第32話 ビッグベア討伐
ビッグベア討伐
はい、と言う事でやってまいりましたクエストの指定エリア。
いつも採集して居た森からさらに奥に分け入った辺りで出て来る山の裾野です。
この裾野から沢伝いに上って行くと複数体が観測されて居るらしい。
そしてその沢らしき場所に辿り着いた私は愕然とした。
ここから登って行くっつってたよね?
何でもう居るの?熊さん・・・
それも複数体なんて言ってられるレベルじゃ無く、確実に両手で間に合わないと一目で分かる個体数・・・
えっとね、ビッグベアって群れを作らないんじゃ無かったっけ?それがこれだけこんな所に生息して居るって、明らかにヤバい前兆だと思う。
奥に行ったらなんかあると思うんだ、これは。
警戒している所に、背後から突然声が掛かってびっくりする。
「ハイエルフ様。」
「うぉっ!てぇ・・んン?・・・あーびっくりしたぁ~!」
「こら、ザイン、急に声掛けるからビックリしてんじゃないか、ダメだよ。」
「ん、キース、ごめん。」
「俺にじゃなくてエリーに謝てやれ。」
「ハイエルフ様、ごめんなさい。」
「だから私はハイエルフじゃ無いってば。」
「ちょっとキースもザインも速すぎ、私を置いて行かないでよ~!って、エリー!やっと追いついた!」
「おや、皆さんお揃いで、どしたの?」
「どうしたもこうしたもねぇよ、お前さんが一人でビッグベア討伐の依頼受領したってんで一緒に行ってやれねぇかって受付のサリーに頼まれたんだよ。」
うん、余計なお世話だよね、むしろこの状況だと、少なくともクリスとザインを守りながら戦わなきゃならなくなるよね、ここは嘘付いてでも帰らせよう。
「なんだ、心配性だなぁ、サリーちゃん、そんなの必要無かったのに・・・なんて言いたい所だけど、そうも行かなさそうなんだな、これが。」
「ん?そりゃどう言う事だ?」
「ほら、こいつ貸してやるからよく見て見ろ。」
携帯して来た自作の双眼鏡をキースに手渡す。
「お?何だこれ、魔道具? こっから覗くのか。」
「それは魔道具でも何でも無いよ、ガラスで作ったレンズで拡大して大きく見えるようにした普通の道具だ。」
双眼鏡すら無いのか、この世界・・・
あほな神よ、せめてヒューマン位はもう少しまともな進化させたれよ、まったく、こんなんじゃ一度大規模スタンピードでも発生したら滅ぶぞ、人類・・・
「うぉっ!何だこりゃ、こんな低地に迄これだけの頭数が降りて来てるってどんな状況だよ! こりゃやべぇぞ、討伐するにしてもそもそもこんな頭数がこれ程見通しの良い場所に居たらこっちが先に発見されてしまいかねないだろ。」
「でしょう、って事で君達は応援を呼んできて欲しいのだけど?」
「エリーはどうするの?キースとザイン置いて私だけで応援呼んでこようか?」
「私は一人でも大丈夫、むしろこの奥に更に居た場合が問題だから早めに応援呼んできて欲しいんだが。」
「そんな無茶しないで! まだEランクに上がったばっかりでしょう!?」
「あのね、クリス、勘違いしてるでしょう?私Dランクになったんだけど?」
「え? うそ!?」
「マジだってば、ほらこれ。」
「あ、ほんと、私のと一緒だ・・・」
「クリス、ハイエルフ様、大丈夫、行こう。」
ハイエルフじゃ無いってば~。
「じゃあこうしよう、ザインとクリスで状況を説明しに行ってくれ、俺がエリーとこの場に残る、それならいいか?エリー。」
そうだな、既にCクラスに上がってるキースなら残してもいけるか・・・
「わかった、じゃあそんな感じでおねがい。」
「さて、どっから攻めようか。」
「そんなの、手前から処理していくしか無いでしょ、凡そ一本道みたいなもんだしねっ!」
ミニ・ガンとグレネードランチャーを手に走り出す。
そんでもって乱射。
「おいおい、なんだその武器!
これか、ギルマスが言ってたのは、じゃあ俺はお前が取りこぼした奴だけ狩りゃいいな?」
「そうだね、そんな感じでよろしく!」
装弾数20発のグレネードランチャーが弾数ゼロになった。
ナノマシンに命令して補給をさせるが、3分は掛かる。
少し接近されてしまうが、ミニ・ガンで応戦。
ここまで倒したのが12体、突っ込んで来た熊が25体。
ミニ・ガンの射程に入ってきたのが25体のうち4体。
そいつを薙ぎ払うように乱射して居ると、回り込んで斜面を走って来るのが7体に、沢を駆け下りて来るのが6体。
「キース!沢は任せた!」
「おう、任せろ!」
そしてグレネードが復活した時には、残りの6体がほぼ全部至近距離に居た。
しまった!
グレネードランチャーは撃てるようになったが、ミニ・ガンはオーバーヒートだ。
「くそったれっ!」
一体に向けて、加熱したミニガンを投げつけてグレネードランチャーを乱射しつつガリルをストレージから取り出して撃ち始めるが、間に合わない!
「こン・・・のぉ~!!」
最後の一体の爪が私目掛けて振り下ろされようと言う瞬間、キースが飛び込んで来た。
「な! 馬鹿!」
爪の一撃を浴びて吹き飛ぶキース、その右腕は胴から離れ有らぬ方向へ飛んでいく。
「こいつっ!」
ガリルで最後の一体を始末して、私は大急ぎでキースの元へ走る。
「おい!キース!大丈夫か!?」
「あ、あぁ、エリーか、怪我はしてなさそうだな、良かったぜ・・・」
「馬鹿野郎! お前が大怪我じゃないか! 何で飛び込んできたのよ!」
「へへ、決まってんだろ、こないだの、お返しだよ、教会が、孤児達が飯食えるようにしてくれて、ありがとう・・・な・・・」
そう言ってキースは気を失った。
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