第28話 告白。
茜さんの家は学校から歩いて五分の距離にあった。
初めて来るけどめっちゃ豪邸だった。近所の家も豪邸だらけ。亡くなった両親はそれぞれ違う会社の社長だったらしい。
茜さん姉妹は社長令嬢だった。現在は両親の会社とは関係のない中小企業の事務で働いていると茜さん本人から聞いた。両親の会社は親族が引き継いで経営しているらしい。
茜さんは働かなくてもお金には困らないらしい。だけど、働いた後に飲むビールが美味しいから働いているとか。すごいね。
ちなみに司の家も教えてもらったけど、すんごい豪邸だった。しかも司には専属の秘書兼家政婦がいるんだとか。
おいおい、マジで何処かの主人公じゃないか。と、思ってしまった。平凡な家庭育ちの俺とは大違い。
茜さんの家に着いて車から降り玄関へ。中に入ると立花さんが二階の階段から降りてきて玄関に来た。
立花さんは俺を見て驚いていた。そりゃ驚くよね。自分の姉と一緒に帰って来たのが同級生なんだから。
茜さんは妹の立花さんに連絡はしていた。俺の名前は言わず一緒にいる男性と帰ると。
目の前でパニックになっている立花さん。頭の中はハテナだらけになっているだろう。
「ふ、ふ、ふ、二人は、こ、こ、恋人なの⁉︎」
立花さんの第一声。それを聞いた茜さんはクスッと笑って、
「しーちゃんとは只の友達だよ。昨日の体育祭で転んで、トイレでこっそり泣いてから出てきたしーちゃんと偶然会ってね。可哀想だったからデートしてあげたの」
「いや、全然泣いてないし」
「あはっ。沙織の前だからって強がって〜。しーちゃん可愛い」
と、茜さんは俺を揶揄って楽しんでいた。そのあと何故か立花さんに何度も何度も二人は恋人じゃないのかと確認された。
その都度俺は全力で否定した。それを見て茜さんはクスクスと笑っていた。
立花さんの誤解が解け、家に上がりリビングへ案内された俺はソファーに座った。二人はキッチンへ行き夕飯の準備をするとの事。
一人になりリビングを見渡す。う〜ん、無駄に広い。落ち着かない。こんな豪邸に二人で住んでいるのか……。
落ち着かないので腕を組み目を閉じた。さて、どうしよう。夕飯を食べる時、何の会話をすれば良いのやら。
まぁ、茜さんがなんとかしてくれるだろう……。
「……君……橋野君」
俺を呼ぶ声がする。目を開けると目の前に立花さんがいた。どうやら眠てしまったようだ。
「あ、ごめん。いつのまにか寝てた」
「気持ちよく寝てましたね。夕ご飯出来ましたよ。キッチンに行きましょ」
立花さんに案内されキッチンへ。予想通りと言うのかキッチンも無駄に広かった。
キッチンのそばにある四人テーブルに料理があった。カレーライスとサラダにスープだ。
俺は二人に促され手を洗い席に座る。正面に立花さんと茜さん姉妹が座っている。
改めて思う。立花姉妹はすっごい美人だ。二人と知り合い一緒にご飯を食べる仲って奇跡なのでは? と思ってしまう。
そんな事を考えながらカレーライスを食べる。うまい。美味すぎる。カレーには角切り牛肉がゴロゴロと入っている。牛肉を口に入れると肉の旨味が口全体に広がる。俺の家のカレーライスとは全然違う。
食事中は楽しい雑談をした。もうすぐ林間学校があるとか、夏休みの花火大会や、夏休み明けてから開催される学校の文化祭の話など、いろいろな話をした。
◇◆◇
楽しい食事はあっという間に終わった。それからの後片付けもひと通り終わり、あとは帰るだけになった。時刻は午後六時。今から帰ると家には七時頃には着きそうだ。
食後のコーヒーを三人で飲む。正面に座っている立花さんが俺をチラチラと見ている。雰囲気的に何か言いたい事がありそうだ。
「ほら、沙織。今しかないよ」
「う、うん」
「私は席を外した方がいい?」
「大丈夫。お姉ちゃんもここにいて」
隣に座っている姉の茜さんから俺に視線を移す立花さん。その瞳からは決意みたいなものを感じる。
「橋野君。私から橋野君に大事な話があります」
真剣な顔で立花さんが俺を見る。俺に大事な話? なんだろう?
「俺に大事な話? 何?」
「はい。今言うべき事ではないのかも知れないけど、今言わないと一生後悔しそうなんです」
「今言わないと一生後悔する? えっと、何かな?」
俺が尋ねると立花さんは深呼吸をした。
「私、立花沙織は橋野真一君の事が好きです。私と付き合って下さい。お願いします」
言い終わった直後に立花さんは頭を下げた。
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