第193話 宇都宮(MkⅣ)
宇都宮(MkⅣ)
-エリーMkⅣ-
ツインテールにして区別を付けていた私、Mk4。
この髪型に似合いそうだな~って思って、革ジャンを自作。
その余った生地でパンツも自作。
皮レギンスに革ジャンと言う少しヤンチャそうな格好だけど、赤いツインテが映えてむっちゃカッコ良かったのでお気に入りだ。
折角こんなお気に入りのファッションが出来たのに、いつも家でうだうだしてるのは少々物足りないっつーか、家でこんなの着てたらアホじゃん?
って事で、今日もお出かけする事にした。
今までは近所の港街位しか行く事は無かったけど、たまには少し別の所に行こうと思う。
「本体~、一寸お買い物に行って来るね~、お土産期待しててよ~。」
私は、ハイエルフに成ってその上で並列存在の能力を確立してその能力で構成された本体の完全コピーと言うか、本人その物な訳だ、つーとどういう事かって言うとだ、ハイエルフである事で脳細胞の進化が特に著しい。
これまで電脳の記憶領域に収納して居た記憶も電脳無しで記憶出来てまだまだ余裕がある、ってか一割も記憶容量を使って居ない事が私の研究で分かった。
つまり、普通に電脳は必要ない。
魔法回路を作って居ないので自力で魔法が使えない事と、ナノマシンに命令する事も電脳が無いので出来ない事で、召喚も出来ない訳で、私は並列の中で唯一肉弾戦特化の戦闘しか出来ない。
ま、十分強いから良いんだけどな。
魔法に振らない分私の保有マナはゴッソリ湯水のように身体強化に振れるので、多分格闘戦したら並列中一番強い。
実際にね、今も、一寸開けた街に行きたいなと思って、一番近そうだった大きな街、宇都宮へと全力で走って見る事にしたんだけどね。
結構スピード出そうだから先ず身体硬化だけじゃ無くて、オーラが届く所まで伸ばせる結界を使ってお気に入りの革ジャンガードする事にして、目いっぱいの加速と脚力の強化をして走って行く事にしたんだけど、Mach10位出そうだったので、ジャンプに切り替えたんだけど、ひとっ飛びで宇都宮の街を見下ろしながら飛び越えちゃった。
うん、着地に失敗してたら多分痛かったろうね。
300km/h位だとどれ程走っても疲れない事もお陰で認識できた。戻るのにジャンプしたら同じような事に成りかねないしな。
で、やっと宇都宮に付いた時、朝ごはん食べて無かった事に気が付いた。
この位は朝飯前、とかって良く言うけど、本当に朝飯前だったとは・・・
んでね、つい失念してた事が二つ。
一つ目は、私の身分を証明する物が無くてすんなりと街に入れないと言う事実。
二つ目は、革ジャンなんて物がこの大陸に存在して居ないと言う事実、つまり私の格好は怪しい以外の何者でも無かった。
そうなのよ、つまりね、宇都宮の街の入り口で、止められて、軟禁状態、って感じで今ココ。
「お主!そこで停まれ!」
って言われてさぁ~。
関所が俄かに騒がしくなってさ、んで、あっと言う間に20人位のお侍さんに囲まれてさぁ。
仕方ねぇから一言ボケ倒しておいたけどね。
「え?何何?もしかして、私、モテ期来た?」
ってね、ノリの良い人は盛大にコケてくれたけど、そこはお堅い人が多かったみたいで大してウケなかったけどな。
で、困ったな~、って思ってる所なんだけどさぁ。
今、取り合えず取り調べ受けてる真っ最中な訳よ、あ、かつ丼は出てないわよ?
「お主は何者であるか?」
「私はエリー、賢者とか聖女って呼ばれてます、他所の大陸で。」
「賢者とは何だ?」
「うーん、何だと言われてもねぇ、世の中に革新や新たな文化を齎す程の知恵者って所かな?」
「その着ている服は何であるか? そのような着物は初めて見る。」
「これは革ジャンと言って、動物の皮を鞣して薄くした物をあしらって作った外套の一種です。」
「外套とな? 蓑の様には見えぬが?」
「もう、蓑と一緒にしないでよ、あんなただの雨避けと一緒にされたら迷惑です、裏地にウール使っててあったかいんだからね?
表はシーサーペントだから完全防水だし。」
そこに、もう一人役人が入って来た。
「おや?エリー殿では御座らぬか。」
ん?誰こいつ。 MkⅢ辺りの知り合いか?
「ん?あんただれ?」
「あんた誰は酷いでは御座らぬか、結城晋三郎道隆で御座るよ、拙者ここで働いて居ると申しておいたでは御座らぬか。」
ああ、そう言えば本体の客にそんな奴いたっけか。
確かいつまでも食い下がって畑仕事手伝って帰ったとか言ってたな。
良し、話し合わせておくか。
「お?あぁ~、はいはい、サブちゃんね、おっひさ~。」
「サブちゃんて、今度は北島何某とか言わないで下され?」
う、バレたか・・・
「てっきり祭でも歌ってくれるかと思ってたのに先にその突込みは反則じゃない?」
「はっはっは、相変わらずで御座るな、その人を食うような話口調。
お久しぶりに御座る。」
「で、さぁ、私は何でこんな所で軟禁されないといけない訳かな?」
「ああ、そうで御座ったな、関所で止められておいででしたな。
おい、この者は拙者の知人で御座る、身元は保証するので開放せよ。」
「はぁ、しかしこのような風体の出立、妖では?」
「大丈夫だ、今の会話で本人であると確信がある、解放して構わぬ。」
「はい、判りました、では。
もう良いぞ、あ、そうそう、通行料は貰うぞ。」
「散々変な疑い掛けたくせに、オマケしなさいよその位、ケチ!」
「よいよい、それは拙者が立て替えて置く、そのまま通して構わぬ。」
「ふぅん、あんた意外と話判るじゃ無いの、ありがとね。」
「エリー殿、多脚戦車の件、今一度のご再考を。」
「あーハイハイ、判ったわよ、考えとくね。」
ん?これって安請け合いしちゃダメな奴?
まぁこの位の受け答えなら何とでもなるだろうけど。
ふう、やっと街に入れた、長かったわ~。
しかし、本当に良かったわ、本体の知り合いがいて。
兎に角軟禁されてたからもうお腹ペコペコ、宇都宮なら、やっぱ餃子?
うん、良いねぇ、餃子だ餃子。
そしてウキウキしつつ餃子屋さん探してるんだけどね・・・・無い!
何で無いのよっ!
スッカリ餃子の口に成っちゃったじゃ無い!
こうなったら、なければ自分で作る!
ちょっと開けた空き地を見つけてストレージからキッチンセットを取り出す。
で、キャベツとニラと大蒜を取り出す。
そしてジャイアントボアとガルーダのお肉を取り出してミンサーで合い挽き肉にする。
小麦粉、強力粉と薄力粉両方を取り出して、これを同量でボウルに入れて、お塩をほんのちょっと加えて、熱湯を入れて、菜箸でだまになるまで混ぜる。
んで、それを今度は、手で、ぎゅっと押して一纏めにする。
で、少し冷ましてから、良く捏ねる。
その生地を棒状に伸ばして、適当な大きさに切る、今回私は、つい勢いで薄力粉も強力粉も200gっつ使っちゃったので、150枚位になると思うので150等分ね、クソ、こんなに粉使うんじゃ無かった。
でもさ、いっぱい作った方が美味しいんだもん、つい癖になってるんだよ、大昔の癖だよね。
仕方ねぇから食べたい人には食わしてやろうかな。
150等分に分けた生地を、一つ一つ、薄く丸く伸ばして、完成。
出来た生地同士が張り付いちゃわない様に片栗粉を打ち粉に使って重ねて行けば良い。
で、今度は野菜斬るよ。
キャベツとニラ、大蒜を細かく微塵切りにして、ボールに突っ込んで、一旦塩を振ってしばらく置いておく。
合い挽き肉にも塩を振っておく、ドリップが出たら捨てる。
こうするとお肉の臭みが消えるからちゃんとやっておきたい。
お野菜も、そこそこ水分が出たのを確認してぎゅっと絞って水を出し、ざるで越して、合い挽き肉と合わせる。
良く混ぜて餡を完成させたら、皮の上に適量づつ乗せては包んで行く。150個は流石にきつかったけど何とか完成。
と、ここまでやって周囲に目を向けて見たら、何だか人だかり・・・
美味しそうだったのかしら、未だ火も入れて無いのに。
大きめの鉄鍋に、餃子を30個乗せ、半分位まで餃子が付かる程度まで湯を注いで、火に掛ける。
蓋をして、水分がほぼ無くなる迄、蒸し煮にする。
打ち粉にしていた片栗粉が固まって餃子の羽になってくれるので、餃子をへらで少し浮かせて隙間から食用油を少々流し込んで、軽く焼きを入れる。
焦げ目が出来たら、鉄鍋ごとお皿の上に逆さにして、餃子を盛って完成。
お醤油に、お酢を少々、そんでもってラー油で味を調えたら付けて召し上がれ。
何なら塩ごま油や、素胡椒とかもお好みで、っと。
スゲェ勢いで集まったギャラリーの中で、試食する。
お箸で一個一個剥がしながら、酢醤油をチョコンと付けては口に放り込む。ハフハフしながら、少しづつかみ砕いては味わう。
皮もモッチモチだし、餡も旨ーい!
「うん!美味しい!さっすが私っ!」
と自画自賛で声を出すと、何だか歓声。
どうやらまだこの世界に餃子と言う食べ物は無かったらしい。
何だか定食屋の女将さんみたいな風体のおばちゃんやら、いかにも料理人って感じの風貌のおっちゃんらに囲まれて、試食させてくれと言われて食べさせると、今度はレシピを教えてくれとかもみくちゃになってしまった、私の朝ごはん返せ―!
で、数年後にこの時調理して居た場所に、餃子の女神像が建つ事に成るんだけどそれは又別の話、もしかして餃子の女神って私なの???解せぬ。
まぁ、オリジナルのような、女神自身が餃子になったようなものでは無いそうなので其処は悪い気はしないけども。
脱線したので戻しまーす。
結局ちょっとしか食べられなかった私は、しゃぁ無いので適当な定食屋に入って見た、ら・・・
「おう!さっきの姉ちゃんじゃねぇか!」
ああ、餃子の時に居たおっちゃんなのね。
「はぁ・・・」
「さっきはありがとうな、お陰で名物が出来そうだ。
ワシらで食っちまったお詫びと言っちゃなんだが、うちの一番人気の飯出してやるから食って行きな。」
おおー、もしかして只で食べさせてもらえるのかな?
出て来たのは、何と鰻丼だった!
おおー美味そう。
「頂きます。」
うん、一度蒸してふんわりとした柔らかい鰻の身が、お口の中で溶けるよう。
甘辛いタレも優しいお味でこのおっちゃんの腕が確かなのが伺える。
このおっちゃんが作る餃子かぁ、食べて見たいね~。
私が作るのはそりゃ最高のお味だけどさ、私以外の腕利きの料理人の作る物も美味しいのよ、こう言うの食べて益々美味しい物を知る事が出来る部分ってあるよね。
折角こんなおいしい鰻を食べさせて頂いたので、餃子だけでは無くて、小籠包と焼売の作り方も教えてあげた。
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