第151話 島国

          島国

 さぁ、間もなく島国の湾内に入る。

 カイエン一家とキース、クリスはそのまま冒険をすると言うので、各自のクリムゾンスパイダーはそのまま権限譲渡して置いた。

 但し、リョーマさんの商隊を降ろした後で無いと面倒なので、一時的にレンタルして貰って居る事になって居るけど。

 そしてカーマインファンレイは、カイエンの船とするべく、カイエンのカラーに変更。

 意外な事にカイエンのパーソナルカラーとして居る色は、銅色、カッパーだったので、これからは名前もカッパーファンレイになる。

 ん?船あげちゃって私はどうするかって?

 実の所、私はハイエルフに進化した事で、更なる英知を手に入れた、と言う良い方は少しおかしいかな?

 って言うか、並列存在と言うトンデモスキルを手に入れたので、試して見たらまたこれが出鱈目だったのよ。

 私の分身なんだけどどっちも偽物じゃ無いって言ったら解るかな・・・むしろどっちも本物になってしまうと言う事。

 そして、その能力は、同等にも出来れば、極端に弱くも出来る。

 そこで、私をお船の管理者としてカイエン達と同行させる為の、知識だけ同等で戦闘力皆無と言う、もしもの時のサポート役を船に置いて行く事にしたんだけど、これがこの並列存在って、驚くなかれ1体だけで無く、今の私の状態で4人程も作る事が出来た。

 つまりどう言う事に成ったかっつーと、1人はカイエン達のサポートだからそこは置いといて、残り3人が私と共にいられるわけ。

 そして、私と同じIQの助手が3人も増えたようなもんだからさ、色々と知恵が絞れて遂にウソみたいな創造が出来ちゃった訳なのさ。

 私はてっきり、アダマンタイトも在るもんだと思って居たんだけど、この世界にもそれだけは存在して無かった訳。

 で、アダマンタイトって言うのはどういう金属なのかっつー検証を一人でしててもまま成らなかったので並列存在フル活用で意見を出しまくったのよ。

 そして結論が出た。

 アダマンタイトとは、”時間の止まった”物質である。

 つまり例えば、私がこの世界で作った植物紙、あのただの紙っ切れを時間停止するとしよう。その時間の止まったA4の紙きれを持ち上げるとどうなる?

 そう、普通はフニャッと成るもんだけど、一枚の極薄の板となって居るから、そのままの状態で持ち上がって来る。そして、極薄な板とはどんなものかと言えば、当然のように刃の様に使う事が出来る。

 つまり、ただの紙切れが危険な刃物と化す訳だ。

 しかもその刃は時間が停まって居るので、切れなくなる事も無いときている。

 もしこれを、地面に向かって思いっきりぶん投げると、何処までも刺さって行くのだろうね。

 この間シーサーペントで活躍した包丁のように、落としただけで確実に刺さるだろう。そのまま貫通しそうだけどな。

 では逆に、あのマタギ包丁の鞘を時間の止まった物質で作って見よう、どうなる?

 そうだ、時間が停まって居るから、あの時アッサリ使い物に成らなくなった鞘の二の前には成らない、切れないのだ。

 じゃあってんで、軽くて頑丈なこの世界の木で船を作る、その船の外側の材質を全て時間の止まった物質、アダマンタイトに作り替える。厚み3㎜程度のまるで曲げわっぱのような薄い木の板が、ミサイルすら受け付けない頑丈な船体となる。

 これに、反重力装置つけて浮遊能力を付与して、プロペラで飛び回る物を作る、そうです、飛空艇を遂に作る計画。

 あ、それと、も一つ。

 ようやく例の魔人から手に入れたコアの解析が完了したので、私の並列存在の一人を、そのコアを利用して生み出したホムンクルスにして見た。

 並列存在って、肉体も再現出来るけど、同じ姿になる。

 でも、ホムンクルスで別人の姿を作ってやって、それを並列存在とすると言う芸当も出来たので、一体作って見たのだ。

 と言うか、それで作った戦闘力皆無の私を船の管理者としてカイエン達に同行させるんだけどね。

 そんで、同行させるホムンクルス並列存在の姿はっつーと、ニライカナイ二世号の艦長、ルーデリヒ・フォン・バルデス君、私の子孫君の姿を模してみた。

 これで、別人なんだけど実は私っつーのが出来上がる。

 一応心配だからさ、アイツら。

 ちゃんと見守ってあげたいのよ、この気持ちわかるかなぁ・・・

 やっぱ私ってお節介だと自分でも思うわ、マジで。

 当然のように医療魔法や義体技術も持っている並列存在なので、義体メンテも出来れば怪我や病気のケアも可能と言う訳。

 お料理もこなす優れものですよ。

 まぁ料理はオートクッカーでも出来ちゃうけど、そこはやはり味が違うっしょ、味が。

 それに、私のと繋がって居ないストレージも作る事が出来たのでダンジョンに潜ったりする時のサポーターとしての同行も可能だ。

 こいつを一緒に行かせる事にした私は、安心してアイツらと別行動が出来ると言う訳。

 とか技術的説明している間にどうやら船は湾内に入ったようだ。

 停泊出来る規模の港は無いので、ある程度まで陸に近付いてからホバーモードのクリムゾンスパイダーで上陸する事に成る。

 で、だな・・・この島なんだが、日本列島のようなものを想像して居たんだけど、その私の認識を悉く裏切ってくれた。

 これはエリアが大幅に広がったナノマシンデータリンクで発覚した訳なんだけどさぁ・・・

 驚くなかれ、その島は、小大陸と言っても良い規模だった。

 その姿は、多分こんなんだったんじゃ無かったのかなと予想で描かれていたアトランティス大陸の形ソックリだったのだ。

 ここは、アトランティス? ねぇ、アトランティスなんじゃねぇの? お願いだからアトランティスだと言って!!

 人類の英知の宝庫、アトランティスだったりすると嬉しいんですけど。

 上陸を果たした私達に、リョーマさんが改まって挨拶をした。

「えー、ついに我が国へ上陸した皆さんに、改めてこっちの言葉でご挨拶させて頂きたい。」

 そう言ったリョーマさんの次に発した言葉に、私は愕然とした。

「ようこそ、島の国へ。」

 日本語だった・・・そして、アトランティスとは、島国と言う意味の名だと言う事を私は、長年の研究で導き出していた。

 アトランティスが元地球にあったのか、もしくは元々こっちの人達が日本へ転移したのか、あ、いや、この大陸が元々地球にあったのだろう、そう考えるのが一番合理的だった、日本人はこの大陸の人間だった可能性が高いのだ、沖縄弁にも、島人≪≪しまんちゅ≫≫と言う呼び名が残って居たり。

 あれだけの国があのような小さな島国で構成されて居た事自体が謎でもあった。

 ちょっとだけ、震えが来る思いだった。

 そうだよな、可笑しいと思ったんだよ、いくら私が祝詞を唱えたからって、急に伊弉諾尊が手を廻して来るなんて事は無いんじゃねぇかと思ったんだ。

 ここは、伊弉諾尊と伊弉冉尊が、槍で海をかき混ぜて作った大陸だったんだ。

 海をかき混ぜて作った筈なのに細長い形になって居る日本列島っておかしな存在だと思ってたんだよ。

 こう言う風に円形に近い形になって居ないといけない筈だもんな。

 長年の謎が解明した、私の英知を持ってしてもこれ迄解明出来なかった唯一の謎と言っても良い案件が方付いた思いだった。

 そうなんだよね、なんか引っかかってたんだ、アトランティスこそが日本の神が作り給うた陸地で無ければいけないんだ。

 そして、その、地球から姿を消した大陸は、ここにある。

 何かが起こって、太古の昔にこの大陸がこちらの世界へと引き込まれて、アトランティスの伝承と、神道が地球に残される事と成った、そしてこの地こそ、神道の本当の地、高天原に当たる物でもある可能性が出て来た。

 試しに、私も日本語で答えて見る事にした。

「お邪魔致します。」

 リョーマさんは目を倍くらいに見開いて驚いた。

「何故、この地の言葉を・・・」

「私は、この地とは別の世界から来たんです、そこには、神道と言う宗教が有って、伊弉諾尊と言う神と伊弉冉尊と言う神が、婚姻を結び、槍で海をかき混ぜて陸地が出来たとされて居るんですよ。」

「同じです、それがこの島です。」

「では、高天原と言うのは、この地の事ですか?」

「あ、それは違います、この島の北側に、遠く離れた上空に島が浮いて居ると言われて居ます。

 そこを高天原と。」

 成程ね、ラピュタの伝承もここにあった訳だ、浮遊大陸か、なんか納得。

 まさかと思うけど、もしかして、輝夜姫は?

 思いついた事は聞いて見るに限る。

「輝夜姫と言うのはご存じで?」

「ええ、高天原より遣わされた天女です。」

 やっぱりかぁ~!

 で、地球には浮遊大陸なんざねぇから月と言う事に成ったんだな?

 何だか色々と腑に落ちたぞ?

「ですが、天女は帝の血族に恐れ多くも言い寄られた為に、怒って帰られて仕舞われたんです。」

 納得だった。

 多分、地上を何とかしようと使わされたお忙しい身だった輝夜姫、もとい、輝夜比瑪神は、恐らくは月詠尊、男神であったのに、あまりの美しさに女性と誤解され、しかも何らかのお仕事をしに降りて来られた筈なのにそんな訳の判らん求婚などにその仕事を妨害され腹を立てられてお帰りに成られたと言う事ではなかろうか。

 しかも、月詠尊、天照大神、素戔嗚尊の三大神は、高位存在であるので性別は本来、無い。

 但しどちらかの姿で居る事がその方々の好みと言うか、気分と言うか、そんな物で変化させられるのだろうとは思う。

 更にその親神たる伊弉諾尊、三大神よりも上位の存在である一柱を私は祝詞でお呼びし、力を借りたのだ、こっちの世界に存在して居るとは知らずに。

 あの孤児院の子供達って、私の権能の他にも色々加護賜っちゃってそうだな・・・

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