第200話 宇都宮の英雄
宇都宮の英雄
‐MkⅣ—
うん、ちょっとやり過ぎたと思う・・・
MkⅢがイオンクラフトで空中浮遊を披露して出て来ちゃったのもこの熱狂的な称賛を手伝って居るとは思うんだけどさ・・・
もしかして、私を信仰する宗教とか立ち上がってねぇか??
どうしよう・・・
私はここで、今日は、未だ怪我人が多々存在するのでポーションでも売ろうかと思ってたんだけど、それ所じゃない状況に追い込まれている。
まさかさぁ、昨日のスタンピード騒動の後、さっさと帰った私も悪かったけど、まさかこんな扱いになってるなんて思いもよらなかったよ。
救世主扱いっつーか、完全にカリスマにされて祭り上げられてるよね・・・
やりにくいなぁ、もう。
売るつもりで持って来たポーションもさぁ、これじゃ無償で配るしかなさそうな雰囲気じゃね?
あぁくそう、損したなぁ~。
完全に天女様だの女神様だのと囃し立てられてるんですけど・・・
誰かこの状況から救い出して、お願い!
この可哀そうな美少女をさぁ・・・
うう~、タダで開放してくれそうに無いよねぇ~・・・
仕方無い、ポーション配ってやるか~・・・ハァ。
「怪我した人に飲ませて~! お薬配りますよ~!」
「「「「「「「「おおおおおお~~~~~~~~!!!!!!!」」」」」」」」」」
大歓声だ。
すると、中に、火の加具土命様と叫んでいるご夫婦が・・・
ああ、多分この人達がMkⅢの出会ったご夫婦だねぇ。
まさしくこの人達が確実に私に信仰を向けてる第一人者って所かぁ、メンドクセェ~。
仕方無い、瞬歩でそこらの屋根の上にでも避難して、顔を変えて出直すとするか。
よっ・・・っと。
さて、誰のアバター借りようかなぁ~・・・
よっし、ザインにしよう。
光学変装って奴ねw
うん、これでやっと普通に街を楽しめる。
歩いて居ると、何やら不穏な空気が漂って来たのでちょっと首を突っ込んでみる事にした。
「止めて下さい、このお薬はお父さんに飲ませるんです。」
「ケッ!死にぞこないなんかに飲ませるのは勿体ねぇや、もっと有意義に使ってやろうってんだから寄こしやがれ。」
どうもさっき私が配ったポーションを子供から横取りしようとする輩が居るらしい・・・
「まちなさい、これはこの子の、返して。」
何だかアバターに引っ張られた口調になってる気がするのだけど・・・多分気のせい、では無いよね(汗
「何だテメェ、関係ない奴ぁ引っ込んでろ!」
「弱い者虐め、ダメ、カコワルイオ」
うん、ほぼザインになってるねw
ちょっと面白くなってきた。
「おい!ふざけんなよねぇちゃん!」
何とっ!女の子って一発で認識されたァっ!
「嬉しい、女の子って一目で認識された、初めてかも。」
「わけわかんねー事言ってんなよ?あぁ?」
ナイフを突きつけようとして来たので、ウンディーネを召喚してナイフを取り上げる。
「エルフに鉄で出来た物突き付ける、それは、宣戦布告。
僕は、許さない。」
『ザイン、こいつ等ザインの敵? 貰っても良い?』
ウンディーネの悪い癖が始まったみたいなので、お任せしちゃおう。
「ん、あげる、遊んであげて。」
『まっかせて~。』
カツアゲ犯、と言うか盗賊だろうね、その3人組の顔面に目掛けてウォーターボールが飛んで行き、顔に張り付いて止まる。
「「「ぼがが、ぐががが!!!??」」」
「何言ってるか、判んない、謝るのなら、辞めさせてあげる。」
盗賊達は慌てて縦に首を振る。でも、謝罪を聞く事は出来ないので、あえて首を傾げてやった。
すると、リーダーと思わしき盗賊が、慌てて土下座をし、崇めるかのような動きをする。
すると残りの二人も急いで真似をし、土下座。
「ウンディーネ、死んじゃう前に辞めてあげて。」
『はいはーい。』
顔の前のウォーターボールが、霧散した。
「テメェ!やりやがったな!?」
一人懲りていないのが居たので、ウンディーネがもう一度・・・
「ぐばががが。」
「ちゃんと反省するまで、何度でもやるって。」
「す、すまねぇ、許してくれ、こいつは俺が言い聞かせるから。」
「ん、わかった、ウンディーネ。」
『もう終わり?根性無いわね~、あんた達。』
「これは、なんです?水の人間みてぇな・・・」
「ん、ウンディーネ、彼女は、水の上位精霊。」
「初めて見やした・・・姉さんと呼ばせて下せぇ!」
「やめて、貴方達を拘束します。」
プラトを召喚、プラトがプラーシャで拘束して、片が付いた。
番屋に突き出して、終了。
「あの、有難う御座います、お姉さんは、エルフさんですよね。」
「ん、エルフ、ザイデリュウス。」
「私は菊と言う名です。
お父さんに飲ませるお薬を守ってくれてありがとう。」
「待って、お父さんの怪我、僕に見せて。」
お菊ちゃんのお家迄ついて行く事にした。
多分ね、この子の切羽詰まった様子だとさ、ポーションじゃ治りきらない程の重症者だと思うんだよ。
「おとっつぁん! 今お薬貰って来たから、飲んで。」
「ああ、済まないね、お菊や。」
「ん、待って、この薬じゃ、治らない。」
思ってた通り、と言うか、想像の上を行く様な酷い怪我だった、良く生きてるよね、この人。
「どう言う事?エルフのお姉ちゃん。」
「この薬、ローポーション、怪我、傷を塞ぐだけ・・・
この人、欠損してる。」
「でも、でも・・・」
お菊ちゃんは目にいっぱい涙を溜めて、それでも泣かない様にこらえている。
「ちょっと待って。」
光学変装を解く。
「救世主・・・様?」
「そう、私、あんまりにも騒ぎが大きくなったので、変装してたの。
安心して、貴女のお父さんは私が治します。」
そう言って、急いで診察を掛ける。
すごいよ、良く生きててくれたよね。
肩関節から右手全部、左足、そして肝臓の付近が食われて無くなってる。
運よくポーションを手に入れて飲んだのだろう。
辛うじて虫の息ではあるが、まだ生きていた。
「お菊ちゃん、このお薬をお父さんに飲ませてね。」
手渡したのは、SPフルポーション
減った分も一時間の間は常にリジェネ状態でSPを回復させる優れもの。
このレベルの怪我では、再生する時に使用するSPも消費が大きいのでこれしか使えないと踏んで手渡した、高級品、と言うか、かなり貴重な品だ。
「飲ませました。」
「よし、じゃあ行くよ・・・」
頭の中で欠損部位の全ての再生を、闇魔法ナノマシンへ指示する為に試行しつつ、魔法回路に闇のナノマシンを取り込んで行く。
指示を受けたナノマシンから徐々に患部へと集まって行き、黒い霧のように見えるなのましんのフィールドが形成される。
「全知全能なる神々よ、我に治癒の力を与え給え、我はハイエルフ、エリー・ナカムラなり。
我が名の下に、お力をお貸し願い給う。
かの者の欠損を修復するが我が望み。
エリー・ナカムラの名の下に、癒したまえ!
蘇生の光、リザレクション。」
患部が急激な再生により、光り輝く。
闇のナノマシンのフィールドである所から溢れる光は、その輝きを益々強調されて神々しくさえあった。
お菊ちゃんは、その様子を息を呑みつつ、見入っている。
徐々に再生されて行くお菊ちゃんのお父さんの体。
SPを確認しつつ、速度を調節する。
すげぇな、術を使ったのは私だけどさ、この魔法、作ったの本体よね、私も本体も同一人物だから私がすごい訳でも有るんだけど、本当に本体を尊敬するわ、こんなの良く作ったわ、マジ卍。
SPの問題で中々速度が出せず、30分ほど掛かってしまった。
「ふう・・・終わったよ。
もうお父さんは大丈夫よ、お菊ちゃん。
「あ・・・ありがとうごぢゃいまぢだ、うえぇぇ・・・うえぇぇぇぇぇぇ~~。」
お父さんに絶望させない様にって、泣かない様にこらえて来たんだね、今は存分に泣くと良いよ、お菊ちゃん。
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