第129話 港町の聖女1

          港町の聖女1

 昨日討伐した、ユニークネームドの海ガルーダ、トリコの巣に、調査に来ている。

 ポルコさんが当然のように引率してくれて居た為に思いの外すんなりとたどり着いて居た。

 調査隊に加わったメンツは、私以外は、カレイラちゃん、猫、カイエンとマカンヌ。

 今回、タイタンズのメンツは、ちょっと興味のある依頼をこの港街のギルドで見つけたとかで、そっちに行って居る。

 リョーマさん達商隊は、今日は市場で出店許可が下りたと言うので商売の日だ。

「エリー、多分これがトリコの巣なんじゃ無いか? 何だかやたらデカいのがあるぞ。」

 カイエンが見つけたらしい。

「どれどれ、ああ、このサイズ感なら間違い無いだろう。

 っつーかデカすぎるだろ!

 遠巻きに見ないと素通りする奴だろ、これ。

 これ程大きな巣はあのネームドの物以外に考えられない、ここにはズゥは居ないしな。」

 それは、貝殻や木の枝などで編み込むように作られた、半径15mもあろうかと言う巨大な鳥の巣だった。

 そしてその巣の中心部には、卵・・・の殻が大量に転がって居た。

「これはどう言う・・・」

「ん~・・・仮説だが、あの巨体を維持する為にはあの干潟で採る貝だけでは難しかったんじゃ無いか?

 その証拠に、貝を採りに着ていたトリコに対して危害を加えようとした干潟の所有者だった漁師はその場でモリモリいかれてしまったと聞いて居る。

 自分で産んだ卵であろうと自分の肉体の維持には必要不可欠な蛋白源であったと考えるのが自然な流れだろうな、トリコはトリコで不幸だったとしか思えんな、こうなって来ると。」

「成程、エリー殿の言い分は正しいかも知れない、トリコも子を持つ親になって居った可能性があったのだな。」

「ああ、だが、デカくなり過ぎた体を維持する為に自らの卵を食って居たんだろう、こうなる前に駆除してやるべきだったかも知れない。」

「我々の考えで駆逐するのは簡単だ、でも、それはエゴだと言う考え方もある、でも今回はつくづく分かった、魔物化した海鳥は、駆逐される事を望んでワザと我々の街の干潟を襲って居たのかも知れない。」

「ああ、だけどもそう簡単に死ねるわけでは無いよな、自然な流れで闘争本能が牙を剝いてしまい、当然戦いになる。

 そうなれば当然強い方が勝つのが摂理だ。

 M3で旋回して居たあの機体に追いつき、掴んで叩き落とすなんて強い奴に人が叶う訳は無いもんな。」

「エリー殿、遠回しに自分で自分が人外と言っちゃった気がするんだが?」

「それは気のせいだ、倒したのはあくまでも私ではなく雷の最上位精霊だ。」

「そう言う事にしとくよ。」

「おい、エリー!ポルコ殿! 有ったぞ、食われた人の物と思われる人骨だ!」

 カイエンが大声で呼ぶので、早速そちらへ向かう事にした。

 すると・・・・

「う、く、臭いな・・・まさかとは思うが、これって・・・。」

「ああ、そのまさかだ。」

「お前なぁ、全身義体で嗅覚をカット出来るのはお前ら夫婦だけなんだからな?

 オエッてなったぞオエッて!」

「ああ、そうだった、すまんすまん。」

「だが、このままにしとく訳にも行かないな、こいつで一気に有機肥料に変えてしまおう。」

 そう言って、私は作り置きの有機肥料を作るためのEM菌型ナノマシンを取り出した。

 通常のEM菌だと2~3カ月は少なくとも掛かる分解作業をわずか数分で完了するように作ってある。

 これで有機肥料と成れば、匂いも無く、固形化して乾燥フレーク状態になるので、扱いも楽になる。

 その上、鶏糞(今回の場合怪鳥糞?)を直に撒くよりも植物の為にも有益なのだ、まして、貝を食べている鳥であるとなると、自ずとカルシウムも豊富に含んで居る筈なので、肥料としては恐らく最上級に成るのでは無いだろうか。

 野菜として食べられている植物の大半は、弱アルカリから中性の土壌で良く育つが、成長過程で出す廃棄物で土壌を酸性に変えて行ってしまう。

 そうなると成長も悪くなり、酸性土壌で良く育つ雑草達の良い餌食になってしまう、そこでよく石灰等を撒いて居る訳なのだが、この肥料だと、カルシウムを多く含む為にその石灰を撒く作業が要らない訳だ。

 と言う訳で、ナノマシンを放って有機肥料を完成させる。

「これでもう匂わないな、そしたら良い肥料に成るから回収だ。」

 ストレージに回収すると、そこには被害者の人骨が残される。

「さぁ、この骨を回収してご遺族に届ければ調査終了だ。」

 こうしてトリコの巣を後にした我々は、そのまま被害者遺族の元へと足を運んだ。

「夫の遺骨をお届け下さってありがとうございました。」

「宜しければ、この場で私がご主人の魂を天へお返しする為の御祈祷をさせて頂いても宜しいでしょうか?」

 そう、今私は、聖女の格好をしている。

「お願いしたいのですが、お布施をお渡し出来る程お金が有りません。」

「いえ、そのような物は求めておりませんよ、願わくば、主への信仰心を頂ければ十分です。」

 安心したようで、二つ返事でお願いされた私は、その場で考えた台詞で御祈祷を済ませてその場を後にした。

 私が何故こんな格好をして居たのかって、当然今から教会へ行くつもりだからだ。

 ここでも御多分に漏れず、教会は孤児院を兼ねて居るのでその為にもぜひ訪問しようと聖女に扮装して居るのだ。

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「失礼いたします、神父様はおいででしょうか?

 私は各地を旅して周り布教をして居る者です。」

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