第24話 巻き込まれた!

           巻き込まれた!

 何はともあれ、受けられる依頼を地道に熟して行くしかランクを上げる手段は、通常、存在しない。

 なので相変わらず地味に採集と、雑用依頼だ。

 縄をつなぐ際にしっかり縛らなかった為に逃げ出してしまった飼い犬の捜索と言う日常何処にでもありそうな依頼を、探索用ナノマシンを駆使して瞬殺で終わらせると、今回の採集依頼の植物、綿花を探しに出かける。

 綿花なんか栽培してなんぼだろうって?

 イヤ普通はそうだと思うのだが、この世界ではどうやら食用の植物は栽培しているけれども、綿花のように食う物では無い物は栽培をしていない、何故かは解らんが多分、農業技術的な問題で食べる物を栽培するだけで精一杯なのでは無いだろうかと思われる。

 きっと元々農耕民族ではないのだろう、そして畑を害虫や害獣から守る手段もまだ稚拙なのだろう。

 であるからこそ、食用の物を作るのが精いっぱいと言った所なのだろう。

 しかし食用の野菜の畑を綿花畑で囲むことで、少なくとも害獣からの目晦ましにはなるし、綿花に農薬を使って害虫被害を食い止める事で、中心で育てている野菜の害虫被害も最小限にすることも不可能では無くなる筈なんだけどな。

 その上、衣服を作る為には綿花は重要であり、こんな具合に冒険者に依頼して野生の綿花を集めさせる位ならば栽培してしまった方が経済的効率も良い筈なんだけど、そこまでに考えが至らない程に栽培に考えが及ばない、そこまで困窮して居たと言う事に相違無いのだろう。

 まぁ、動物の毛皮で寒さを凌ぐしか手段を持ち合わせて居なくても生きていけないと言う事は無いので其処迄重要視されて居なかったのかも知れないが。

 でもこういう所もちょっと世界としては歪んでいる気がするのだ。

 あいつが神だったのだとしたら、やはりもう一度顔を見せやがれと言いたい所だ、何でここ迄歪んだ世界になってしまって居るのか。

 そんな事を考えつつ綿花の採集に精を出して居ると、ちょっと不穏な空気が漂い始めた。

 なんかね、どっかから逃げ回っているような慌てた足取りの足音と、それの跡を追い回すような集団の足音が近づいて居るのだ、要するに集団で狩りをするようなタイプの魔物に下手に手を出して追い回される羽目になった馬鹿な冒険者がトレインをしてるのだと察しがついてしまう。

 はぁ、どこの馬鹿ですかまったく・・・

 ストレージからミニガンと多連装自動装填グレネードランチャーを取り出して両手に構える。

 ほら、来た・・・

 今回森の中なので焼夷弾を使うと危ないので通常弾を使い、グレネードランチャーの弾も発火しにくい物を選んで、一斉射撃。

 こうして私の初のバトルは幕が切って落とされた。

 多分鉛で出来ている地球の実弾では大したダメージに成らないと考えた私は、こっちで使う為にはこれしか無いと思い、極力硬くてそこらに良くある金属と言う事で鉄を選んで使って居る。

 これで効かないようならばモリブデンでもニッケルでもタングステンでも持ってきちゃうぞ。

 地球に存在してた物は全て存在確認取れているしな。

 何なら劣化ウラン弾なんてのも使えない事は無いだろう。

 結果、一応鉄の弾丸は効かない事は無かったようで、あらかた倒す事は出来たようだ。

 逃げた魔物までは追う必要なんか無いしね。それにしてもなんだってオオカミの魔物、ファングの群れなんかに追い回されて居たのやら、こいつアホですか? 一度死んでみたらいいと思うよ?

「す、済まない、助かったよ。」

 トレインの原因のアホの顔を拝んでやろうと思ったら、どっかで見た記憶が有った、誰だっけ?

「あれ?どこかで見た記憶が、お前誰だっけ?」

「あ、てめぇ、あの時の新人女。」

 ん?もしかして登録の時に絡んできたナンパ野郎だったか?

「しっしっ、どっか失せなさい、二度と私の前に顔を出さないでくれるかな?」

「何だと?このクソ小娘、やっちまうぞ?」

「ふん、ファングの群れに追われてたお前を一人で助けたのは誰だ? 私に敵うとでも? それともお前、やっぱり一回死んで見たら良いんじゃない?」

 と言って、ミニ・ガンを向ける。

「ハチの巣になりたく無けりゃどっか行きなさい。」

「ヒッ、すすす・・・すみませんでした。」

 腰が抜けたようで這いずるように全力で逃げて行った。

 すぐに謝る位なら下らない悪態なんか始めから付かなきゃ良いのに。

 さてと、この妙に多いファングの死体をどうしよう。

 毛皮は使えるとして、肉って美味しいのだろうか。

 一応ストレージにしまう時に毛皮と血と肉と骨と牙に分かれるように仕舞う、で、一揃えを取り出して一種類づつ鑑定。

 毛皮はやっぱある程度の防御力が有って温かいらしい。

 肉は、意外な事に味は悪く無いみたいなのでちょっと調理してお昼ご飯にしてみよう。

 血、これは今一つ頂けないものだった、何故か毒もある上に弱アルカリ性で皮膚に掛かると早めに拭き取らないと爛れるレベル。

 牙は討伐クエストの証拠品になるらしい、これは全部持って帰るとしよう。

 で、骨、これはそんなに固くは無いので加工はし易いが耐久力はそんなに無いので安価な武器や防具になる事はなるのだが性能は今一つと言う物になるようだ、売れない事も無いか・・・持って帰ろう。

 しかし、本当にクズな冒険者だったな、奴は・・・興が削がれたし採集規定量には達して居たので今日は帰るとしよう。

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