第465話 聖通
グリムウッド神父との淫らながらも満たされた生活は、気づけば1年の時が過ぎていた。僕の性格は、まるで硬く閉じていた蕾が花開くように変化し、毎日が新鮮で楽しかった。
「メルデスちゃん。やっと手に入れたぜ! 絶対に似合うと思う♡」
「ダミアン氏、それはまさかっ!?」
「ジャーン!『見て
「ふおおっ♡ 待ってましたー♡」
見て神とは、僕が最近ハマっているラノベ。『見ている神がいないなら、この物語は無題です』の略だ。
その中に出てくるキャラクターが
さて、着替えるとするか!
フワサッ
フワサッ
僕は次々とシアちゃんセットを身につけていく。ベリーキュートな国立第三訓練学校の女子の制服。光によって七色に見える艶やかな黒髪ショートヘアのウィッグ。ディープマリンブルーのカラコン。
すべてを装着した僕は、どこから見ても完全に女子だ。さーて、身も心もシアちゃんになりきって、ダミアン氏を喜ばせてあげますか。
「お待たせしました」
「おお、おおお♡ メルデスちゃん、
「あたりまえです。ダミアン氏、どんどん撮って構いませんよ。今日はサービスしちゃいます。うっふん♡」
「ふおおおっ♡ シアちゃん降臨♡」
カシャ、カシャ、カシャ!
人間変われば変わるものだ。
人生の考え方、ライフスタイル、所作や言葉使い、変態プレイの知識。僕は彼の影響をもろに受けた。ダミアンは恥ずかしげもなく、すべてをさらけ出す。彼の無防備な笑顔には、僕の凍てついた心を溶かす熱があった。そんな彼以外には、まだ恐怖を感じる。投薬は欠かせない。
迷える僕に彼は毎日のように神学を説いた。自分と同じ神父の道を進んで欲しいという思いが伝わってくる。もちろん、変態神父の道にだ。
アルバート・メルデスにはそれが最善。孤児院でひとりたたずむ僕を見て、彼は直感でそう思ったらしい。
僕はダミアンに感謝している。透明になってしまった心に色をくれ、自分の新たな可能性にも気づかせてくれた。彼の恩に報いる為にも、僕は神父になることを素直に胸に刻み込んだ、
さらに3年が過ぎた。僕は中学生になると同時に男の快楽に目覚めた。
「ダミアン氏。出た」
「そうか! 精通おめでとぅ!」
「おしっこ漏らすのかと思ったよ。でもこれで、僕ちゃんも大人の仲間入りってことかなぁん?」
「ばかやろ。オナニーできるようになったぐらいで調子に乗んな。複数の女を抱けるようになったら一人前だ」
「女を、抱く……」
ビスキュートのことを思い出さない日はない。初めて会った日のことから、裸を見た儀式のことまで。動かない、冷たい体の女を抱きたい。僕はこんな不謹慎な願いをずっと持ち続けている。
『あの日』の出来事は誰にも話していない。ダミアンもとくに僕の身の上を聞いてくることはない。そういうところも僕が彼を信用できた要因だった。
さらに6年が過ぎ、僕は高校を卒業。ダミアンの推薦を受け、神父になるべく神学校へ入学。僕は誰よりも真面目に授業に取り組み、6年の過程を終了した。後日、配属先が決まった。
「アルバート・メルデス」
「はい」
「君にはバドミールハイムの教会で職務にあたってもらう。聖職者を目指し、皆の模範となるように。がんばりなさい」
「はい。心得ております」
(あと1年、助祭を勤めあげればついに神父だ。そうしたら、好き放題やっちゃうもんねー!)
神父を目指してるけど、僕ちゃんは神なんて信じちゃいない。祈ったところで人間恐怖症は治んないし、くだらない
1年間、助祭を務めあげた僕ちゃんは、ついに念願の神父になった。でも神父はSEX禁止。くっだらねぇ。僕ちゃんはダミアン氏を見習い、SEXはバンバンしていく方針だ。
僕ちゃんは超イケメンなのだ。早くビスキュート以来の女の小便をガブ飲みしたい。ペニスが暴れたがっているのがビンビン伝わってくる!
「おめでとう。メルデスちゃん」
「ありがとう。ダミアン氏」
「君との17年、
「それはこっちのセリフですよ」
僕ちゃんは病室のベッドで痩せこけたダミアンに礼を言った。ダミアンは半年前から癌で闘病生活をしていた。
「この17年で叩き込んだことを忘れるな。変態神父を謳歌しろ。どんどんSEXをしてテクを磨け。女はいいぞ」
「了解」
僕ちゃんはダミアンとグータッチして別れた。1ヶ月後。ダミアンは女神とSEXする為に、あの世に旅立った。
「ビスキュート……ダミアン……」
僕ちゃんは新居のベッドでマドレーヌを抱きしめて、何年かぶりに涙を流した。
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