第13話 冒険者エリー2

          冒険者エリー2

「ただいまー。」

「エリーさん、お早いお帰りでしたね。」

 え、もうお昼過ぎなのに未だ受付してんの?

 マジでいつ寝てんの、この子?

 ってか、冒険者ギルドって何気にブラック企業だよね、これ。

 早速採集した薬草を提出すると、なんかおかしな道具で鑑定していた。

「それは?」

「これは品質を調べる道具なんですよ、便利でしょう?」

 これも魔道具ってやつなの?

 ってか、こんな物使ってるのにどうして魔法を未だに見ないのだろう。

 不思議な感じだ、ってかこの世界かなり歪んでる気がする。

「すごいですねぇ~、こんな品質で採集できるんですね~。」

「コツが有るかもね~。」

「やっぱり、ハイエルフ様?」

 また背後にいつの間にか居るよ、ザイン君、もしかしてストーカー?

「ね、ねぇ、ザイン君? なんで居るの?」

「キース、昨日怪我した、今日、おやすみ。」

 あ、そうか、昨日私を助けようとして怪我してたんだっけ、この世界の薬はファンタジーなものからは遠くかけ離れた常識的な性能なんだった。

「ザイン、余計なこと言うな、エリー、気にしなくて良いぞ、俺が未熟だから怪我しただけだ。」

「うん、昨日は色々ありがとう御座いました。」

 みんな居たんだね、ギルド内に。

「おまたせししました、これが今回の報酬額です。」

「あ、はーい。」

 振り返ると、何だか予測を大きく上回る額がそこには積まれていた。

「なに、これ。」

「詳細をお伝えします、まずクエスト完遂料が中銀貨4枚。

 そしてこちらの素材がすべて品質がAAの最高ランクでしたので、一株当たり大銅貨8枚の上乗せになり、40株ですので大銅貨で320枚、つまり中銀貨で3枚と小銀貨2枚になります、従って中銀貨7枚、小銀貨2枚の報酬となります。

 他に根治草等採取して来ていましたら、更に報酬が上乗せになる所なのですが、クエスト内容に書いて居なかったので持ってませんよね?」

「あ、それアリなの?

 だったら持ってる持ってる!

 研究用にと思ってついでに採集して来たんだ、研究は今度でも良いから今はお金欲しいし、ハイこれ。」

「素晴らしいですね、エリーさんは薬草採集のエキスパートですね、ここまで丁寧に根まで採集してくれる人は滅多に居ませんよ?

 しかも鮮度も最高です。

 少し待って下さいね、こっちも清算しちゃいますね。」

 この世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨が各大中小と、普通に流通して居る硬貨は9種類、小銅貨10枚で中銅貨と言う具合に、10枚で一つ上の硬貨と換金出来る、判りやすい仕組みだ。

 この9種類の他に、貴族や王家の専用のような通貨が有るらしい、その辺は平民達も噂だけであまり良くは知らないようなのでとりあえず調べるにはもう少し時間が掛かりそうだ。

「お待たせしました、根治草が40株、すべて品質がAAです、AA品質の根治草が一株当たり小銀貨2枚、40株ありますので中銀貨8枚となります。」

 報酬を受け取ると、キース君達の方へ向いた。

「キース君達、ありがとう、宿代お返しします。」

「お、おう、もう初日からそんなに稼いだんだ、すげぇな。」

「うん、それでね、これから装備関連を揃えに行きたいんだけど。」

「ハイエルフ様、お供する。」

 どうしても私をハイエルフにしたいらしいイケメンエルフのザイン君が一緒に来てくれるらしいんだけど、なんか調子狂うんだよね。

「私ハイエルフじゃ無いってば。」

「しゃぁねーな、クリスも連れて行きな、女同士の方が都合良いだろうから3人で行ってきな、俺はここで待ってるわ。」

 キース君がなんか可笑しな事を言った気がするが、クリスちゃんも私を着せ替え人形にしたいみたいでニッコニコで寄って来た。

「じゃあ行きましょ、エリーちゃん可愛いしきっとかわいい装備が見つかると思う、だからこの際色々世話焼いたげるね。」

「ありがと。」

 確実に着せ替え人形か、仕方ない、付き合ってみるかな。

 まず武器は、私は短剣で良いと言って手頃な物を選んで終わった、まさか銃を装備して携帯する訳にも行かなかったので見た目だけでも取り繕おうと思ったのでこれが一番安くて都合が良かったからだ。

 問題はここから、防具のお店に着いてからだった。

 特にノリノリなのはクリスちゃんで、選んで来た防具を自分でも装着してみる始末。

 それに触発されたのか、ザイン君が試着室に入って、しばらくして出て来た。

 バリバリのビキニアーマーを着て出て来たザイン君を見てびっくりした・・・お、女の子だったのね・・・

「ザイン、君、あ、いや、ザインちゃん、だったのね、ごめん。」

「いや、僕は、気にしてない、ハイエルフ様、頭を上げて。」

 僕っ娘だったんかいっ!

「いやハイエルフじゃ無いってば。」

 結局は服の上から装備できる形の鞣革製の胸当てと額あて、それと小手、武器を吊ったり、道具を入れて置くポーチ付きのベルトを選んでギルドに戻る。

「お、様になったんじゃねぇか? 冒険者らしくなったと思うぜ?」

 キース君が褒めてくれたので素直に受け取っておくことにした。

「ありがとー。」

「そういえばさ、どうだった?冒険者初日は。」

 クリスちゃんが聞いてきたので素直に答えてみる。

「う~ん、手近な所で採集しただけだったから、まだあんまり実感が無いと言うか、戦闘が無かったからちょっと安心したけど・・・つっても武器無かったし魔物出て来ても困っただろうけど。」

 本当は銃を作ってたので持ってるけどね。

「そうねぇ、確かにそれだとあまり実感わかないかもしれない~。」

 すっかりクリスちゃんと打ち解ける事が出来てちょっとホッとしている、昨日はキース君が取られるんじゃ無いかとちょっと敵意ムキ出しだったた気がしないでも無いんだけどさぁ。

「あ、そうそう、ちょっとクリスちゃんに聞いて欲しいことが有るんだけど。」

「ん?なぁに?」

 小声で「実は私、鑑定スキル持ちなんだけど、薬草、根治草って、実は同じ植物って鑑定出来ちゃったんだよねぇ、どうしてだろう?」

「な、何それ、私も初耳、それにそんな変な鑑定が出る鑑定スキルってどんななの?」

「なんか知らないんだけど、ナズナっていう食べられる雑草が有るでしょう?」

「へぇ、ナズナって食べられるの?」

 あ、そこから知らないのね・・・ナズナは地球にもあった雑草で、春の七草になって居るので食べられるのだ。

 まぁ大きく成長すると苦そうだけど。

「うん、元々植物には少し詳しくて、食べられる雑草なんだけど、それと同じ物だったのよね、鑑定結果では。」

「その鑑定スキルがきっとエリーの知識と反応してるのかも知れないね、じゃあ、どう言う経緯で薬草や毒草になるのかが気になるよね。」

「でしょう?どこか研究出来るような施設借りられないのかな。」

「う~ん、そう言う施設は知らないけど、図書館なら調べられるかもしれないよね。」

「あ、図書館有るんだ、場所教えて?」

「う~ん、有るけど、私達只の冒険者じゃ入れないかも・・・」

「やっぱ貴族じゃないと入れないとかそう言うアレ?」

「うん、そう言うアレ。」

「う~ん、そうかぁ~、そう言うアレだったか~。」

 じゃあアレだね、図書館を探して閲覧してくるように、ナノマシンに命令しとこう。

「でもさ、もしもそれに関して新しい事が分かったら私に教えてくれない? ほら、私薬師でしょう? 少しは力になれるんじゃないかと思うんだ。」

 うん、もしかしなくても詳しい事が分かったら教えてあげるつもりだよ、何が何だか分かんなくて混乱してる所を助けてくれた人達だからね。

「判った、でもあんまり人に言わないでね、きっと何か凄い事が判っちゃうんじゃ無いかって言う予感がするんだ。」

「うん、そうだね、凄い事が判っちゃったら誰にも言えないよね、むしろ。」

 こうして、タイタンズの皆とお話をしながらご飯を食べて、宿に戻った。

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