第269話 ただいま。
ただいま。
-MkⅢ-
厳かに結婚式のプログラムがすすみ、いよいよ両名の宣誓が始まった。
誓いの口づけの瞬間を迎えようとする。
私の隣に居る王様はどうなったかと心配に成って様子を窺って見ると、予想を見事に裏切って号泣して居た。
思わず少し驚いて聞いてしまった。
「あの、王様?大丈夫ですか?」
「ああ、大賢者殿、心配召されるな、ワシはこのセレナには並々ならない思い入れがあってな。
本当にこの子にだけは申し訳の無い事をしてしもうたと後悔しておるのだよ。
元々、この子は私の片腕と言っても良い友人の息子、セドリックに嫁がせるつもりであったのだ、しかし情勢的にランクル帝国へと言う具合に嫁ぎ先の予定を変えざるを得なくなった・・・
そこからがこの子の悲劇であった。
直後に学園へ入学、そこでセドリックと同級生となってしまい、セレナはセドリックに惹かれて行ってしまった。
だがワシは、政略の為にこの子を利用する以外に考えが至らなかった。
本来の嫁ぎ先へと嫁がせてやりたい気持ちもあったが、出来なかった。
そうこうしておる内にワシが病気になって寝込んでしまった。
そこへ、ランクル帝国の不穏な動きが表沙汰になってしまってこの有様。
そもそもランクルに嫁いでもセレナは幸せにはなれんかっただろう、何故ならあそこの第一王子はまだ若すぎる、つまり皇帝の側室として嫁がねば成らなかったのだから、本当にセレナには辛い思いを強いてしまった。
此度の戦争、セドリックのお陰で、其方のお陰で全てが治まる所へと治まった。
本当に感謝して居る、セレナ共々、大賢者殿には脚を向けて寝られんと思うて居るよ、本当に、ありがとう。」
又しても、今度は泣きながら頭を下げられてしまった。
ここまで低姿勢に出られて悪い気はしないのも心情よね。
ストレージから、ネクロノミコン最新改定版第三版を取り出した私は、王様に手渡した。
「これを差し上げます、恐らくは、親和性の無い方には一切読めない内容となって居りますが、読める方にとっては、これは魔導書です。
木、火、土、水、風の章と、その上位
森、炎、地、氷、雷の章、
そして光、闇の12章、それに、無属性魔法を含む特殊な魔法の全13章から構成された魔導書になって居ます。
読める方に読める章を写本して貰って広めて下さい。
これで魔導士が生まれる筈です。」
「聖女殿の使った薬等はどの章の産物になるのですかな?」
「それは、闇の章と無属性の章の巻末にある医学知識の複合ですね。
解毒は又少し違って、光属性と医学知識の複合、若しくは水属性と医学知識の複合の何れかに成ります。」
「成程、複雑なのですな。
では、有り難く頂戴しよう。
所でこの本を写本して教会やギルドへは、流しても?」
「構いませんよ。
むしろ広めて貰った方が良いです。
冒険者や騎士達の力になると思いますし、生存率を上げる手助けにもなる筈なので。」
「その様に視野を広く持っておられるのか、流石は大賢者殿。」
こうして、私は何故か王様にすっかり懐かれていたけど、結婚式は終了、セレナの投げたブーケを手に出来たのがクリスで、そのままやっちゃえって事でクリスとキースの結婚式やって貰ったりした。
この教会の神父さんは孤児だったキース達を育てた人だから、キースとクリスの結婚には涙流して喜んでたよ。
もうクリスのお腹にはキースの子が居るって私がコッソリ教えといたけどね。
でも、覆面して無い私を見て聖女様って何で判ったのよ、もしかしてバレてた?
まぁ良いけどな、今更。
--------
二つの結婚式も終わって、ジ・アースと共に冒険者ギルドに。
扉を開けるとともに大声で「たっだいま~!」
とか言って見た。
一斉に視線が集中する。
賢者殿だ、とか、聖女様が戻って来た、等とすっげえ勢いでざわつくギルド。
「エリーさぁ~~~ん!」
涙声で叫んでカウンターから身を乗り出して大騒ぎを始めるサリー・デルタ・・・
あ、そうか、この子このカウンターの外に出られないんだっけか。
「よっ、デルタ久しぶり。」
かるぅ~い感じで挨拶してやったら、つれないとか、私とエリーさんの中なのに酷いとか意味不明な不満を宣ってる。
カウンターに乗り出したままジタバタするデルタに一言。
「なぁ、あんたさ、ホムンクルスって自覚も有るんだろうけど、自我が芽生えて何年になるの?」
「え?私、ですか?」
「他に誰が居るのよ、判ってるわよ、自我が有る位見てれば判るし、それに、ホムンクルスって事で色々諦めてるのも判ってる。」
「そう・・・でしたか・・・もうずっと前に諦めました、エヘッ。
そうですねぇ、100年位前ですかねぇ~・・・」
能天気キャラのデルタの顔が曇るのが判る。
「そ、お洒落とか、したく無い?」
「そりゃぁ~・・・ずっと、したいとは思ってますけど・・・」
「んじゃお買い物行ってみようか?」
「無理です、出られませんから・・・」
「私に任せなさい、出られるように改良してあげるっつってんの。」
「え?」
「それともこのままで腐って居たいの? いやでしょう?」
むしろこのタイプは聖書に出会って本当の意味で腐りそうなんだけどな・・・w
「私が??? お外に出られるの??? どうやって??? え?え?え?」
何か勝手に混乱はじめたけれど、だな。
「あのね、良い事教えちゃる、私は、ハイエルフに本当になっちゃったのだ。 ほら。」
と、耳を見せてやると。
「あ・・・」
「で、だね、その時にスキルも進化してね、ホムンクルスを作れるようになったの、だから貴女の改造も出来ると言う訳、どうする??」
「エリー様、本当に良いんですか? それが本当なら、お願いしたいです。」
「だよね、容姿はお年頃の女の子だから、精神は肉体に引っ張られると言うのを私自身で証明出来た訳だし、あんたもそうなんじゃ無いかなぁと思ったのよね。」
やっぱホルモンバランスとかで、精神は変化する。
それは、あの時の女子魔人ちゃんにも言える所だったのでホムンクルスにも適応されるんじゃ無いかと思ったのよ。
「おし、じゃあやろうか、今すぐ。」
「え?今??」
「そ、今。」
「えぇぇ~???」
「ほい、完了。」
「え?今、何かしてましたか??」
「うん、もう魔力で。
さ、もう貴方はこの場所に縛られてはいないわよ、出て見なさいな?」
「・・・はぁ、本当かなぁ。」
カウンターの内側から、バネ扉を開いて一歩踏み出すサリー・デルタ。
そして、これ迄の限界位置をあっさり超えて次の一歩を踏み出す事に成功した。
サリーの目に涙が込み上げる。
「え・・・エリーさぁん・・・うぇっ・・・うえぇぇぇぇ~・・・」
泣き出しちゃったよ、よっぽど出て見たかったんだねぇ、たった一歩でこんなじゃ外に出たらどうなっちゃう事やら。
序でだから対応年数が大分減ってたので後500年位増やして置いた。
もう200年以上生きてる訳だし今更500年位増えても普通でしょう。
「おう、帰って来たか、お前ら。」
「あ、ギルマス・・・一時的に帰って来ただけよ、セドリック君の結婚式だったからね。」
「成程そう言う事か。
で、ザインはどうしたんだ?」
「じつは・・・「まさか、お前「誤解しないようにね、今のザインは、これ。」
かぶされたのでかぶせ返してやって写真を見せると。
「なんだこりゃ、どんな状況なんだ?」
そこからギルマスの部屋に呼ばれて、ここまでの経緯を、ジ・アースの面々と一緒に冒険譚として語って聞かせた。
「さて、カイエン、キース、お前らも今日は疲れたろ、まだ少し時間は早めだが飛空艇に戻って休め。」
「エリーは?」
「私は商業ギルドにシーサーペントの素材を卸して来る。
すぐ戻るから先に戻っててくれ。」
「判った、じゃあそうさせて貰おう。」
その後、商業ギルドで色々と収めて大金貨400枚程を手に入れた私は、不足し始めて居た植物紙を仕入れてもう一度冒険者ギルドに戻り、食堂の本棚にこっそりと魔導書を並べて帰って来た。
何でわざわざ紙を買うのかって?
だってさぁ、紙って未だあんまり一般的じゃ無いからさ、私が立ち上げさせた企業でも売れなきゃ潰れるでしょう?
200ロットほど注文して10ロットその場で買い付けたのだった。
同じく私が立ち上げた企業、エリークシール製のお化粧品もまとめ買いして帰って来ました。
これからもっと沢山の不遇女子を救う為にw
さぁ、明日はセドリックさんの先回りをして王都だ!
飛空艇のAI、イーグルちゃん自動操縦よろしくね~w
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます