俺の初恋はキミだったのか
椿紅 颯
第1話『ギャルとの会話は苦労する』
俺はたった今、初恋を経験した。
中学の卒業式の真っ最中に初めて見た女子に。
物語に登場してくるような『清楚』という言葉がとても似合うような子だ。
式も終わり、告白をする勇気が無くとも、せめてどこの高校に行くかだけでも聞こうとした。だが、卒業式の恒例行事であっという間に時間は過ぎ、機会を逃してしまった。
俺はあの時チャンスを逃してしまった。
過去にあんな経験をした俺は、初恋の女子を未練がましく忘れられず、新たな恋を見つけられずにいた。
だが、せっかくの高校生活も始まり、季節は夏になってしまった。
そろそろ歩き始めないといけない。
「おっはよー!
「おはよ、
そんなことを考えてるとはつゆ知らず、背後から近寄ってくる一人の女子は、ハキハキと張りのある声で挨拶を飛ばしてきた。
それと相反するように
太志にとって馴染みのある声の主はいつものように並んで歩き始めた。
「えー? 太志がテンション低いだけだってー。あ、そうそう昨日連絡返してくれたから忘れてないと思うけど、今日の放課後はスイーツカフェ、わっすれないでよっ」
「はいはい、覚えてるよ。学校終わったらその足で行くんだよな」
「そうそうっ、よろたーん! ウェーイ!」
少女は軽いダッシュで崩れた前髪を左手小指で微調整しながら会話を進める。
昨日急な連絡に眠気を感じ、頭を振りながら返答したことに太志は後悔の色を浮かべていた。
こいつは
直球で言うと、典型的なギャル。こうして話している今も、時折理解不能な言語を話していることがあり、会話中は少々苦労する。
ただ、ネットなんかで見たようなギャルとはどことなく違う気がした。これがいわゆる白ギャルというやつなのだろうか。
「なあ、昨日ROINしてた時のフロリダって何? あの後30分ぐらい既読付かなかったけど」
「あ~、あれは、風呂に入ってくるから会話から離脱する、ってことだよー。って何その微妙そうな顔、何だかあたしが、あたおかって言ってるように見えるんだけど、悲しみが深い、てかそれ通り越して逆に笑って感じ」
「ごめん、後半の方マジでわからん」
「そ、ま? うける~」
早紀と会話をしていると、初恋のあの子の面影が頭を過る時がある。
あの子と比べるには似ても似つかない早紀を見ていると、恋しくなっているのかもしれない。とは言え、顔を見たのは一瞬だけ、色々と上方修正されていて明確に覚えてなく、卒業アルバムが届いた日には探し当てることはできなかった。
「あ、おっはー!」
早紀はクラスメイトの子に手を振りながら、笑顔で清々しく元気な挨拶を振り撒いている。
それに対して返ってくるのも嫌悪感一つない爽やかな挨拶。
これが日常的になっているのも不思議な感覚だ。
早紀と恋人同士かぁ。
一度や二度は考えたことがある。
今日もそうだが、何度も二人だけで食事に行ったり、買い物に行けば意識しない方が不自然だ。
今日の放課後辺りに彼氏が居るかどうかぐらいは聞いてみるか。
俺はギャルが苦手だ。会話をしたことはあるが、一言二言程度。それも、今と一緒で理解に苦しみ、まともな会話ではなかったことしか記憶に残っていない。
目の前に居る早紀もそのギャルに分類されるわけだが、肌は日焼けとは無縁な純白、髪も染めずのサラサラな黒髪、誰から見ても美人と言うだろう。そんな彼女とただの女友達で止まってしまうのは勿体ない。
俺の好みとは真逆ではあるが、過去を拭い去り新たな一歩を踏み出すには丁度良い機会なのかもしれない。
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