第35話 マッケンナの婚約
卒業式は、粛々と行われ、卒業される皆さんを見送った。第二王子が送辞を読み、ローラの再従姉妹アメニア様の答辞で式を締めた。
ローレンス殿下は他国へ外務中らしい。帰国後、王から王太子について発表があるらしく、シャーリスは益々気品溢れる淑女になっている。
マッケンナ様とローレンス殿下のご成婚は夏に行われると発表されている。あちこちで破棄騒動までして結局なんだったんだとか、お二人のあること無いこと言われていた。マッケンナ様はまだ悪役令嬢のイメージがついていて、ローレンス殿下は他の子女に惑わされ優柔不断の頼りない王子のイメージが民衆についている。
母様などは、そうすることで民にも他国にも第二王子が王太子として立つことがスムーズに認められるよう、揉め事もなく皆に歓迎されるように取り計らっているのだろうと言う。
お二人が臣下に撤し、アルファード様とシャーリスを守り盛り上げているのをかっこよく思う。お二人にも幸せになる権利はあるし幸せになって欲しいと心から思う。
卒業式が終わるとすぐに我が家はスタンレー領に向かった。ノーラ姉様は少し前から準備の為、スタンレー領で過ごしている。
レオノーラ姉様とレオナルド義兄様の結婚式はスタンレー領の教会であげ、レオノーラ姉様の美しさが際立つドレスで誰もが感嘆の声を上げた。たくさんのフラワーシャワーがひらひらと舞い、領民にも祝福され、幸せいっぱいの式だった。
私達もしばらくストンズ領に滞在していた。セオ兄様は、次期領主として彼方此方と移動して忙しい。私も以前訪れた村にいき、畑の様子を見に行った。林の腐葉土を三年以上使い回した畑に混ぜ、芋を植えてくれていた。葉は綺麗な緑をしており、元気そうに見える。他と比べても遜色はなく、収穫が楽しみだ。
兄様が各村の外れの蜂の巣箱の設置を、領内の林檎や葡萄、作物の受粉のために積極的に行っている。
どの作物も収穫期が賑わって、領民が豊かになっていくと良いな。
すぐに私は、2年生になった。
正式に第二王子アルファード様が王太子として立つことが発表された。
シャーリスは王太子妃候補として護衛が学院内でもついた。ますます王妃教育が忙しくなかなか会えない。ローラも寂しいが、国を背負う友人を誇りに思うし、私達も頑張ろうと勉強に力を入れた。そのおかげで成績も上がり、上位に名前を連ねるようになった。
季節は早々に過ぎ2度目の交流会の研究メンバーが告げられ、ローラと私、ともに選ばれた。違うグループだが、お互い楽しみだ。
セオ兄様と同じグループにいるが今回兄様はリーダーではなく、エイデル様がリーダーとしてまとめてくれる。
私は各領地の畑の輪転や焼き畑、周期ごとの収穫量をまとめる作業をしている。かなり量は多いがその分統計が揃い、実験的案も出る。すでに実施しているところも多いので検証結果も充実した。
そんなある日、突然、マッケンナ様が婚約解消し、ツァーリ公爵家の遠縁にあたる隣国の公爵家に嫁ぐことが発表された。隣国との端渡しもあるらしいが、隣国の王太子のもとに我が国の第一王女が嫁ぐと決まったためだろう。
マッケンナ様はどんな気持ちでお過ごしか、と思うと心が痛い。
エイデル様にもなんて言っていいか言い難く、声をかけづらかった。
そんな私を見越してか、帰宅準備をする教室でエイデル様は私に声をかけた。
「なんか誤解しているみたいだから言っておく。姉様は、今の婚約者が初恋の人で、件の騒動の時、領地療養中も心身ともに支えてくれた人だよ。とっても幸せそうだよ」
「えっ、それじゃ何のために第一王子と」
と言えば、国内の安定の為だったと言う。
「では、おめでとうございますですね」
と笑って言えば
「うん、本当に」
と笑って答えた。
家につくとずっとモヤモヤした気持ちが、どこからか溢れそうになる。それを押し込める為に、庭園をウォーキングした。
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