第18話 第一王子の謝罪

明日は、友達と王都に遊びに行く、とても楽しみにしていた。馬車乗り場で別れるまで、流行りのカフェや雑貨店、書店に行こうと話していた。


夕食の時間辺りにアンナから、シャーリスより手紙が届き別日にして欲しいとの謝罪の言葉が書いてあった。何か家に帰るとあったのだろう。非常に残念だ。


またしても残念な思いが誰にでも読み取れる顔をしていた私は、王都に遊びに行くのが中止になった事を言う。ノーラ姉様がそれならと一緒に孤児院へ訪問しようと誘われる。

外出する気持ちでいたので、すぐに

「ご一緒します」

と答えた。ダイニングから出る時にノーラ姉様から孤児院の近くにある屋台の串焼きは美味しいので一緒に食べましょうと言われ、串焼きが楽しみになった。


我が家が寄付をしている孤児院は、スタンレー家も寄付をしているとの事で前に訪問した時はレオ義兄様と来て串焼きを食べたそうだ。頭の中は串焼きだらけになった私は悪くない。


子供達の声が外にも聞こえる、教会が併設されている孤児院で小さな庭には洗濯物が何重にも干されていた。ノーラ姉様は院長に挨拶に行ってから本を読んだり字を教えるのを手伝うそうだ。いずれ私も一人でも出来るようにならなければいけないと馬車の中で説明を受けた。花嫁修行の一環らしい。


私は何をしようかなと思っていると洗濯物の隙間から男の子達の声と男性が剣を振っている姿がちらりと見える。若干の興味で覗く。どこかでわかっていたが、目が合うと心臓がドクンと跳ねる。逆プリン色の髪はちょうど黒い部分が結ばれている。


「失礼しました。殿下」

と言って貴族の礼をする。

「君はセオドリアの妹だよね」

視線を落とし礼をしたまま

「ストンズ伯爵の娘シャルロッテと申します」

「ローレンス・リディアだ」

と言い顔上げてと言われた。殿下は幸の薄い美人顔は相変わらず健在でますます痩せられたような気がする。

「セオドリアに伝えたのだが、図書室では私絡みの政略に巻き込んでしまい申し訳ない」

辛そうに声を絞り言う。なんでかその表情を見ると怒りが湧いて

「謝罪なんていりません。あの司書が液体をこぼしてそこに偶々私がいて拭いただけです。なんでもご自分のせいだと不幸の全ては自分にあるような言い方はよろしくないかと」

なんて偉そうなことを言ってしまった。不敬罪、になるかなと焦って

「失礼しました」

と慌てる。

「本当にずっとこの国も家族も不幸の元凶は自分にあると思っているよ」

眉尻を下げながら言う。

もともと原因があるのはわかるし、乙女ゲームだったとしたら物語として攻略されたのであろう、例え薬物を使われたとしても。この話のストーリーは私にはわからないが、確実にわかる事がある。

「失礼ながら、申し上げます。不幸というものはサマーパーティーの件ですか?色々あったみたいですが誰かお亡くなりになりましたか?ご自分の甘さを突きつけられた方ばかりなのでは。今、そこが問題なのではなく時間も事象も進んでいるのではないですか?」


沈黙は続き、居た堪れなく逃げるように後ろを向く。

「本当にそうだ。事態は進んでいる、また私は逃げようとしていた」

と先程までの泣きそうな表情ではなかった。真っ直ぐに前を向いた言葉にとても嬉しくなった。何故かムズムズした気持ちになって関係ないけど以前から気になってた事を聞いた。

「殿下の髪色なのですが、何故、下の部分だけ黒いのですか?」

急にそんなことを言われて驚いたように少しの笑顔で

「黒い部分は魅了の薬物の治療薬の跡。戒めの為に残している」

やっぱりそんな事かと思った。

「失礼ながら殿下、その髪似合っておりません。その黒い部分も過去です。民は不幸な殿下よりカッコいい殿下を見たいと思います」

目を見開いたかと思ったらゲラゲラ笑う殿下がいた。

生意気な事を言ったけど笑う殿下を見れて幸せだと思った。


これがもしストーリー通りだとしても、今、私が生きている時間は自分で動いている。転生者として記憶がほぼ無しでこれをゲームだラノベだと当てはめようとする私だが、わかったふりは結局何もわかってない。


馬車の中で食べた串焼きは凄く美味しくて、不敬罪で捕まっても仕方なしとも思えた。

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