第266話 供養

「ゲロォッ!!」


 バクンッ!!


『おっとぉっ!』


 泰十郎たいじゅうろうはネル・フィードを食べようと必死に追いかける。


「ゲロッ! ゲロッ!」


 バビョーンッ!


 バクンッ!!


『おわっ!』


 なんとか泰十郎の攻撃をかわすネル・フィードだが、凶暴ガエルの動きは想像以上に素早い!


「ヒャッハー☆ いけいけぇっ! 喰い殺せぇー!」


 ギュアアッッ!!


 シュルルルルッ!!


 バチィッ!!


 ネル・フィードは少しかわいそうな気もしたが、暗黒のむちを泰十郎にお見舞いすることにした。


 ギュアアッッ!!


 シュルルルッ!!


夜想爆裂衝ノクターン・バーストッ!!』


 シュオオオオオオッ!!


 バチィィィィンッ!!

 




 ヌルンッ!!





『んなっ!?』


 ネル・フィードの鞭は、泰十郎にダメージを与えることなく、体の表面を滑ったに過ぎなかった。


「ゲーロ! ゲロゲロッ!」


 泰十郎の体は粘液と闇に包まれている為、やはりダークマターの攻撃にはめっぽう強かった。


『厄介過ぎる! 悪魔の力ッ!』


「ゲローッ!!」


 ベローンッ!!


 ぐるぐるぐるっ!!


『し、しまったッ!!』


 泰十郎は舌を伸ばし、ネル・フィードをぐるぐる巻きにして飲み込んだ!


 パクッ!! ごっくんっ!


「泰十郎、よくやったぞっ! そのまま胃液でぐっちょぐっちょのゲロにしちまえ! ヒャッハー☆」


「ゲーロッ! ゲーロッ!」


 










 泰十郎の胃の中。強力な胃液がネル・フィードを襲っていた。


 ジュウウウウッ!!


『困ったもんだ。無敵の強さを誇るはずのダークマターのこの俺が、こんなにも手こずる相手がミューバにいたとは。素晴らしい経験をしていると思うことにしようか……』


 ペタペタ ペチペチ


 ネル・フィードは胃壁を触り確認する。読者の方も、たぶん思ったはず。


『泰十郎、ネル・フィードを飲み込んだの失敗じゃない?』と。


 ネル・フィードは胃壁に体表面ほどの闇の力を感じなかった。ほぼノーガードに近い。胃液で溶かされる前に爆発的な攻撃をすれば、脱出と共に泰十郎を葬り去れる。


 時間はない。もって8秒。


『外では避けられる可能性もあったが、内側からならばモロに喰らわせられるからなッ!』


 ジュウウウウッ!! 


 ジュウウウウッ!


 




『弾けろ! 超光子爆裂波ガンマ・エクスプロージョンッ!』




 キュ──────ンッッ!!
















 ドドオオォォォォオオンッ!!





「ふごぎゃあッ!! ンゲロォォォオオッ!!」




 凶暴ガエル泰十郎は、体内の猛烈な爆発でこっぱみじんに吹き飛んだ。





 ボトボトボトッ!! ベチャッ!


 ブシュウゥゥウッ!!



 スタッ!


 ネル・フィード、無事に帰還。



『こう見えて私は、あまり無益な殺生はしたくないんですよ』


 泰十郎のぶち撒けられた内臓を、全身に浴びた小濱宗治は震えている。


「ぼ、僕の美しい泰十郎の、美しい臓物が、ぶち撒けられてさらに美しく輝いているよぉ♡」


 クチャ、クチャ


 そして、泰十郎の砕けた臓物を手に取り食べ始めた。


「ヒャッハー☆ うんめえっ!! うんめえよお! 泰十郎、新鮮だぜ!」


『殺生したら食すのが1番の供養。ありがとうございます』


「ぺっ! 嘘に決まってんだろ。こんな臭えもん食えっか!」


『あら、泰十郎さん、かわいそうに』


「おい! カッコつけ野郎ッ!」


『私のことですね?』


「あんたしかいねぇだろ。僕は今すごくいいことを思いついたんだよ」


『いいこと? なんですか?』


「あんたみたいなカッコつけ野郎はよぉ、幼気いたいけな少女を殺すことはできねぇよなぁ?」


『幼気な少女? まさかっ!?』


「ヒャッハー☆ そのまさかさ。さあ、おいで! 僕のかわいい可憐ッ!!」
















 コツ、コツ、コツ





 何者かが斜めの螺旋階段を降りてくる。

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