捜索願を出す

■11月15日

矢島祥子さんの部屋から鍵束（自宅・診療所の出入り口、机、ロッカーなど）が発見される

■11月16日1時20分

釣り人によって、矢島祥子さんの遺体が木津川の千本松渡船場で発見。

第一発見者は2人いて、1人はくろかわ診療所の向かいのマンションに住んでおり、もう1人は西成警察署近くのゲームセンターに勤務していた人物だった。

この時の矢島祥子医師の遺体の状況は服を着ていて、立位、死後硬直があった状態だった。

　まず不審な点の第一は自称交際相手に送ったと言われる遺書である。

　警察はこの遺書を理由に自殺と判断したわけであるが、遺書らしい文章といえば相手に「元気で長生きしてください」と書いてある程度で、その他の文章はほぼ挨拶文にすぎなかったという。

　これでは遺族が納得できないのも当然であろう。

　しかもこの交際相手というのもあくまで自称で、交際していた記録もなければそんな相手がいると聞いた友人もいなかったのだ。

　その後の調査でこの交際相手は「共産主義者同盟赤軍派」を名乗り、辺野古基地建設問題で反対運動をする過程で公務執行妨害罪で前科があることが判明した。

　また矢島さんの遺体にも数々の不審な点があった。

　矢島さんの両親も医者であり、すぐにこちらの点に気づいた。

・後頭部から頭頂部にかけて3cm程度のコブがあった

・首の両側に線状の圧迫痕あり

・顔には溢血点があった

・前頭部や右脛、右手などに表皮剥離あり

・死後硬直があった

　警察発表では、コブや傷は遺体を引き上げる時に鎖を使った時にできた傷と説明し、「過労による自殺で溺死」としていた。

　しかし、第一発見者は遺体を引き上げる際に鎖は使っていないと証言している。さらに、そもそもコブは死後にできることはない。

　また、溺死の水死体は死後硬直が起こらないはずなのである。

　死後なんらかの理由で首にロープのようなものが絡まっても策条痕はつかない。

　首吊りや絞殺でできる策条痕は生きているときにつくものなのだ。

　そして矢島祥子さんは生前に身の危険を感じていたという情報がある。

・殺されるんじゃないかと口にしていた

・死ぬ2日前に誰かに付け回されていた

・12～13日は身の危険を感じて、友人宅に泊まっていた

　薬物依存の患者を治療する中で、麻薬の売人とトラブルを起こしていたという情報もある。

　そして矢島祥子医師の自転車は、2009年12月に遺体発見場所から2.5kmも離れた市営団地で見つかった。

　しかも、団地の駐輪場に普通に停められていた。

　自宅とも自殺現場とも全く関係がない場所で、しかも自転車からは一切の指紋が検出されなかった。

　そんなところに矢島祥子医師の自転車が停められていたのかは全くの不明であるが、自殺現場に向かう前に自転車を乗り捨てていくにはあまりに不自然であった。

　矢島祥子医師は11月14日の未明に行方不明になったが、11月15日には診療所のスタッフが心配して、矢島さんの自宅を訪問している。

　この時、自宅の玄関の鍵は開いていた。自宅には自宅や診療所の鍵が置いたままになっていたという。

　ということは、矢島さんは最後に目撃された診療所から一度は自宅に戻ってきた可能性がある。

・自宅の鍵が開いていた

・鍵の束が置きっぱなしになっていた

・郵便ポストが破壊されていた

・部屋の中にはほこりがなく、指紋も拭き取られていた

　矢島さんの自宅に矢島さんの指紋がないのはあまりに不自然である。というか不自然すぎる。

　これを問題に思わない警察はかなり終わっていると思う。

　しかも、矢島祥子医師の自宅の隣にあるマンションと斜め前のコンビニの防犯カメラは事件当日、なぜか録画されていなかった。

　管理人のミスで録画されていなかったと警察は発表したが、管理人は24時間作動していたと発言しており、防犯カメラのシステム上その日だけ録画しないというのはおかしい。

　その後の2012年8月6日、大阪市西成区のアパートで火事が起こり、佐藤豊さんが焼死した。

　この佐藤豊さんは矢島祥子医師の支援を受けていた人物で、一緒に夜回りをしていたという。

　西成の貧困ビジネスで二人はなんらかの秘密を知ってしまったのではないか。

　警察の捜査がおかしいのはそうした背景から黒幕によって圧力を受けているのではないか。

　そんな噂が絶えない事件である。