いきなりすぎっ!
小林勤務
第1話 好きだっ!
株式会社ストレートに勤める社畜の俺には好きな子がいる。
彼女の名前は、
最近、同じ経理部に配属された新人の子だ。
はっきり言ってめちゃくちゃ可愛い。きっと性格もいい――はずだ。俺の目に狂いはない。この目だけは自信がある。
彼女でもないが、勝手に咲ちゃんと呼んでいる。心の中で。秘かに想いを寄せているのも飽きたので、今日は思い切って食事に誘った。
まずは無難に喫茶店。お茶でもしながら互いの距離を縮めようと思ったのだが、あまりに彼女が可愛く、わいわい盛り上がったので、そのまま告白した。
「咲ちゃん、好きですっ! 俺と付き合ってくださいっ!」
結果は当然といえば当然だが、振られた。
いや、振られたのではない。
「いきなりすぎっ」
ってびっくりされたのだ。なので、改めてデートに誘って、3回目でもう一度告白した。今度はOKだった。晴れて彼女になったし、咲ちゃんのことが好き過ぎるので、そのまま中野のホテルに行こうとしたが、再び「いきなりすぎっ」ってはぐらかされてしまった。
流石に強引すぎた。でも、俺は彼女が好きだ。
好きというのは、相手の体を求めることに他ならない。肌が触れ合うスキンシップの欠けた「好き」は「嘘好」だ。もじもじ、うじうじするのは性に合わない。はっきり声を大にして高らかに宣言しよう。
俺は、咲ちゃんとやりたいっ!
――と、いうことで。
今度は、自宅で一緒に映画でも観ようと誘ってみた。これまた「いきなりすぎっ」とお決まりの文句で返されたが、本人も特に悪い気はしていないらしく、そのまま手を繋いで、流れるように我が家へピットイン。
1LDKの狭い室内で、小さなソファに並んで座る。お酒を飲みながら、ゆらりゆらりと映画を鑑賞。
映画は無難に、「ジェラシックワールド炎の王国」を選択した。無難かどうか定かではないが、「すご~い!」「ティラノサウルスやばくない!?」「ラプトルかわいい~」という感じできゃっきゃっと盛り上がった。
どうやら映画の選択は成功したみたいだ。流石に、二人きりになって今世紀最恐の呼び声が高い洋画「*****」を鑑賞するほど俺は馬鹿じゃない。「*****」もだめだ。残酷シーンのオンパレードに一瞬で空気が凍り付くのは目に見えている。
さて、少しばかり酔いも回り、場も温まってきたので徐々に距離を縮める。どくん、どくんと胸が高鳴る。彼女の潤んだ瞳、艶っぽく光る唇が近い。ついに、ついに、俺は大好きな咲ちゃんと――。
「わたし、秘密があるけどいいですか?」
ここでまさかの告白。
正直、咲ちゃんは無口だ。奥ゆかしいと言えば奥ゆかしいのだが、基本的に「いきなりすぎっ」としか口を開かない。仕事中は別だよ。ちゃんと俺たちは経理業務をこなしている。科目修正は抜かりないし。無駄な経費は通さない。そんな彼女が何を急に。なんか秘め事があるのか……?
「これ、見てください」
彼女はおもむろに洋服を脱ぎだす。すらりとシャツが白い肌を滑り落ちて、その秘密が露わになった――。
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