第9話 エリーの過去4

          エリーの過去4

幸い、全身義体を纏ってから200年が過ぎても、定期的な投薬を欠かさず続けていた私の脳は衰える事はなかった。

その間に、義体に味覚を完全再現する事に成功、更には普通に食べ物を頂いて微生物(ナノマシン)で分解しエネルギーに変換して義体でそのエネルギーを使うという一見出鱈目な技術を確立出来てしまった、義体を一人で200年間研究し続けた結果と言っても過言では無い。

ちなみに排泄物は出ない、全てをエネルギーに出来ると言う高効率なのだ。

この技術が確立するまでは、一応食物からのエネルギーである程度は活動出来て居た義体も、全身ともなるとエネルギー効率が圧倒的に悪かったので充電する必要性があったのだ、このエネルギー効率が確立出来た事で本当の意味での義体と成ったと言える。

フフフ、美少女は排泄をしないのですよ・・・あ、今私は男性型の全身義体使ってるんだった。

人類を地球以外の星へと旅立たせる事となった技術の数々も義体の研究の片手間に完成させた。

亜光速を実現した超高速航行も、超空間航行、つまりワープも私の発明による物だった。

今度はしっかり特許を申請したおかげで、私の資産は天文学的な数字となった。

それを使い私は一つの惑星を買い取り、環境発電施設と通信施設、量子コンピューター、生活に必要な一切を備えた居住エリアを隣接した研究所のみを建設し、引き籠った。

星の規模は地球の凡そ1.2倍程度の割と小型の惑星だったが、環境が非常に地球のそれと似通っているが未だに微生物以外の存在が確認出来ないかなり若い惑星であった。

空気成分が多少違い、酸素濃度が地球の凡そ20%に対して、この星の酸素濃度は凡そ25%も有る為、火を使う時は気を付けなければいけないが・・・

私は誰にも所在を伝えぬよう一人で住み着き、自分の好きなように開拓した。

手始めに、大気中を自由に飛び回る事が出来るナノマシンを開発、このナノマシンに進化の可能性を組み込んだ。

愕く事にそのナノマシンは、思ったより早く独自の進化を遂げ、マスターである私の命令だけは絶対に守ってくれるとても頼もしい存在へと成長した。

この星の微生物を改良し、貝類、魚類、両生類と、地球上に存在した物に近い新たな生物を育み、地球上に存在して居た記録のある様々な木々や、動物を生み出していったのだ。

これによってネオオガサワラの環境は地球上にかつて存在した絶滅種を含め、全く同じとまでは言えないが再現されて行く。

これで人類でも発生してしまえば少々やりすぎた感が有るのでそこまでの進化は促さないように、ナノマシンに再調整を施し、進化速度と突然変異頻度を地球のそれとほぼ同等に変更した。

二つ目に私が創造したのが、この星の埋蔵金属を収集する探査ロボット。

驚く事にこの星には、地球圏には存在しなかった金属が眠っていた。

そうして私はその金属の研究に没頭し、様々な実験を重ねる事でその金属の持つ特殊な性質を見出した。

しかもこの金属、偶然にも私のナノマシンとの相性が非常に宜しい様だ。

私はこれに、惑星オガサワラをもじって、オーガリウムと名付けた。

私はオーガリウムの研究で新たな素材を世に送り出し、義体の強化外郭や外宇宙探索船等、様々な用途に利用されて行く事になる。

従来のスチールや銅、アルミニウム等との合金化及び配合割合で、とても様々な特性に変化する興味深い金属だった。

この星に移住して来てからの私は、この星の金属資源や木々を含めたこの星独自の素材に刺激を受け、硬度11を超える超鋼金属や植物生体を利用したコンピューターによるAI運用等、様々な構想を膨らませ、新技術を確立して行ったのだ。

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