隣の席の無口美少女(戦場帰り)に仮装をしてもらったら、何故かそのままゴールインしそうになったんだが。
俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き
イェッス!!
10月31日。
その日はハロウィンなんて言われている。
元々は、古代ケルト民族のドゥルイド教で行われていたサウィン祭が起源といわれており、古代ケルトでは11月1日が新年で、大晦日の10月31日の夜に先祖の霊が会いに戻ってくると信じられていたらしい。
で、悪い霊も一緒にやってくるから、仮装をして悪霊を退治しようと思ったらしい。
コレはあくまで一説なので、皆様もご自分でお調べになってみて下さい。
でだ。んな雑学を披露したかったわけでは決して無い。俺は別に東大生でもクイズ王でもないから、そんな趣味はないのだ。
そのハロウィンは、現代日本では起源に関係なしに、仮装してお菓子を食べ散らかして遊ぶ日になっている。
渋谷なんかでは、ナウいパーリーなピーポーがドンペリ片手に幅をきかしたりなんかもしているらしい。
そんなとてもけしからん日に、俺はなんと補習が入っていた。
マジ無いわ。
俺もドンペリ片手に美少女とわきゃきゃうふふしたかったつぅの。
あのハゲ頭、マジ許さんわ。
俺はそんな遺憾の意で放課後を迎えたのだ。
もう絶対にあのハゲ頭の髪の毛をワシャワシャして、バーコードにしてやろうと。
コンビニの機械で読み込めば、170円(税抜き)と表示されるような感じにしてやろうと思っていたわけだ。
でも。しかし。まさか。
なんと、いつもは一人の補習が、この日ばかりは一人ではなかったのだ。
別に、複数人だからって作業量が減るわけでもないし、超集中できるわけでもない。
それが出来てれば、大規模会場模試で偏差値30台を叩き出すわけがないもの。
あくまで気持ちの問題だが、一人ではないそれだけのことで心は満たされ、勉強ははかどるのだ(当社比)
しかも。しかもだ。
なんと、そのお相手が、美少女だった仮定しよう。
おうおうおう。この時点で全国非リア同盟の皆様から抗議文が原稿用紙7枚に渡って送り付けられてきそうではあるが、この話にはまだ続きがある。
なんと、なんとそのお相手が、隣の席の超美少女。それこそ学校一と噂されちゃうレベルの美少女。しかも、自分の性癖どストライクの銀髪碧眼ロングの、無口クール戦場帰りだとしよう。
もう、これはやる気がわかなくてどうすると
はかどらなくてどうすると。
……どっちも別にHな意味ではないことをここに記しておく。
おうおうおうおうおう。もう、全国の陰キャメガネくんたちが、俺の位置情報を特定しにかかって、あのチェックシャツくんなんて、近所のホームセンターに包丁を買いに走っていってしまいましたけれど。
俺も、傍からそんな光景を見せつけられたら君たちと同じ。いや、それ以上に怒りますよ。
もう、渋谷で横転させられているトラックを立て直した後、傷をパテで埋めて持ち主に返却したあと、商店街の皆さまとゴミ拾い活動に勤しむくらいには怒りますとも。
俺めっちゃいいやつやん。
けど、それが自分に降り掛かった幸運なら話は別よ。
存分に堪能した上で、独り占めしまくるよ。独占禁止法違法しまくりよ。
さて皆様。振り上げられたその拳を一度収めて冷静にお考え下さい。読み返しちゃったりなんかしちゃって下さい。何なら、まだ読み終わってないけど☆つけてフォローしちゃって下さい。
さあ。頭のいい皆さまなら分かったことでしょう。
この現代日本に置いて、戦場帰りとは何やと。
おま、ここはSFでもなければ、ハイファンでもないんやと。
そんな設定あるなら、カテエラで訴えるぞと。
さっき押した☆1に下げるぞと。
言いたいことはたくさんあると思います。
でも、聞いて下さい。
ブラウザバックする前に一度聞いて下さい。いや、読んで下さい。
僕の隣の美少女は、純日本人で地毛が銀髪で、カラコン無しで碧眼で、戦場帰りなんです。
どこの戦場かはわかりません。何をしていたかもわかりません。
ただ、戦場帰りなのです。
銃を撃っていたのです、強いのです、白銀の弾丸なんてあだ名が付いていたのです。
詳しくは、考えてはいけないのです。世の中って、そういうもんなのよ。
閑話休題。
ってなことで、俺は隣の席の美少女とハロウィンの日の放課後に補習を二人っきりですることになったのだ。
本当に捗った。
いつもなら解けないはずの問題も、スラスラ解けた。
数学の数式が、まるでラノベのように頭に流れ込んできた。
マジ。超捗っていた。受験日コレなら東大も夢じゃないレベル。
そして、俺は爆速で課題を終わらし、俺と違って初犯なので軽めのプリントで済まされた隣の席の美少女こと、スミレさんも課題を無事に終えたのだ。
補修で課題が終わったとなれば、邪魔も……先生は帰り、俺とスミレさんは二人っきりになったわけ。
俺は、数学の教科書を眺めるふりをして、スミレさんを見る。
彼女はもう用事はないはずなのに、なぜか席に座って無言のまま黒板を見つめていた。
……何か話したい。仲良くなりたい。あわよくば、お付き合いを前提に結婚したい。
そんな欲望がとめどなく溢れてくる。
「…………」
俺の欲望を知ってか知らずか。スミレさんはふと俺のことを見つめた。
え…………?
俺と彼女との視線が交わり、見つめ合う。
まるで時が止まったかのように彼女から目線が離せなくなって、自分のすべてを吸い込まれそうになる。
何か、何か話さないと、俺はこのまま彼女に溺れてしまう。
そう思って、俺は何か言おうと口を動かす。
「……あ…………」
けど、口からこぼれたのはそんな一文字だけだった。
「…………?」
人形すらもおののくような精工に造り込まれた彼女の顔が、不思議そうに傾く。
――――美しい
そんな感想しか浮かばない自分が嫌になる。
なにか言わないと。
俺は再びその問題に当たって、働かない頭を必死に働かせ、
「ふ、服着ますか?」
欲望丸出しな、文脈意味不明な言葉を放った。
あ……終わった。
俺は瞬時に感じ取る。
こんなこと言っても、意味がわからないし、意味がわかったところで殺される。
俺はなんとか挽回しようと、
「あの、今日ってハロウィンじゃないですか。だから、そのコスプレなんかしてみたりどうかなって。綺麗なスミレさんに似合うヒラヒラスカートがこんなところに!……なんて…………。」
回らない口を必死に回して、意味不明な釈明を続けた挙げ句。
なんか機会があればいいなとバックに隠し持っていた、ひらひらドレスを取り出して見せてしまう。
あぁ、本当に終わった。
放課後の教室で、二人っきりになった女子にひらひらドレスを見せて、これ似合うと思うなんて。本物の変態だ。釈明の余地なんてない。
「…………」
その証拠に、スミレさんはすっと立ち上がって、俺に向かって歩いてくる。
あ、終わった。
俺がそう自覚するとほぼ同時に、彼女の体がすぐそこまで迫ってくる。
ガタッ
俺が体を引いたことにより下がった椅子の音が響く。
シーーーン
そんな効果音すら、陳腐に聞こえるような静寂の後。スミレさんが今日始めてその口を開き。
「了解しました」
一言つぶやくと、俺の手元からひらひらドレスを受け取って、クラスを出ていった。
「…………」
俺はそれから数分間、状況が飲み込めなかった。
そして、時間が経って、ようやく理解できても、
「エ゛?」
そんなありふれた疑問の言葉しか、つぶやけない。
俺、疲れてんのかな……。
◇ ◇ ◇
「あ~」
俺は数学の教科書に記された、暗号のような文字列を見ながらつぶやく。
スミレさんが出ていってしばらく経ったが、未だに戻ってきていない。
マジで服を着てくれているのだろうか。
もしそうだとしたら、もちろん嬉しいが。それに勝るほどに心配でもある。
だって、制服でも美しさマックスな彼女に、ひらひらのついたドレスなんて着せたら、それはもう神だから。
「あ~」
俺が再びつぶやいて、背中をのけぞらせたその時。
「…………」
無言で俺を見つめるスミレさんと目があった。
「はっ……」
俺は驚くよりも何よりも先に、その姿に見惚れてしまう。
俺の想像していた何倍も。いや、想像なんて軽く飛び越して、彼女は美しかった。
ひらひらのついた純白のドレスが、彼女の神秘的な美をよりいっそう引き立て、昇華させる。
こんなに美しいものが存在していいのかと、疑ってしまうほどに美しい。
「…………?」
彼女はドレスの裾を掴んでそっと持ち上げると、『どう?』と言いたげに首を傾かせた。
こ、これは、感想を求められているのだろうか。
そりゃ、着せたのは俺だから至極当然だ。
けど、今の俺に的確な感想を述べる能力はあるのだろうか。
頭のなかは『キレイ』『かわいい』『カッコいい』『美しい』『好き』『結婚したい』なんて、幼稚な感想と欲望でいっぱいだ。
「けっこ…………す、好きです!!」
俺は回らない口を何とか回して言う。
あ、あぶねぇ、危うく求婚するところだっ……た………………って!!!
おい俺!! てめえ何告白してんだよ!!?
スミレさんは感想を求めてるんだよ!!
お前のクソどうでもいい欲望なんて求めてねぇんだ!!
あぁヤバイ、マジで今日が命日かも。
恐る恐る俺は彼女の顔を見る。
怒ってるかな……引いてるかな……嫌われてるかなぁ……。
いろんな負の表情を思い浮かべるが、
「わ、私も……好き」
彼女は、普段はピクリとも動かない表情を、微笑みに変えていた。
しかも、そんな告白付きで。
…………え?
まっ、待って…………相思相愛では?
いや早まるな。俺が好きなのではなく、この服が好きという可能性だってまだあるぞ。
逆にそっちの可能性のが高いまである。
う、嬉しい。飛び跳ねて喜びたいけど、勘違いが怖い。
こ、これはどうすれば……。
俺は本日3回目。自分の働かない脳を必死に動かして考える。
考えに考えた末出たのは、
「俺とお付き合いを前提に結婚して下さい!!」
そんな、意味のわからないプロポーズだった、
あぁ、終わった。
世界終わった。
核爆弾落ちたわ。
俺は嘆くが、目の前に経ったスミレさんは、持ち上げていた裾を下ろすと。
コツコツコツ
靴を鳴らして俺に近づき、
「は、はい……」
かすかな声でつぶやいた。
…………ほぇ?
人間理解できないことがあると、変な声が出るというがまさにそれ。
全くもって現状を把握できない。ただ、ここでいかなきゃ一生後悔することだけは、分かっている。
「お、お願いしますっ!!」
俺は暗闇の中を駆け抜ける戦士のごとく、状況すら理解できないがとにかく突っ走った。
「…………」
スミレさんは黙り込むと、俯いて……教室を出ていってしまった。
あっ………あぁ、やっぱ駄目か……。
そうだよな、こんなことあるわけない。
ラノベでもあるまいし。
けど、彼女の頬が赤かったのは気のせいだろうか。
数分後。俺はもう帰ろうかなと思っていると。
「い、一緒に……帰えろ……」
いつの間にか教室の入り口に立っていたスミレさんが、小声でつぶやいた。
へ?
よくよくみると、彼女はドレスから着替えて制服を着ている。
も、もしかして、俺を嫌って逃げたのではなく、着替えに行っただけ……?
「い、いいんですか?」
俺が確認の為尋ねると。
「…………」
彼女は無言で、頭を縦に強く振る。
「えっ、マジで交際を前提に結婚してくれるんですか?」
「…………」
普通ならありえない問にも、彼女は頭を振って同意する。
ま、ま、ま、まマジか…………。
俺、高校生のハロウィーンで、超タイプな美少女と二人っきりになったら、交際を前提に結婚してくれることになりした。
ありがとうございますっ!!!!!!!!
隣の席の無口美少女(戦場帰り)に仮装をしてもらったら、何故かそのままゴールインしそうになったんだが。 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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