Fantasista

絵食いフミや

旅立ちへ(1)

 不思議な夢を見たんだ。目が覚めると僕を囲うように並べられた扉があった、その数は全部で8つ。それぞれが違う色や模様をしていたから興味がないのにドアノブに緊張するように震える手に力を入れてドアを引いた。


 開けてみると中は真っ暗闇でなんも景色がない。奥に目を凝らすと小さな穴から光が漏れているのを確認できる。これは一体なんだろうか?


 疑問に思いつつも僕はその光を目指して歩く。滴る水滴も、コウモリもいないただの真っ暗闇。でも光に近づくたびに心が重くなるのはなんでだろうか…幻聴だ。


 また幻聴が聞こえるよ。どうして生きているの?お前は死ぬべき存在だ


 いつもいつも光に近づくたびに僕はその幻聴に悩まされている。まるで僕を殺そうとしている言動だ。何で怒っているのかも何が許せないのかもわからないまま僕はまた夢に落ちた。


「思っていたより症状が酷くなっているね。大丈夫かい?」

「誰?知らない緑の人だ」

「みどりの人か、じゃあ私のことはミドリと呼んでもらいたい。君は何かから逃げようとしてる、わかるかい?」


 全身を古代の葉で衣服を作ったであろうの小さな老人は僕に語り掛けてきた。何から逃げている、逃げている、恐怖だ。誰かもわからない誰かに死ぬように促す言葉を毎日浴びていることを老人に伝えると彼は笑ってくれた。


「君はねこれから死ぬんだ、でもいろんな世界を自分の眼で確かめてそれからどうすればいいかを考えればいいさ。君は1人じゃないよ」

「それってどういう――意味…」


 理由もわからずに僕は意識を失った。失う寸前に僕の右腕に何かを注射するような素振りを見せたが何を入れたのかはわからなかった。しばらく夢から覚めると暖かい春が芽吹く季節の風に頬を撫でられて僕は目覚めた。視線の先には青空と緑の稲穂に似た雑草だろうか、上体を起こすとだだっ広い丘と草原が広がっていた。

 背後に気配を感じ取り振り向くと機械の鎧を纏っているが、部分的に機械が組み込まれていている女性、いや女の子が心配そうな顔をしていている。

「ナイド、そろそろおやつの時間ですよ。一緒に食べましょ?」

「・・・・・・・・・・・」

「ナイド?どうしたの、私の顔に何かついている?」


 瑠璃色のダイヤモンドみたいな瞳を装備している姫らしき女の子は、僕をじっと見ていた。どこかで会ったかどうかわからないが、思い出せない。肝心の記憶が電波障害が掛かっていて思い出せないんだ。そうしてるうちに姫様がこちらに近づいてキスになりかけた時――


「おい!姫様の名前まで忘れたのか?それとも俺との稽古で頭でも打ったか?」

「フーエイったら。また頭を強く打つなと言っているのにナイドが記憶喪失になってしまったのですよ!」


 姫様らしき者を超えた視線の先には両腕が機械化されており、手の機械が装備されているが先が鋭いものを隠していそうな翡翠色の眼を持っている。僕は大してではないが藍色の宝石の瞳を持っているのに対して彼の名前が思い出せない。


「やべ、頭の打ちどころが悪かったのか?ナイド俺のことがわかるか?」

「わかる、ちょっとボーっとしていただけ。ラズリにからかって悪かったよ」

「よかった、ナイドが戻らないかと思うと心配したんだからね」


 年齢的に見れば姫様らしき人物はラズリで僕より2つ下のお姫様。フーエイは若く成人して幼さが若干残るがこれでも22歳。右腕を剣に左手を盾に変えられる能力を持っている。そんな僕は14歳で格闘を基本として戦っているが技については未だに未完成だ,ラズリ様は12でこの閉鎖された箱庭クロノガーデンを治める王女であった。僕らのいる世界は閉鎖された箱庭クロノガーデンで僕とフーエイ、姫様が自由に暮らしている。どうしてこの箱庭が作られたのかはわからないが大きな城の地下に箱庭についての歴史があるものの誕生に関してはページが何者かに破り捨てられて先が読めなくなっていた。


 でもそんなことは関係ない今日も僕とフーエイ、ラズリ様とともに普通のことを楽しんで笑ったり談笑したりしてを過ごすのが一番楽しいんだ。この何気ない日常がずっとずっと続いていくことが僕にとっての幸せ、これが幸せ…なんだろうか?


 3人が暮らすにはもったいないほど大きなお城のバルコニーでお茶菓子を楽しむ。3人だけではないが数人の守護騎士ガーディアンが警備をしている、そういうお城に住んでいた。休憩時間も終わり訓練に戻るときに剣を研磨するための砥石を持ってきてくれないかとフーエイに頼まれ僕は地下の物置に1人で行くことになった。



「確か砥石はこの辺にあったはずなんだけど――」

 無造作に積まれた荷物から取ろうとして背伸びをした瞬間、こちら側に崩れてしまいナイドもドシャ―ンと凄い衝撃が物置に響き渡る。上体を起こして立とうとした時、見慣れない白いチョークで描かれただろうの魔法陣が描かれた扉を発見した。恐怖は無くただの好奇心でその扉に力を込めながら扉を押し開けていくと、開けた場所にまたしても白いチョークで描かれた魔法陣が石畳に大きく存在していた。それはまるで何かの儀式に使われていた形跡があるかのようであった、ナイドは部屋に入るなり物色するも大したものは見つからず後にしようとしたが壁に埋め込まれているだろうか?そのプリズムで出来ている小さな鍵のようなものを手にした。


「その鍵は使ってはいけない、こちらに渡せ」

 振り返ると黒いフードを被った人物がプリズムの鍵をこちらに渡せと要求してきた。目的も正体もわからないがただ1つわかることはフードの手先からチラつくのは僕らと同じような機械化された武器を装備していたことが判明した。


「目的はなんだ?!名前を名乗れ!!」

「そういうのは自分から名乗るべきであろう?」

「見ず知らずの相手に易々と名前なんて言えるか!」

 拳を握り戦闘態勢に入る僕を余所目に相手は何もしてこないので僕は懐に入り込みアッパーカットを繰り出した…が、消えた――見渡すとまた背後を取られていた。


「ふむふむ、君の身体能力は下の中。伸びしろはありそうだね」

「何を!言って!るんだ!」

 やみくもに戦うも振るう拳は届かずただただ無意味な時間だけが過ぎていった。フードを被った男か女か分からぬ者は何かの能力を見定めたと思いきや首元をチョンと叩かれ意識を失った。アイツは何者なんだ、何を確かめに来たのかわからないまま深い深い意識の奥底に誘われた。目が覚めた頃には心配している2人の姿であった、砥石を取りに行ったきり戻っていないことでラズリは涙が溢れそうな表情をしていた。


なにが起こったのかわからないがとにかく無事だったのが何よりだろうか――





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