第40話 季美side3
学年が変わりクラスも変わってようやくあの忌々しい顔を見なくて済むと思ったのに。
どうしてあの人は私の前に現れたの。
それも、妹を引き連れてやってきた。
妹だよ?
その子、私の本当の妹だよ?
なのにねえ、抱介。
どうして、元カノの妹と一緒の席に座って、食事をすることができるの?
どうして牧那はあなたのことを知っているの?
一体どこで、あなた達は知り合うことができたの?
家に呼んだことも何度もある。
でも、その度に妹がいない時間を選んだりとか、二人を合わせないように心を砕いてきたのに。
あの子はいつも私が欲しいと思ったものをすぐに手に入れてしまう子だから。
あなたのことだけは見つからないように見つからないように見つからないように……心を砕いたのに。
どうしてそこに座って、あの子は私が向けるよりももっと楽しそうで嬉しそうな顔をあなたに見せているの?
ねえ、抱介。
それは私に対する最大級の裏切りだって、思わないの?
あーでも……やっぱり、だめかもしれない。
彼が私を裏切ったのはたった一回だけど。
私はこれまでたくさんの男の人達を裏切ってきたから。
その罰を与えられるべきなのかもしれない。
けれどもやっぱり姉として妹のことが心配になるから、忠告はした。
予想通り、あの子は私のことを嫌っていて、牙をむいて本気になって反抗していた。
昔は仲良かったのに。もうあの頃には戻れないのかもしれない。
抱介とも、やり直すことはできないのかもしれない。
今の彼氏は私のことを、いやらしい女にしたいって公言してる。
短いスカートに、シャツの胸元を露わにして、いつでもどこでも発情するような。
そんなだらしのない女になって欲しいって、そう言われてる。
自分はどんどん汚れていくのが分かってしまう。
妹たちの席から彼氏の所に戻ったら、やめてほしいのに素手をスカートの中に入れてこようとした。
拒んだら、他の人から見えないように下腹を強く殴りつけられた。
俗にいう、腹パンってやつで、男の人にとっては軽いものでも、女の私にとっては恐怖の対象でしかない。
体が強張る。
抵抗をやめたら、スカートの中でその手がうごめいていた。
気持ちが悪い。
気持ちが悪いけれど、彼の望むように。
彼のやりたいようにさせてあげたい。そんな思いも生まれてくる。
それは私のことを受け入れてくれて、大好きだと言ってくれるからだ。
正直、その言葉の何割を信じていいのかわからないけれど。
でも今は、周りの仲間たちの視線もあるし、拒絶をすれば新しいクラスで浮いてしまうことになる。
彼は今のクラスでとても強い発言力を持っていて、その側にいれば、私は孤独にならなくて済むから。
もう戻れない道を歩き始めた気がして、それはそれで怖いのだけれど。
本当はどうしていいかわからない。
今の彼に従うことが正しいのか、昔の彼に助けを求めることが正しいのか。
どうしていいか分からず妹と彼の二人の姿を目にしたあの日から、家に帰宅して自分の部屋で一人っきりになるたびに、私はいつのまにか泣いて泣いて、泣き疲れて翌日の朝を迎えて、それから学校に行く。
もしくは、彼の仲間たちと、彼の家で馬鹿騒ぎをやって、知らない間に体を許していて。
朝になったらシャワーを浴びて、彼のために食事を作ってあげてそれから学校に行く。
今の彼氏は両親がなかなか戻ってこないから。
その意味ではお互いに共通するところがあるのかもしれない。
これでいいのかな。
ねえ、抱介。
季美は、これで……いいのかな?
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