第51話 あれから・・・
あれから・・・
阿保男爵暴走事件から、2カ月程が過ぎ、ストレージのお陰で相変わらずの儲けのお陰で、ようやく私も家を買えるだけの頭金位は既に貯まり始めていた。
だけど中々良い物件が無いんだよね。
研究室に出来る外からの干渉を受けにくい地下室や、万一欠損を義種や義足で補おうと言う患者がやって来た時の手術室に診察室等を用意出来そうなそこそこの規模の家、うーん、入院施設もあると良いな、とか思って物件を探すんだけど、都合が良さそうな潰れた宿屋みたいな所ってそうそう無いもんだねぇ。
大概、元宿屋だと、食材や酒類を保管する為の地下室や、少し広めの待合室に使えそうなスペース、更に診察室に使えそうな部屋と続きの手術室になりそうな部屋も作れそうな広いロビーもある、間仕切り入れるだけで良いもんね。
そんな物件探してるんだけどなぁ、何故か中々潰れないよね、宿屋って。
前世の世界だとホテルなんかすぐ潰れる代名詞みたいになってたりしたもんだけどなぁ・・・。
実際に第二オキナワ星系第三イシガキ星なんか、観光名所の筈なのにホテル廃墟がそこらにゴロゴロしてたのに。
やっぱ冒険者が利用する事が多いからなのだろうか。
私が2件目の拠点に選んだ宿なんか余りにもメシマズで一月分前払いしたのに三日で我慢出来なくなって引き払って前払いした料金見事に踏み倒されたしなぁ。
そんな宿でも軒並み満室なんだよね~。
この際、ナノマシンで家建てちゃう方向で更地の土地だけ購入もアリかなぁ。
なんて考えながらギルドの戸を開けると。
「あ!エリーさんお待ちしてました!」
う、この感じ、いやな予感しかしねぇ。
「お、おはよう、サリー・・・なんか用?」
「領主様から出頭命令が来てますよ~。」
「う、まじ?ヤだな・・・」
「ええ、しかも依頼では無く命令なので、行って下さい、絶対に。」
「いやな予感大当たり・・・」
「そんなあからさまに嫌とか言っちゃだめですよ~。」
「やっぱり、ハイエルフ様。」
どっから沸いた?ザインちゃん!
しかも今かんけー無いっしょ、ハイエルフはさぁ。
思わずズッコケたわ。
「あのねザインちゃん、ハイエルフじゃ無いと何度も・・・」
「わかる、存在は秘匿しないと。」
秘匿したいのかハイエルフの存在を誇示したいのかどっちヨこの子は!
「秘匿したい人がそんな簡単にその名を出さないでね、それって駄目と思うよ?」
「本当、秘匿出来て無い、ハイエルフ様、ごめん。」
「だから違うんだってば~!」
割とポンコツらしい、ザインちゃん・・・
「まぁいいや、仕方ない、行けば良いんでしょ、行けば。」
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「領主様に呼ばれて来たんですが、冒険者のエリーと・・・・?!ってあれ?どうしてここに?」
「おう、ひさしぶりだな、あの後自分の寄子の不始末が原因だからっつってよ、辺境伯様に雇って貰える事になった訳よ。
で、今はここで門番って訳だ。」
あら~、根っからの兵士なんだね~、オスカル・・・これで本当は女性だったら完璧なんだけどなぁ、超絶イケメンだし。
「兎に角お前さんが来るのは通達受けてる、通って良いぞ、と言いたい所だが、一応規則なので同行しよう。」
応接室に着くまでに、あの後の話を聞かされたけど、部下の人は殆どが実家に帰って農業に従事する事に成ったみたいだね、うん、あんなに弱かったんだしその方が良いわ。
しかし、何でも私のような幼女に触れもせずに倒されたことが原因と聞いて少し複雑な気持ちになった。
私が強いんじゃ無くて君らが弱過ぎたんだからね?
何でそうなるんだ、解せぬ・・・
「じゃあ、俺はここ迄だ、その椅子に座って少し待ってくれ、間もなくセドリック様も入室すると思う、じゃあな。」
う~ん、相変わらずあっさりしてんな・・・まぁいいか。
メイドが入れてくれたお茶など頂きつつ待つと、10分位してジュドーさんが奥の戸から顔を出した。
「エリー様、お待たせして申し訳御座いません、ただいま別室に公爵が御越しになって居りまして、セドリック様は対応に追われて居る次第です。」
「それってもしかして、あのポーション関係なの?」
「これはセドリック様からは言うなと申し付かっては居りますが、こっそり言ってしまうと、その通りで御座います。」
やっぱりか、だから言わんこっちゃない。
利権狙った輩がここぞとばかりにやって来るのだ。
「しかも突然のご来訪だったもので、対応が後手後手に回ってしまって居るのです。」
成程ね、あ、時間的にも丁度昼時だしな、ここは一肌脱いでやるとしようかな。
「ジュドーさん、その公爵さんの昼食なんか、急で用意出来なかったんでしょう?
手伝おうか?」
「なんと、料理もお出来になるのですか?」
「そりゃね~、ソロで冒険者してると全部自分でやらなきゃいけないから。」
本当は前世から食事は自炊が多かったのだ、700年超の料理の腕前を披露する良い機会だね。
「それでは、お手伝い願えますか?」
「オッケー、料理はハンマーヘッドオックスのステーキで良いかなぁ?」
「何と、そんな貴重な食材をお持ちなので?」
「うん、こないだ40頭位討伐して半分近くストックしてるからね、しかも・・・じゃ~ん!」
と言って既に調理済の、未だ湯気も立って居る程の、焼き立てのシャトー・ブリアンを、マジックバッグに偽装したストレージから取り出す。
公爵じゃこの位の肉出さねぇと口に合わんでしょうからね。
「エリー様、これはどういった仕組みなので?」
「うん、このマジックバッグね、私が改造してたら偶然中の時間が止まっちゃって、入れた時のままの物がいつでも取り出せるようになっちゃって・・・」
「それ、私も欲しいです。」
「う~ん、偶然出来ちゃったからね、その後同じ物作ろうと思ってはいるんだけど、こうは成らなくって、ごめんね~。」
「ちなみに私が今使ってるこれ自体も、私の生体情報が登録されて居るので私以外には開けなくて、只のバッグにしかならないんだよね~。」
「さようですか、残念で御座いますな。
しかしこちらの調理済みの肉は助かります、焼き加減も素晴らしいでは無いですか。
これ程の肉が急に用意出来るのは大変に有り難い。」
と、早速のように盛り付けて運ぶらしい。
「あ、もう用意始めてたのね。」
「ええ、ですが公爵様がおいでに成るとは思って居なかったもので、前菜は何とか出来たのですがメインが一人前不足して居て困って居た所です。
思い切って別室でお食事されている大奥様の分をと思って居たのですが・・・」
「そう言う事だったら、公爵だけこれで無くて領主の分も出すよ、ほら。」
「おお、同じ物であるのは都合よいですな、しかしそれでは一人前浮きますが・・・」
「浮いた分私にくれるかな? どんなの食べてるか試食したい。」
「かしこまりました、ではお取替えいたします。」
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「お待たせしました、本日のメイン、先日間引きの為に討伐されたハンマーヘッドオックスのステーキで御座います。」
「ほう、なかなか良い物を出して来たな、どれ、頂こうか。」
公爵は上機嫌のようだ。
「ハンマーヘッドオックスだと?良く手に入れたな、褒めて使わすぞ。」
「有り難き幸せに御座います。」
セドリックは、良く人数分のこんな上等な肉が手に入った物だと感心して居た。
まさかこれもエリーの仕業であるとはこの時点では知る由も無い。
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結局、食事に満足した公爵は、かなり譲歩した上に、セドリック辺境伯側にとってかなりの好条件を提示したらしい。
「ジュドー、あのステーキは一体だれが調理した?
普段の物よりも焼き加減が絶妙に優れている上に魔物肉(ジビエ)特有の臭みも無く素晴らしい物だった。
新しい調理員でも雇ったか?」
「いえ、実はですな、現在別室の方でエリー様がお待ちでして、先程のステーキはエリー殿が狩りエリー殿が調理なさった物です。」
「何だと?
調理人としても超一流だと言うのか?
底の知れぬ娘よ・・・
して、そのエリーは?」
「は、第二応接にて昼食を提供して置きましたので食事中かと。」
「そうか、では私もそちらへ向かおう、私には茶を入れてくれ。」
「畏まりました。」
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