第246話 番外編18(前編).教会の聖女1

      番外編18(前編).教会の聖女1

 -港町ローデスト、教会-

 -アリエッタ-

「アン、ドゥー、トロワ、今日もお留守番と子供達のお世話、お願いね、私は往診に行ってきます。」

「シスターアリエッタ、行ってらっしゃいませ。

 今日は聖女エリー様のレシピのカツカレーをお昼に出す予定なので、一度お帰りになって下さい。」

「カツカレーかぁ~、判りました、お昼には一旦戻ります。」

 最近は、私の医療魔法が評判になって居て、冒険者ギルドや騎士団、航空隊や、漁師ギルドへと往診先が増えている為に、AIアンドロイドのアン、ドゥー、トロワの三体に、牧師たる元神、アスム様のお世話と子供達の世話、それとこの教会へ訪れる信者の懺悔を聞く等の教会としての業務はすっかり任せっきりになってしまって居る。

 もう少しだ、もう少しで教会の模様替えが可能になる。

 御神体としての銅像を新しい物へ交換する為の資金を溜めているのだ。

 もうすぐ、聖女エリー像を発注出来る。

 アスモデウス像は、もう要りません。

 何故なら此処は、セントエリー聖教会本部と成ったのだから。

 既に、エリー師匠と関わった方々が入信して来ていた。

 アスモデウス様を祭って居た時とは雲泥の差の入信者数なのだ。

 突然崇拝対象が変わったと知った時、2∼3人程居たアスモデウス信者の方からは苦言が出ましたが、それも私のこの医療魔法と、義体を含む技術の粋を披露する事で既に取り込む事が出来て居る。

 今日の往診順は、漁師ギルドから。

 と言うか、一番早い時間に構成員が帰って来るギルドなのでいつも一番に回る事に成って居る。

 網で擦り傷、裂け傷を負った方、一本釣りの針で怪我をした方など、漁師ならではの怪我が多いですね。

 極稀に、うっかり毒を持つ魚をウッカリ踏んづけてしまった方の解毒治療等もします。

 怪我の治療などの魔法は闇魔法、解毒は光魔法に成ります。

 ここで治療費を頂き、帰る段階で、大概の場合、お土産として、海産物を頂きます。

 孤児達の為に、遠慮なく頂いて帰ります。

 普通、鮮度が重要ですから一度帰ろうと言う話になるのですが、師匠に頂いた闇魔法の中に、マジックストレージが有りました。

 この魔法は、師匠がスキルとして持つストレージを闇魔法で再現した時空魔法で、師匠のストレージほどではりませんが、大容量の亜空間スペースが収納として仕えるだけでなく、亜空間ならではの属性で、時間停止の付与が付く為に、新鮮な魚介類がそのまま保管出来るので、そのまま次の往診先へと向かう事が出来ます。

 次に、設立されたばかりの、航空隊、此処はエリー師匠が提供したジェット戦闘機を使用する為、かなり厳しい特訓が行われて居るようで、大概の場合、疲労回復の依頼が多い。

 SPポーションを配って、代金を頂く、そのまま隣接する騎士団訓練場へ行くと、此処で多い依頼は、木剣での実践形式の打ち合いのお陰で打ち身や、酷い場合骨にひびが入る等の回復が多く、漁師ギルド同様に低級医療魔法で治せる物が殆どだ。

 ハーフエルフとして生を受けた私の魔力であれば、ここまでに使ったマナで、魔力枯渇する事も在り得ない。

 これで金銭を稼ぐ事が出来るのだから、本当にエリー師匠には頭が上がらない。

 まさかマッドが高じて魔法迄作り出してしまうなんて誰が想像出来ようか。

 おっと失礼。

 此処まで回った金額で、既に孤児達を養って使っても一週間は持つ。

 そして最後に冒険者ギルドに向かう訳だが、今日はここで正午、一度教会へ戻ってお昼を頂く。

「ただいまー。」

「シスターお帰りなさーい!」

 子供達が一斉に飛び出してくる。

 この子達も、私の往診で稼いで来るお金のお陰で良い暮らしが出来ている事をよく判って居る為に、あまり私に我儘は言わない、とてもいい子達だ。

 アンドロイド達には割と我儘を言うようだから、本当に良く判って居るのだと思う、賢い子達だ。

 子供の中から3人程、魔法が使える子が出て来ている。

 この子達は、エリー師匠が置いて行った魔導書を読めたと言う子達で、ハッキリ言って識字率は多く無い筈だし、読めなかった子達の筈なので、きっと、その属性と親和性の有る人には、字が読めずとも内容が理解出来るようになって居るんだと思う、どう言う原理かは知らないけど、ナノマシンを得意とする師匠の事なので、そう言ったナノマシンが内包されて居るのだと思う。

 あんなとんでもない人を敵に回そうと言う人が居るならば、容赦なく消し炭にされて居る事だろう。

 そんな事より、カレーですよカレー!

 エリー師匠ってば容赦無いんだからもうっ!

 この世界でまさかカツカレーを再現するなんてぇっ!

 しかも、金沢カレーって奴らしく、キャベツのコールスローを引いた上にご飯とカレーを掛けてカツをトッピングして居ると言う栄養バランス仕様!

「頂きます。」

 この、かぶりつきたい感情を抑えて、そっと一口目をスプーンで掬って口へと運ぶ・・・

 ん~! おいしぃ~!

 以前だと、孤児院の運営費がカツカツだったせいもあり、こんな大皿に料理が乗れば、子供達が分け合って食べる程度でしか食べ物の提供が出来なかった、今では私一人の一食分で、更に足りなければお替りすら出来る、素晴らしい事です、師匠には、本当に足を向けて寝られないわ。

「お替り、宜しいかしら。」

「どうぞ、アリエッタ様。」

 うん、魔力使うとお腹空くのよね。

 そして師匠のレシピ最強です。

 これでも十分に美味しいけれど、本人が作ったらこんな程度ではなく別次元の美味しさに違いない。

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