第38話 季美 side 1
全校生徒の目の前で彼に対して告白をしろ、と迫られた時。正直言って、キモい、としか思えなかった。これまで私に寄ってきた男性の多くは二つ返事で私のことを受け入れてくれた。
ましてや、「浮気してるよ?」なんて伝えたところで、彼らもまた私のことを二番目として扱っていたから特に怒ったりしなかった。つまり、私はいつも誰かの二番目だったのだ。
☆
抱介との出会いは、中学生の頃から年上の男性たちと遊び慣れている私にとって、なんとなく新鮮なものだった。彼は他の男たちみたいにいきなり私の体を求めてこなかった。いやいや、違う。一番最初は、受験の時に彼の顔を見たのが始まりだった。締まりがなくて、男前というわけでもなく、エネルギッシュに何かに溢れているわけでもない。
どこにでもいる普通の中学生男子で、それが私にとっては対極にいる存在に感じられた。他の子に言ったら多分馬鹿にされるだろうけど、彼はまるで太陽のような存在に思えたの。私をこの闇の中から連れ出して、「もう大丈夫だよ」と優しく抱きとめてくれる。そんな頼もしい男性に見えてしまったのだから、今から考えると不思議で仕方がない。
入学して一日目に実習と称して図書室に誘ったこと。間を置かず、放課後の教室で彼のことを誘ったこと。そうしたら彼は顔を真っ赤にして、本気で怒ってしまった。男の人が真剣に怒るその様が本当に怖くて、内心、逃げ出したかった。でも、なんだろう。
この人の持っている心の中の譲れない部分は、私にはなかったもので、自分の中にそれを見つけたいと思った。でも、それを見つける方法は私にはひとつしかなくて。やっぱりこんなことするしか能のない、ダメな女なんだなー、と心の中でぼやきながら翌日、彼のことを自宅に誘った。
まさか私が初めての女だなんて思わなかったし、周りの男の子たちも女の子たちも、みんな早々と初体験を済ませていたから。私が彼の初めてを奪う栄誉を与えられるなんて思ってもみなかった。
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