第188話 白神高地2

          白神高地2

 とうとう見つけた、イースト菌の同系統菌。

 でも見つかったのはそれだけでは無かった。

 酵母菌は数種、その他、コウジカビに納豆菌、お酢を作る菌のアセトバクタ―って奴、それと乳酸菌も数種類、同時に見つかった。

 アセトバクターに関しては大気中にいくらでも浮遊してるのでそれが引っかかったんだろう、今回こいつは要らないので排除。

 納豆菌も今回必要は無いけど、納豆が作れるのは少し嬉しいのでこれはストレージで保管する。

 コウジカビも、株が違うと少しづつ違う味が楽しめると聞くので、白神糀1号~6号と名前を付けて保管

 で、肝心の酵母なんだけど、14種見つかったんだけど、これを使ってパンを焼いて行く、そして、モチモチフワフワで美味しいパンになった物を残して後は要らない、と言いたい所なんだけど、複数種の酵母を使って美味しいパンになる可能性も否めないので色々やってみる。

 何だったら遺伝子レベルの話になるのだろうから、私の得意分野の一つでも有るので、美味しい株を生み出す事も吝かでは無いよね。

 強力粉を良く揉んで大量に発生させたグルテン質を酵母の餌として大量のトレハロースを作り出させる事で香りとうまみが生まれる訳です。

 強力粉の方もね、実の所、既に品種改良を終えていて、イーグル粉と呼ばれる強力粉を超えるグルテン量を誇る素晴らしい物が出来てたりするのだ。

 後は酵母だったんだよね~。

 これまでに、パネトーネマザーとか、乾燥させといて戻すだけで使えるドライイーストと呼ばれるタイプとかも見つけてたんだけど、白神酵母の美味しさは中々再現出来なかったのよね。

 早速、白神酵母1号から3号までを試作して焼いてみた。

 と言うか1号は、異常な程膨らみ過ぎてダメ、2号は真逆で、醗酵時間を何時間宛がっても膨らまなかったのでアウト。

 3号は辛うじて焼く段階まで来た。

 3号だけになってしまったので焼いている間に次の4~6号を試作。

 4号、5号は一時醗酵二次発酵共にいい具合に到達して、焼きの段階までたどり着いた。

 6号は何故か、膨らむどころか、形を維持出来ない程にゆるくなってしまう。

 これは使えない。

 焼き上がった3号を取り出して4号5号を3号と交代で窯に入れ、7号~9号を試作。

 しかし、この3種類はどれも焼きに辿り着けなかった。

 何故か生地が赤紫に変色する奴とか、ボロボロと崩れ落ちるようになる奴とか、ね。

 醗酵って色んな結果があって面白いよね。

 結果、14種中、ちゃんと焼きに進んだのは5種。

 9種はパン造りには少々向かない物だった。

 生地が形成出来ない程緩くなる物3種に関しては、酒造りとかバイオマス燃料作りに使えそうな気がするのでとりあえずは収納して置く事に。

 変色する物2種は、色が悪く成るだけで食べられるっぽいのでちょっと本体にお任せしてストレージに。

 さて、5種類のパンを実食です、と言うか途中でお腹いっぱいになっちゃうので玉藻ちゃんと5種とも半分個して食べて見る。

 先ずは3号。

 うん、美味しい、生地の甘さも出て居るし、モチモチ感も申し分ない、敢えて言うならもう少し柔らかく成ってくれると最高だ。

 4号、生地の甘みは今一つだけど柔らかさもフワフワ感も申し分無し、糖質を増やして捏ねた生地をちゃんと醗酵出来るとしたら、甘いパン造りに向く酵母と言う事に成りそうなので、これはこれで保留。

 5号は、少し硬めに焼ける。

 バタールやバゲットみたいな硬いパンを焼くのには適して居そう、香りが高くてその辺もフランスパン系を焼くのには向いて居る。

 これも保留だよね。

 3~5号は一応保留する事に成ってあと二つ。

 10号と13号がどうなるか。

 もう少しで焼けるこの二種類。

 あと2~3分で焼き上がろうかと言うこんな時に、警報が鳴り響いた。

 ここってそんな強い魔獣居たんかなぁ・・・

 見当たらんかった気がするんですが?

 と、思ってたんだけどさ、私ってもしかして、好かれてんのかなぁ・・・亜竜に・・・

 何でワイバーンやねんっ!

 こんなもんかなり遠くからでも飛んで来れるやんな!?

 水龍のダウングレード亜竜のサーペントと違って、こいつは飛竜のダウングレードみたいな亜竜だからさ、かなりの長距離飛んで来られる訳なのよ、しかも飛行速度もかなりの速度。

 クリムゾンスパイダーは一応迎撃モードに入ってて主砲撃ってるんだけど当たらない、と言うか当り様も無いので全くと言って良い程にけん制にすらなって居ないようす。

 遊ばれてるよな。

「恵里衣様、逃げましょう!」

 玉藻ちゃんの提案は却下だ、何故ならあんな速度で飛ぶ奴に背を向けたらそれこそ良い鴨だ。

「却下、私が落とす。」

「恵里衣様でも厳しいんじゃ無いですか?」

「大丈夫だ、それより、もうすぐパンが焼き上がるから取り出してそのままスパイダーの食材ストレージに入れて置いて。」

 そう言い残して、イオンクラフトで飛び上がる、最近飛んでばっかりだな、私。

 くそう、早すぎて掴み処が無い。

 即興で魔法を作る。

 光魔法でロックオンして風魔法で誘導する誘導弾的な、当たると水魔法で高圧水刃で切り刻む、基本推進力は炎魔法でのロケット推進。

 その全てを凝縮しても耐えうる外郭を緑魔法と闇魔法でクリエイトしたオリハルコンを使う。

 マジックミサイル。

 こんな多重複合魔法、私以外の誰が作れるだろうか、まぁ、無理と思うけど。

 これを纏めて10発同時発射してやった。

 無詠唱、魔法名だけ。

「マジックミサイル10連。」

 さっき私が飛びあがった時に遅いとばかりにほくそ笑んだような表情してたのをそっくりそのまま返してやるよ。

 10発のミサイルに追いかけられて必死で避けまくって居るのを眺めながらにらにらしてやった。

 当たったらイテェぞ、頑張れ?

 そしたら、私に向かって突っ込んで来たので、瞬間的に空間転移で避けてやった。

 そしてまたにらにらしながら見物。

 徐々に追い詰められて息も上がりだしたワイバーンを眺めながら、食べ掛けていた5号酵母のパンを取り出して余裕を見せて食べる。

 ワイバーンは知能がかなり高いようなので、これはかなり悔しかろう。

 オリハルコン箔の外郭を持つマジックミサイルは、風魔法で強引に誘導させて居るだけあって、普通の誘導弾のような軌道は描かず、インメルマンターンやトカチェフコブラのような急激な向き変更を可能として居るので、どんな避け方をしようともいつまでも追い続ける。

 絶対にワイバーンに勝ちは無いのだ。

 そして遂に、その時はやって来た。

 一発のマジックミサイルがワイバーンの尻尾を捕らえた。

 オリハルコン箔の外郭が弾け、ワイバーンに刺さり、尻尾は発動したウォーターカッターで切り落とされる。

 ワイバーンは、尻尾で舵取りをして居るので、当然ながら次弾を避ける事は出来ない。

 2発目を直撃した瞬間に、3発目以降のマジックミサイルを中和し、オリハルコン箔を収納へ。

 10発全部なんか当てたら粉々になっちゃってお肉試食出来ないしな。

 結局、私を舐めたばっかりに、ワイバーンはブレスの一発も吐くタイミングを与えられずに一方的に倒されたのだった。

 さぁ、おかずと言うか、具が手に入ったのでサンドイッチでも作るかな?

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