第四章 興味があるの

第23話 こころのおくに

――自問自答を重ねる、誰かのこころ――



 その日、懐かしい夢を見た。



 それほど遠くない記憶。


 ある日を境に、その夢は毎夜現れた。


 もういいって。さんざん見たよ、それは。



 もう飽きた。



 いつだって、そんな思いに駆られて目を覚ました。


 その夢を見たあとの朝は、例え雲ひとつない青空だったとしても、やけに窓の外の景色が薄暗く思えた。


 今はもうそんな夢は見ていない。もう、過ぎたことだ。


 あの頃の夢はもう見ないと思っていたのに。


 今になって何故だろう。


 夢の中で、あの人の背中に向かってこう問い掛けていた。



 興味がある。



 あの人は笑いを堪えていたが、すぐに噴き出した。


 なんだ、そんなのに興味があるのか。そんなの知らなくていいことだよ。どうせ、つまらないことだよ。



 なんで? 教えてよ。



 でも、あの人からの答えは返ってこなかった。


 もう永遠に返ってくることはない。


 どうしようもなく、つまらなく、腹立たしく、でも懐かしくて、あたたかい。


 こころの奥深くに眠る。



 そんな夢をまた見るなんて。




 第四章「興味があるの」開始――



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