第23話 ウルトラマン都市伝説
伊集院光は管理人も好きな芸人の一人である。
オタク知識にも造詣が深く、その博識ぶりには驚かされる。
これはやりすぎコージーという番組で特撮好きな伊集院光がとある都市伝説の謎を解明した珍しい事例である。
懐かしの番組特集やウルトラマンの思い出などを語る番組であるハガキが制作スタッフの間で話題になっていた。
「どうしたの?」
「いやあ、実はウルトラマンの最終回でウルトラマンがブチ切れて東京を破壊して終わった回があるってハガキが来てるんですけど、そんなはずありませんよね~」
当然である。
子供向けの勧善懲悪特撮番組であったウルトラマンがこともあろうにブチ切れて東京を破壊して終わりなどという最終回があるはずもない。
非常に多くのファンがいるウルトラマンシリーズは有名なウルトラセブンの被爆星人を含めお蔵入りになった回もすべて把握されており、幻の最終回などというものもないことは
関係者スタッフに聞いてみても明らかだった。
しかしこの手のハガキはこうした番組のたびにどこからか必ず何通が送られてくるのだそうだ。
「……というわけなんだけどリスナーの皆さん知ってる?」
自らが担当する某ラジオ番組で伊集院氏はリスナーに呼びかけてみた。
するとやはりわずかに何通かではあるが、ウルトラマンが最終回で東京を破壊したというハガキが届いたのである。
宛先を見ると不思議なことにみなある県の一地域の住所ばかりであった。
しかも見た時期もすべて同じころに集中していた。
この一致には絶対に何かわけがある。
疑問を覚えた伊集院氏は特撮雑誌の編集者に尋ねてみると、「その地方でその時期放送されていた番組でひとつ面白いのがあるよ」と言われた。
それがこのアイアンキングである。円谷プロの生んだウルトラマンに負けまいと各メーカーもヒーロー特撮を次々と発表していたがアイアンキングはTBS系列で放送された宣弘社制作のヒーローものだった。
特殊な設定で主人公が変身ヒーローアイアンキングではなく、しかもアイアンキングと生身のままで同じくらい強いという当時としては異色の作品だった。
しかし見た目だけ見ればウルトラマンのパチもんであることは明らかである。
ではこれの最終回はアイアンキングが東京を火の海にするのか?というとそうではなかった。
だが、実は最終回は前篇後篇に分かれており、前篇では敵に催眠術をかけられたアイアンキングが東京を破壊するという展開になっていた。
そして後篇でアイアンキングは応援してくれる子供たちの愛の力で催眠術から覚め、敵の怪人を倒して宇宙へと帰っていく。
ところが、全国ネットのある地方局だけが、自分の放送局の都合で後篇をオンエアしないまま終わってしまったというのである。
アイアンキングが催眠術をかけられ東京を怪人とともに破壊しつくしておいて、来週からはこの番組が始まります!というテロップを見た子供たちはまさに
ぽかーーーーーーん
状態であっただろう。
終わり?東京を破壊して悪の手先になって終わり?
年月の経過とともに忘れられぬひどい最終回の記憶として、ウルトラマンが最終回でブチ切れて東京を破壊したという都市伝説が生まれた。
しかし伊集院氏の尽力でこの都市伝説には明快な回答という一種の憑き物落としが行われたのである。
氏の功績に惜しみない賛辞をささげたい。
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