第26話 殲滅 天使の軍勢(1/3)

 俺たちは、このみっつ目の部屋を出て、広間に戻る。回復のため、皆休憩が必要だ。

この広間は、ただ扉が並ぶ円形の空間だけだった。ある意味一番安全とも言える。


 残る再調査が必要な部屋は、ふたつだ。


 一つ目の何もなかった階層主部屋とふたつ目の召喚の門がある部屋だ。

みっつ目は、カマエルが降臨してきたし、よっつ目は最奥の隠し部屋に痕跡があった。


 そうなると、召喚の門のある部屋に何かあるか、もう一度調べた方が良さそうだ。

俺は、エルとリリーに行く旨を伝えるとすぐに同意してくれた。

 

 ただ、今からの連戦の場合は厳しい。

なので、何もない場所ではある物の一日分は休むことにした。


 エルとリリーはさっそく眠りについた。

 ある意味、一番安全とも言える。ここまでたどり受ける者はいないからだ。 


「俺も寝るか……」


 床に横になり、皆それぞれ思い思いに眠りについた。


ーー翌日。


 恐らくは、翌日と考えておこう。疲れはスッキリ取れた感じだ。

 エルとリリーは種族が異なるのか、あえて寝ることで英気を養えた様子だ。


「二人とも大丈夫か?」


「ええ。もうすっかり大丈夫よ」


「私も大丈夫だぞ!」


 問題ないことがわかり、あの召喚の門があった部屋に向かう……。


「とくに変化はないな……」


「そうね。この門は”まだ生きている”ことがわかるぐらいね」


「門以外には、変なところがないぞ!」


 何か懐かしい匂いがする。あの門から漂うのは、どこの匂いか思い出せない。


「繋がっているわ……。すでに」


「どういうことだ?」


「レン、おそらくあなたのいた世界よ。悪魔側の」


 そうか、思い出した。たしか、神族の管理領域にあった場所だ。

名前は、天使の楽園。別名は、殺戮の宴だ。小さな天使がイナゴの群れのように襲いかかり、骨しか残らない。


 そんな凶悪な場所の匂いだ。


 まさか、あの場所にいる奴らが集団できたら、面での攻撃以外は拡散してしまう。

俺は急ぎ、リリーとエルにこのことを伝えた。点ではなく面での攻撃だと。


「レン任せてくれ! 私にも面での攻撃があるぞ!」


「どんなのがあるんだ?」


「説明より見せた方が早そうだな!」


 得意げにリリーの放つ物は、投網のような物だ。しかもあの網で切り裂くようだ。


「結構切れ味がいいな。範囲はどの程度広げられるんだ?」


「多分な、この場所ならすべて覆えるぞ!」


「規模がすごいな。もし大量にきたら任せるなリリー」


「ああ。任されたぞ!レン」


 意気揚々として自信たっぷりだ。一方エルは手数も面攻撃も多様にある。彼女は大丈夫だろう。


 事前準備はできている。あとは敵がきたら順次対処すればいい。

そう思っていたら現れたのは、予想をはるかに超えていた。


「おいおい、大群なんてものじゃねーぞ」


「リリー。エル頼む!」


「フェアリースクリーン! フェアリースクリーン! フェアリースクリーン!」


 リリーのネットが連続して、一部を捕まえ切り裂きはする物の数が多すぎる。


「執行者の炎! インフェルノ!」


 エルの炎が広範囲に焼き払う。ただし湧き出る方が圧倒的に多い。


 俺はあの門自体を破壊すべく、行動を開始した。


「ダークボルト!」


 黒い雷は地面を削りながら、門に直撃をする。ところが破損したのは表面だけだ。

ある意味、芯はびくともしない。さすがに世界の遺物と言われるだけある。


 この程度の損傷なら、攻撃は無意味と知る。


 俺は、リリーとエルと同様に、攻勢に移りたい気持ちだ。

残念ながら単騎への攻撃なら、俺は得意としていても複数には、向かない。

歯痒いところではある物の仕方ない。


 リリーとエルの攻撃が功を奏してか、思った以上に数が減り出した。

恐らくは向こう側の供給が追いつかないのであろう。

問題はまだ、終わらないことだ。今のが第一弾だとすると第二弾と続くのは明白だ。


 やれるだけやってみるかと俺は、門の召喚出口中央から、向こう側に届かせるつもりで放つ。


「ダークボルト!」


 威力を高めたせいか、周りを吹き飛ばしながら召喚エネルギーの集まる渦に飲み込まれていく。

するとここにいる天使たちは途端に落下して痙攣をはじめた。


 どうやら、術者にダークボルトがうまいこと、届いたのかもしれない。


 制御から離れた場合の動きに、よく似ている。

 しかもここは異界、自らの体を維持することは、できなくなるだろう。


「レン! 一体……?」


 リリーが驚いている間にも現在進行形で、天使たちが溶け出す。ある意味かなりグロい絵面だ。


「ああ。術者がやられて、供給源が絶たれたんだろうな……」


 その時だ、別の気配が門から現れてきた。


「レン、何かくるわ!」


「チッ。もう次か、奴ら切り返しが早いな……」


 エネルギーの渦から姿を出してきた奴には、思わずニヤついてしまう。

どうやら見知った奴だ。俺がよくしる奴じゃないかと思った。


 なぜなら、俺たち悪魔がよく行う殲滅戦用の兵器だからだ。

恐らくは数は、尋常でないはずだ。それなのになぜか愉快な気持ちになる。


「リリー、エル! 広範囲殲滅戦用の古代兵器だ。広範囲で攻撃できる奴を頼む」


「レン! わかったわ!」


「任せてくれ! もう一つの大きい奴をやるぞ!」


 リリーが今度は何をしでかすのか、どこか俺も楽しみだ。


「フェアリーロウカスト!」


 すると白色の粒状の物が一斉に集団で舞う。アレは妖精版のイナゴの大群と同じ様子だ。


「来るぞ!」


 俺は入り口から現れるやつらの末路を早々に予測してしまった。

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