第16話 素敵な友達
お茶会は情報の宝箱、なんて誰が言ったかわからないが、シャーリスのことを思うと胸が痛くなる。友達として出来ることをしよう。
教室は朝から騒がしかった。まだローラもシャーリスも来ていなかったため教室内にいた女生徒に囲まれた。隣国の王女が留学してくることをいいようにも悪いようにも取れる言い回しで、こちらの勢力を伺う気だ。クラスの中までこうなるとシャーリスの心中は複雑だろう。嫌みを言う女生徒も出てくるだろう。私はそっけなく
「隣国の王女がお二人もお見えになるそうですね」
と二人という部分を強調した。婚約者は決まってないじゃないと状況はまだ検討となっていると遠回しに言ってみた。私からシャーリスのことを聞きたかったであろう女生徒達は、面白くなさげに私から離れる。
他人の不幸は美味しい、それはわかる。でもクラスの仲間じゃないなんて思う私は、友達が関係しているからこその肩入れ。貴族令嬢としては駄目だろう。二人がなかなか教室に入ってこないことを窓から見える雲に気持ちを押し込めていた。
昼食に3人で食堂に向かっていると前方から上級生の御令嬢方がやってきた。朝もシャーリスに絡んできた令嬢達がいたそうで嫌みをいうためだけに待ち伏せしている。
「あらあら、大変ですわね。隣国の王女様では貴方の出番はありませんね」
「王女様方と共に学院で学べる事楽しみですね」
「貴方はどうされるの?」
と小馬鹿にした含み笑いをしながら話しかけてくる。
「はい、私も楽しみです。異文化を教えていただけて是非お茶会でお会いしたいですわ」
と堂々と話すシャーリスの表情は凛として美しい。彼女が淑女として第二王子の婚約者候補としてどれだけ研鑽してきたかわかる花のような笑顔で令嬢をあしらう。
「皆様方のお心遣い感謝致します。しかしながら、私としては何も変わりません。ただ時の流れに使命を全うしたいと存じます」
軽く目線で威圧しその場を後にした。
シャーリスとしては婚約をしたわけでもないので一切落ち度もないし、キズは無し。あたり前の事を言っているだけなのに、足を引っ張ろうとする人はどんな得があるのだろうか?
「騒がしてごめんなさいね」
と私達に言う。先日に比べてスッキリとした表情は気持ちの落とし所を見つけたのだろう。強い子だなと思う。
「盾も出来なくてこちらこそ申し訳ないわ」
とローラも言う。可愛いだけじゃなく二人は強く眩しい。そのままの事を私が言うと二人して可愛いらしい笑みを見せてくれた。
「今度のお休みに王都のお店巡りしない?」
シャーリスが可愛くおねだりポーズをすれば
「恋に落ちてしまいそう」
と笑いあった。休日が待ち遠しい。
離れた場所に王子御一行が居たが寄って来る様子もなく、フォローも何もないのかと思ったが、話しかけられる方がまた噂話を助長する。それぞれの気持ちはどこにあるのだろう。ストーリー通りに進むのであれば、選択する感情があり分岐点があるはずだ。私には見えないのでやっぱりモブなのかなと思っていた。
お昼を食べ終わり教室に戻る廊下でセオ兄様に会った。登校は、一緒にしているが学院内ではなかなか会えない。そもそも三年生からはコース別なので別校舎だ。一緒にいるのは逆プリン頭の第一王子。いつから知り合いだった?驚いた顔してしまったが私は悪くない。
私達はしっかりと淑女の礼をとり、軽い挨拶で締めてくれた。なぜ一緒にいたのか、気になるが余計なことは話さない。
午後の授業は心ここにあらずで時間だけが進む、いつも通りに3人で帰ると、今日ローラから借りた本を忘れたことに気づいた。
「ごめんなさい、教室に取りに行くわ、先に帰ってて」
「気にしないでいいわよ」
とローラは言ってくれたが、失くしたりしたら嫌なので、取りに行く。
本を持って教室を出ると何人かの女生徒の群れがあり、何か嫌な感じだなと思い、私の特技空気になるを発動した。ただようがごとくスイスイと人と人を壁にしながら前に進む。早歩きの向上と印象薄な私だから熟せる技。私も忍者になれるかも、アンナが前に技がどうとか言っていた。人混みに上手く溶け込めるこの技はどこかで役に立って欲しい。ただ今は非常に役に立っている。
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