第203話 ジ・アースとMkⅢ

        ジ・アースとMkⅢ

「おいお前ら、何してんだ?」

 まさか未だこんな所に居るとはねぇ。

「エリー!?」

「随分と面白そうなのと対峙してんな、おい。」

「面白くねぇよ! 何でこの辺りの魔物はこんな出鱈目につえーのばっかなんだ?」

「さあな、何でそうなのかは知らん、だけど、良い所に来たってとこか?」

「そうねぇ~、連戦でもう術札も無くなっちゃって困ってた所よぉ~。」

 マカンヌが発言すると、あまり切羽詰まってるようには、全く聞こえないのが不思議である。

「しょうがねぇな、こっちの一匹は私がやってやるからそっちの奴等に集中しなさい。」

「すまん、助かる。」

「オーブ!行くよ!」

「了解にゃぁ! アタイの新技を見せてやるにゃ~!」

 突っ込んで行ったオーブが、吹っ飛んで戻って来た。

「し、師匠、死んじゃうにゃ・・・」

「あんた何も考えずに突っ込み過ぎだからね?」

 ったくしょうがねぇ子だな。

 邑雅を腰に携え、魔獣と対峙する。

 こいつは鵺と言う魔獣だ、何で雷獣と呼ばれるかっつーと、すっげー素早くて捉え処が無いからだ。

 でも私には止まって居るも同然。

 ちょっとおふざけで有名なアニメの某キャラの技名をパクって見たりする。

「雷の○吸、壱の形・・・霹靂一〇・神速。」

 MkⅣの戦い方からヒントを得た、徹底的に身体強化を施した上での超高加速。

 服が持たないので、服に結界を使用してからでないと使えないのが玉に瑕なんだけどねw

 そんな、超加速を使って一瞬で距離を詰め、居合一閃。一瞬で首を狩る。

 鯉口を、パチンと音をさせて閉じながら、鵺に背を向けて、一言。

「また詰まらぬ物を切ってしまった・・・」

 折角だし、判る人の居る所で一回言って見たかったのよ、この名台詞。

「え?もう終わったの?」

 鵺の尾を掴んで引きずりながらクリスが驚いたように口を開く。

「よしクリス、そいつコッチに投げろ。」

「わっかっ・・た!」

 渾身の力を込めて一体の鵺を私の方に投げ飛ばしたクリスは、しっかり一発腹に蹴りを入れた。

 当然私は、居合一閃。

 首だけを綺麗に切り落として、2匹目の鵺を狩った。

「オーブ!カレイラの手助けに行け!クリスはこっちいらっしゃい!」

「何よ。」

「何じゃねぇよ、お前自分に医療魔法掛けながら戦えよ、何で肋骨一本折れたままやってんのさ。」

「え? 折れてる?」

「アドレナリンで気が付いて無かったのか、もう少し冷静に戦わないと、クリスがやられたら皆やられるかも知れないぞ?

 お前しか回復役は居ないんだからな?」

「・・・そうよね、確かに、ごめんなさい・・・」

「まぁ戦えるようになったのもあって、キースの隣で一緒に戦えるのも嬉しかったんだろうけど、無茶はするな。」

「はい・・・」

「さ、治ったぞ、行って来い!」

「うん!」

 クリスを送り出した私は、こいつ等のスパイダーが今護って居る存在の所へ。

「ほぉぅ。やっぱ面白いもん飼ってんな、アイツ。」

 そこに居たのは、大型犬より少し大きいかなって位に成長した地龍。

「お前がヨル君ですね?

 うん、良い子良い子、強者を判ってるみたいね。」

 頭を撫でてやると、すり寄って来た。

 成長期だし燃費悪いんだろうね、SPがかなり減ってる。

「よし、そんな君に、これを飲ませてあげよう。」

 取り出したのはSPポーション。

 飲みやすいように、皿に入れて提供すると、勢い良く飲み干すと、キースの戦って居る個体の方へと飛ぶように走って行った。

 しかし、鵺の群れってどうなんだよ、何でここにだけこんなに集中してるんだ??

 後10体近く居るぞ?

 手っ取り早いので、ホーリーレイ連弾で片付けてやろうかな?

 とか思ってたら、ヨル君がブレス連射してあっと言う間に残り2体に減らしてるし、スゲーな、流石はドラゴン、しかも最上位種・・・

 最後の二体のうち一体を、オーブが蹴り上げて状態が上がった所に、カレイラが走り込んで来て、腹を斬り付けて倒し、もう一体をカイエンが盾で受け流したのをキースが左前足を切り落とし、バランスを崩した鵺の上に跳躍したマカンヌが、延髄付近に刀を突き立てて倒した。

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 倒した鵺は、ヨル君のご飯と化して居た・・・

「マカンヌ、義体の調子が悪そうだけど?」

「そうなのよォ~、思いっきり噛みつかれちゃって右腕のアクチュエーターが壊れたみたいで~・・・」

「まぁ、ほっといても修復ナノマシンで治るけど、すぐ直した方が良さそうだな、この辺の異様な魔物の多さは何なんだ?」

「ほんと、それなのよぉ~、途中で術札も使い切っちゃって、足りなかったのよねぇ~。」

 あんな威力のある範囲魔法が使える札を使い切ったって??

 結構な枚数作ってたよな?

「そんな大軍だったのか?」

「ん~、そうじゃ無くって、殆ど効かなくってぇ~。」

「効かない?って事は障壁張ってるって事か。」

 う~ん・・・そうなると、私以外にも魔法障壁を開発した奴が居てこの魔物にそのスキルを付与したって事に成るよね。

 すると一番可能性が高いのは、例の時々出て来る魔王・・・だよな。

 そして魔王は、多分だけど魔道具を作ってた錬金術師だった可能性・・・

 まぁ良いか、今考えてもキリが無い。

「エリー!助かった。」

 カイエン寄って来た。

「キース、カイエン、カレイラも久しぶり。」

「ああ、本気で助かったぜ、エリー。」

「キース、面白いもん飼ってんな、マジで。」

「へへ、どんどんデカくなってるんだよ、アイツ。」

「カレイラ、大丈夫か? 目の下にクマ出来てるぞ?」

「エリーさん、ホント助かりました。」

「それで、本体から聞いてるけど、変な依頼されて難儀してるらしいな?」

「そうなんだよ、雷の激しい夜に現れて家畜攫って行く怪鳥を見つけて倒してくれって、困ってるんだ。」

「じゃあ解決法を教えるよ、こいつを提出したら良い。」

 私が倒したワイバーンの死体を出す。

 本体から聞いてたから一体だけ解体しないようにストレージに入れておいたんだ。

「こいつはワイバーンか?」

「そだね、こいつなら、雷が激しい中も飛べるし、家畜攫って行く程の力もある。」

 これを提出したら問題解決だろ?ドヤ!

「おお、そうだな、これで依頼達成にしちまおうか、俺達も流石にこれ以上この地に留まるのは問題がある。」

「京都に行くんだろ?旅の途中で聞いたわ、本体に。」

「ん?本体って?」

「ああ、私はエリーの本体じゃ無くて、並列存在、全て共有出来るから本人その物では有るんだけど、本体はマリイの世話で引き籠ってるからね。

 私がこうやって旅して周ってるって訳。

 ちなみに私の事はエリーでも良いけど、MkⅢって呼んでね♡」

「そうか、エリーだったら色気のねぇ白衣羽織って白衣の下は今頃はジャージ姿な筈だな、確かに。」

「色気のねぇ白衣で悪かったな、今のローブタイプのコートは良いだろ?」

「ええ、とっても似合ってます。

 カッコイイですMkⅢさん。」

「ありがと、カレイラ、ちなみにカレイラのその疲労もMPの使い過ぎだな、これ飲んどきな?」

 MPポーションを取り出してカレイラに差し出す。

「それとキース、ヨル君の事なんだが。」

「ヨル君て・・・いつそんな呼び方するほど仲良く成ったんだ?いつの間にかお前の横でゴロゴロしてるしな?」

「おお、さっきな、ヨル君がスタミナ切れになってたから、SPポーション飲ませてやったんだ、急に元気になって参戦してたろ?」

「ああ、あの時か、お陰で助かった。」

「まだ成長期だから燃費悪いんだろうな、もしもの時にこいつ幾つか渡しとくから飲ませてやれ。」

 キースにSPポーション10本入りの詰め合わせにした箱を渡しておく。

「ああ、済まない、助かるよ。」

「ところで、鵺の死体も持って行くだろ?」

「ああ、そうだったな、討伐対象にも一応なってるからな、こいつの討伐証明部位は確か、この特徴的な尻尾だったな。」

 カイエンが立ち上がって討伐部位を集めに行った。

 さて、こいつらの武器も新調しないとダメだろうな、特にキースの高周波振動ソードはそろそろ限界の筈だ。

「キース、武器見せろ、そろそろ切れ味が悪くなって来た筈なんだが?」

「ああ、そうだな、助かるよ。」

 やはりね、高周波振動を繰り返せば当然劣化が早く進むわけだ。

 そうとう劣化してしまってるね。

「それでな、キース、実の所、そろそろお前の太刀筋なら、こいつ振っても行けるんじゃ無いかと思うんだけど、これは私用に短いけど、そこの木を斬って見ろ。」

「この細っこい武器でか?

 少し不安だな・・・」

 と、言いつつ何の問題も無く鯉口を切るキース。

 邑雅を、すらっと抜くと、家紋を眺めながら、つぶやく。

「すげぇな、これ、良く切れそうだ、でも扱いは難しいだろ、試し切りしても良いのか?」

「やって見な。」

 するとキースは、無意識に鞘に邑雅を戻すと、居合抜きの構えを取る。

 流石に武を究めた奴は、見ただけで最適な使い方を見極めるのが早いか。

「ふっ!」

 勢い良く息を吐きつつ、素早く刀を抜き、一歩前に出つつ木を斬り付ける。

 そしてくるっと踵を返して此方を向き、ひゅっとひと振りして鞘に納め、鯉口を合わせる。

 斜めに木がずり落ち、静かに倒れた。

「ひゅ~、やるねぇ~。」

「すげぇな、これ。」

「打ってやろうか?

 この間、師匠について習って来たぞ、刀の打ち方。」

「刀か、これを日本振って戦うのか、悪くねぇな。」

「よし、そうと決まれば、二振り、打ってやる。」

 それと、キースの電脳に、私の刀の流派、二天一流に二刀剣術をインストールしてやる。」

「エリーって剣術の師範だったの?」

「いや、むしろこの剣術は好きで私の電脳にインストールしてた物で、私自身が師範と言う訳では無いけど、好きで一番使う技だ。

 刀を私は未だ一本しか使って居ないけど、刀以外でも出来る技だから気に入ってる。

 この剣術の開祖は、その昔、削った櫓を使ってこの剣を習得したと聞いてる、どこまで本当かは知らんが。」

「そうか、じゃあ、実質俺はエリーの弟子に成る訳か。」

 と言って悪戯そうに笑うキース、こんな色男が弟子か、悪い気はしないがクリスと仲良くしろよな?

「じゃ、そろそろ移動するか。

 近くの街から依頼で此処まで来てるんだろ?」

「ああ、琵琶湖っつー巨大な湖の近くだ、温泉もあるからスパイダーに泊まらなくても良いんだぜ?」

「良いじゃないか、行こう行こう。」

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