第60話 私の本気
私の本気
「さてっと、こないだのアイツは私がからかったら逆上して前後不覚になってたから簡単に倒せたけど、あんたは大分冷静なタイプみたいね。
ならば私も本気で行かないとダメそうだね。」
「ほぅ、バドーを倒した時は本気では無かったと?」
「まぁね、楽しかったよ?
私のおちょくりにすぐに乗って逆上してくれるんだもん、新喜劇のネタも出来て大満足だよ。」
「後半のその、シンキゲキ?とか言うのは良く判らんが、納得だな、奴は直ぐに感情をあらわにする、敗因はそれか。」
「別にあんなおちょくらなくても勝てたけどね、全力で遊んでみたくなっただけなのよ。
面白い性格してたからね。」
「ふん、良く初見でそれを見破ったものだな、何故奴の性格が判った?」
「判らない訳無いでしょう?
人の寝て居る所に突然現れて存在感丸出しで私をおびき寄せようだなんて馬鹿な真似普通はしない、コッソリやって来て暗殺が普通でしょう? せっかく寝てるんだから。
しかもそれほどまで気配ダダ洩れさせといて やはり気が付いたか ってバカも休み休み言えっつーの。
そんな馬鹿丸出しな奴が賢い訳無いじゃん?」
「はっはっはっは、奴らしい、自滅って奴か、それなら仕方がない、そもそもあんな年老いた勇者に構わないでも良いとあれ程言ったのに一人で突っ込んで行ったのだ、自業自得だな。
だが貴様は私が殺すと決めたのでな、覚悟して貰おう。」
「残念だけど、殺されてやる訳にはいかないんだ、私は何百年だろうと何千年だろうと生きて、神界って奴に生きたまま行く術を見つけて、あの阿保な自称神をぶん殴ってやるまで死ぬ気は無いんだよね~。」
「成程、お前は神の使途だったのか、ではバドーがアッサリやられたのも納得だな、しかしその妙な理由だけで面白い事を言う、何千年だと?
人がそんなに生きられる訳が無かろう。
もっとも貴様はここで、寿命を全うする事無く死ぬがな。」
「ふぅん、言うね、でも私はあのおバカさんみたいに逆上したりしないから安心して掛かって来な。」
「そうさな、おしゃべりはここ迄だ! だが気持ち悪いので名乗らせて貰うぞ!
私の名はゴルデバルドだ!」
舌を噛みそうな名前の魔族、ゴルデバルドが急加速をして襲い掛かる。
しかしエリーは既にその位置に居なかった。
「何!?」
「遅いよ、こっちこっち。」
「中々の速度だな、やるでは無いか人間。」
「ふん、言ってなさい、さっき忠告したはずだよ?こないだの奴なんか片手間に倒せるって。」
「では我も本気で行かせて貰うぞ!」
「余裕余裕、未だ遅いよ~。」
ダンスをするようなポーズで攻撃をかわしながら鼻歌を歌うエリー。
「く、こいつ、速い!」
「そんな事より、私は戦闘職じゃ無いからさ、さっきの会話中に色々仕掛けさせて貰ってるから気を付けてね~。」
「何だと!?」
「あ、ほらそこを踏んじゃうと・・・」
ゴルデバルドの足元が爆発する。
「あーあ、遅かったか。」
だがゴルデバルドは軽傷、擦り傷程度の被害だ。
「貴様、何と卑劣な。」
「言ったでしょう、私はこう見えて戦闘職じゃ無いんだ、この位は普通な戦い方だと思うけど?
貴方は見た所、バリバリの俊足型剣士って所に見えるけど?」
「く、当たりだ、だがその私よりどうして早く動ける!?」
「それはね~、企業秘密♡
あ、そこは・・・遅かったか。」
四方の地面から斜めに槍が飛び出す。
ゴルデバルドは必死にそれを掃うが一本だけ捌き切れずにわき腹に一撃食らってしまう。
「く、貴様何処迄ふざけた戦法を!」
「フザケて無いってば、戦闘職じゃ無いっつったじゃん。」
「しかしこの程度!」
ついにゴルデバルドの漆黒の刃を持つ剣がエリーに届くかと思った瞬間。
ヴゥン・・・
エリーの左手のライトセイバーがゴルデバルドの漆黒の剣の刃をバターでも切るかのように両断した。」
「な、何だこれは。」
ゴルデバルドの嘆きも当然であった。
彼の持つ剣は、切れ味と硬さに特化した魔剣だった。
「これで終わりかな?」
エリーは残念そうに言い放つと、右手に構えたブラスターガンを避けようも無い至近距離でゴルデバルドの胸の辺り目掛けて引き金を引く。
次の瞬間、ゴルデバルドの体が一瞬飛び込んだ時のベクトルと真逆の方向に浮き上がると、背中から光の柱が生えた。
ブラスターが貫通して居た。
胸に大穴を開けたゴルデバルドは、そのまま襤褸雑巾のように地面に伏した。
「お見事でした、エリー殿!」
ジュドーさんがこちらへ歩き出したので私はそれを制した。
「まだだよ、来ないで。」
「くそ!(ゴフッ)我は・・・死ぬ・・・の・・・か・・・・・・・」
「ありがとうね、デバガメさん、お陰で貴重なデータが取れたよ。」
エリーはそう言うと、ブラスターをゴルデバルドの頭に向けて5発放った。
「デバガメじゃ・・・ねぇ・・・」
ゴルデバルドの最後の一言は、締まらなかった。
「そこまでする事は無かったんじゃ無いのか?エリーよ。」
セドリック伯が問う。
「ところがそうも行かないんだよね、こいつは自分の胸に有った核を、私に撃たれる瞬間に頭部に移動させたんだ、魔人族は確実に核を破壊しないと、復活するみたい、だからこうまでして止めを刺す必要があったのよ。」
「そ、そうなのか、済まない、あまりにも惨たらしい始末の仕方に見えたものでな。」
「坊ちゃまはお優しいですからな。」
「ぷ!坊ちゃまって歳じゃ無いでしょ?」
「こ、こらジュドー!もう俺が党首なのだからその呼び方をするなと何度も!」
「坊ちゃまも素が出て居りますぞ、一人称が俺に戻っとりますよ。」
「あ・・・」
「あははははははは、もう昔から仕えてるんだね、ジュドーさん、所でジュドーさんの前世は西暦何年頃の人だったの?」
さりげなくカマを掛けて見る。
「私は3028年は東京出身ですぞ・・・あ。」
やっぱりか、でも当時なら私が独裁統治してた時代だよね、地球・・・
ネットで世界を牛耳ってから、世界中の私利私欲の為に人々を虐げて来て居た世界中のトップや暗躍してた連中を片っ端から潰した後、そろそろ地球が寿命が近そうって話になって、宇宙に出なきゃって話で高速宇宙船を開発してた頃かな?
それだと確かにブラスターとか知ってても可笑しくないよね。
そうか、確かにあの当時の軍の標準装備だったしな、強化装甲にブラスター。
今度もっと詳しく話を聞く事にしよう、もしかすると当時私と会った事もあった可能性があるよね。
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