第157話 守護天女?
守護天女?
「超電磁砲用意。」
『イエス、マム。』
「目標、イセエビ、頭部・・・撃て!」
『発射。』
膨大な電力を使った雷のような轟音が響く。
直径3㎝の鉄球がマッハ28で撃ち出される。
直撃。
イセエビの頭部には確かに風穴があいた・・・はずだったのだが。
うん、穴こそ開いたけど利いてネェな。
これだから下等生物ってのは厄介なんだ。
中々死なねえしな。
んじゃ加熱処理と行くか、身の方は刺身でも食いたいから、頭部のみに炎ダメージを・・・だと、やっぱ爆縮しかねぇか。
すると、やはり召喚か。
そんじゃぁ、折角今の体型なんだから、エリーフラッシュっと・・・ちょっと恥ずかしいけどな。
前のペッタンコよかは今の方が良いだろ?w
「クリムゾンスパイダー、奴の動きを止めなさい。」
『イエス、マム。』
「エアークラフト。」
風魔法で飛び上がると、炎の最上位精霊、イファーリアを召喚する。
「火よ集わん、我の元へ、集いて炎と化せ。我は其方の友 エリー・ナカムラ、顕現し賜え、其方の名はイファーリア!」
『お、ひっさしぶりじゃネェか~、エリー!
今日はあのデッケー海老をやりゃあ良いんだな?任せろ、一撃だ。』
「頼んだよ、爆縮で頭だけ吹き飛ばしてね、身は生でも食べれるからあんまり過熱したく無いのよ。」
『ちぇ、注文が多いぜ?まぁ良いけどよ、俺はぶっ飛ばせれば何でも良いけどな。』
「こらー!何やってんのトライ! まさかアンタがこれ釣りあげたとか言わないでよね~!」
トライに声を掛けるも、トライはすっ呆ける。
『あ、エリー様、助けてぇ~、ひ~ん。』
「クリムゾンスパイダーで抑えるからとっととよけなさーい。」
『ありがとうございますぅ~。』
全く、何故かおっとり系な変な性格に成っちゃったもんだよ、こいつだきゃあ・・・
まぁそれは良いとして・・・
「イファーリア、目標、イセエビの頭部、ヴァル・ハラで一気に決めちゃって!」
『おう!まっかせろ~!! ヴァル・ハラっ!」
イセエビの頭部を結界が覆い、内側に向かってヘルフレアが炸裂する。
イセエビの体が一瞬ピーンとまっすぐに伸び、力なく崩れ落ちるかの如く浜に横たわり、ぴくぴくと痙攣を始めた。
頭部はこんがり良く焼けて、美味しそうな香りが漂って居る。
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〈リョーマ〉
巨大イセエビの出現、上陸、それを確認し、村の腕に覚えの有る者達が対処に赴いたが、5名全員が重傷で担ぎ込まれた。
エリーなら彼らを治せるだろう、それに、イセエビへの対処も可能だと思う。
俺は、取り急ぎエリーの建てた家へと馬を走らせた。
「すまん、エリー殿居るかい?」
すると奥から、妙齢の女性と思しき影が赤子を抱いて出て来る。
「あらどうしたの?リョーマさん。」
何・・・だと?
この美しい女性がエリーだって?未だ子供だった筈では??
いつの間にこんなに立派な・・・あ、いやいや。
ついつい、これまでのエリーの姿を思うと、この急激な成長は信じがたい、特に胸が・・・
「エリー・・・だよな?」
「この家に私以外の誰が居ると?
あ、いや、生きては居ないのが3名程常駐はしてるけどね?
で、何の用?」
この意味の分からない明言、間違い無くエリーだ。
「出たんだ、村の浜に。」
「出たって何がよ?」
「イセエビだよ! 今年のは例年よりデカくて難儀してるんだ、助けて欲しい。」
「イセエビか~、今は良いかな~って思ってたんだけど?」
「いや、そういう話では無くてな、既に奴に挑んで5人が大怪我してるんだ、お前の力を借りたい、頼む。」
こう言う話は即答で請け負ってくれると思って居たのだが、エリーはしばし考え込むような態度を取った、この赤ん坊のせいだろうか・・・確かこの赤ん坊は、あのエルフの少女だったのがこのような姿に成ったと聞いて居た気がする。
エルフとは何とも奇妙な生態を持って居るのだろうか。
考えても解らぬ物は、このエリーから学んだ結果としてあまり考えない事にして居るから良しとしよう。
赤ん坊が一言「あう~!」
と発した途端に、エリーは、手を貸してくれる気に成ったらしい、と言うか、この子を優先するようになるとは、すっかり母に成りきって居るのだろうとは予想は付くが。
「そうか、マリイ、判ったよ、じゃあ、ママちょっと行って来るからね。
アイン、ツヴァイ! ちょっと来なさい!」
屋敷の奥からもう一人の姿が現れる。
『お呼びですか?マム。』
「ツヴァイ、マリイをお願い、ちょっと出かけて来るわ。」
その者とエリーのやり取りは、主人と使用人と言った感じだ。
「エリー、この子は何者?」
「ああ、この子はAIメイドのツヴァイ、私とマリイの世話をして貰う為に私が作ったお人形さん。」
いつもながらに意味が解らない・・・
「何だそれは、エリー殿、君は何なのだ?神様だったりしないよな?」
「ああ、いやぁ、そのね、実はハイエルフに成っちゃった訳なのよ、言って無かったけど。
そしたら思いの外デタラメ性能に成っちゃいまして、その・・・ねぇ。」
何だかはぐらかされた感が強いが、これ以上追及してもこちらの混乱がさらに激しく成るだけと思い、諦める事にした。
そこへもう一人、いつの間にか俺の背後から現れた。
ちょっと驚いたが、これは先程のツヴァイとか言う娘とそっくりで、此方の方が少しだけ歳も上のように見えたが、これも人形と言う事らしい・・・
毎度驚かされるエリーであるが、彼女自身驚かせる気でやって居る訳では無いのだから質が悪い。
格差が激し過ぎて起こって居るジレンマなのだろうと諦めるしか無いのだ。
ともかく、例の蜘蛛型の魔道具とやらに乗り込んで移動を開始するも、何やら目標を目視したエリーが指示を出して撃ち込んだ。すごい音がしたが、イセエビ自体はそんなにダメージを受けたようには見えなかった。
それを確認したエリーは、そのまま翼が有る訳でも無いと言うのに、文字通りと言うか、普通に空を飛んで行ってしまった、俺はどうすればいいのだ?
遠目に見ていると、エリーは、恐らく炎の属性と思しき精霊らしきものを召喚し、イセエビと対峙をし始めた。
俺の乗ったままの蜘蛛型魔道具もイセエビに向かって突っ込んで行く、ハッキリ言って怖い。
小さな体でイセエビと戦っている、先程の人形と言われて居た二名と同じような服装の娘が居るでは無いか。
あの体であの巨体の振り下ろす腕を受け止めている、凄まじい光景だ。
エリーの指示を受けたらしいその娘が、魔道具に飛び込んで来た。
『お客様、その辺の椅子へお座り下さい、只今よりクリムゾンスパイダーを変形し、エビの動きを停止させるべく白兵戦闘モードへ移行します。』
「お・・・おう。」
急いで近くにあった椅子に座ると、その娘が魔道具へ指示を出した。
『クリムゾンスパイダー、白兵戦闘モード変形。』
『了解、直ちに変形します。』
俺の座って居る椅子から、帯のようなものが伸びて、俺を包むように固定すると、とたんに俺の座る椅子がさかさまになる、と言うより、このブリッジとか言う物自体が逆さまになった。
そして、各椅子が腕のような物で動き出し、現在の上下関係に適切な向きに移動する。
「お、おい、これは一体どうなって居るんだ?」
『お客様にご説明致します。
この、クリムゾンスパイダーは、白兵戦モードに移行、人型機械兵器へと変貌いたしました。
これによって、敵兵、魔物等に対し、格闘戦が可能となります。』
現在どのような姿になって居るのだろうと考えさせられるような事を言われたので、気にして居ると、更にこう付け加えられた。
『ナノマシンネットワークにてドローン撮影が可能です、客観的視点でのバトルをご覧になりますか?』
「あ、ああ、お願いしよう。」
『畏まりました、客観視点での映像をモニターに映します。』
映し出された映像は、俄かには信じがたいものだった。
確かに元の蜘蛛型の時の面影は有るものの、別物と言っても過言では無いその姿は、完全に人型として成立しており、それが二足で立ち、圧倒的に巨大なイセエビを押さえつけて居たのだった。
村が気に成った俺は、村の様子を見れるかと聞くと、見せる事は可能だと言うのでお願いする事にした。
まぁ、この魔道具があんな巨大な伊勢海老と対峙している事自体が信じられず、その映像を見るのが怖かった事もあって、村の様子を見たかったのが本音だが。
「声も聞けるのか?」
『可能です、音声、出しますか?』
「ああ、お願いしたい。」
村の人々は、あの5名以外は全員無事のようだ。
村人は、物見櫓に集まっており、口々にエリーの事を、天女様だとか、守護天女様が降臨されたなどと口々に賞賛して居る、しかもこの魔道具を巨人様だ、大魔神様だ、などと口にしていた。
あいかわらず、エリーはやりすぎなんだろうな、と思う・・・
とうとう、エリーの戦う姿を拝み倒す輩迄出て来た。
成程、こうやってあの娘は人心掌握をして来たのだろうな、ある意味やりすぎているお陰でその方向性が崇拝とかそう言った極端な方向へ行ってしまって居るだけで・・・
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「さぁ、村の皆、美味しそうだよ、出ておいで、もう大丈夫。」
村人が、その一言を待ってましたと言わんばかりに一気に雪崩れ込んで来た。
そして私は、何故か胴上げされて居る・・・あの、さぁ・・・海老食べたかっただけなんだけど?
「守護天女様だ!」
「天女様!」
「一生崇拝します!」
「神よ!」
おいおい・・・
その後、怪我をしたと言う5名を見て、治療魔法で治してあげたら益々信仰対象にされてしまった・・・何故だ。
その後、私の家の玄関前に、毎朝魚や野菜、米などがお供えされるようになってしまった・・・やりすぎた。
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