SNSを使って異世界で成り上がる!~異世界SNS活用法~

内海

1.異世界に来たけどここどこよ

 俺は不幸かもしれない。

 中学生の時に事故で両親を亡くし、親戚の家でお世話になっている。

 正直な話し、あまり良い親戚じゃないけど文句は言えない。

 どれだけつらく当たられても、身寄りのない俺を育ててくれているのだから。

 でも出来れば飯は三食満足に食いたい。


「ふぅ、日付をまたいだか。もう少し頑張るかな」


 部屋の電気は消してあり、机に置かれたスタンドの灯りだけで勉強している。

 私立大学で奨学金が良い所があったから、何としてもそこに合格するんだ!

 ……そこ以外は叔父さんと叔母さんを説得できなかったんだけど。

 まぁいいさ! なんのために必死に勉強してきたと思ってるんだ! お陰で高校の成績はバッチリ、学年で一位か二位をキープしているし、問題はないはずだ。


「ん……なんでこんなに眠いんだ……仕方がない、十分じゅっぷんだけ仮眠を取ろう」


 俺はスマホのタイマーを十分後にセットし、机にうつ伏せになった。

 十分が過ぎてアラームが鳴り間を覚ます。

 あれ、スマホはどこだ……? ああ、あったあったここか。

 机に置いてあったスマホのアラームを止めようとするが、どうやら俺は床で寝てしまった様で、体を起こしてスマホを手に取る。


「あれ? スマホが床に落ちてたのか? 絨毯の上に……え? 土?? って、ここどこよ!?」


 周囲を見ると木に囲まれており、俺の周囲十メートルほどが丸く地面が焼けていた。

 立ち上がって見回すと、どうやら森の中に居るようだ。


「……夢かな? いや待てよ、叔父さん達が俺を捨てたのかも! くそ! まさかここまで嫌われているとは思わなかった! スマホの地図アプリで現在位置を……えーっと、ん? 圏外? 山奥過ぎて電波来てねーじゃん!」


 スマホを地面に投げ捨て、不貞腐れて地面に座る。

 あ~マジか、俺ってそんなに邪魔だったのかよ……叔父さんと叔母さんの前ではお行儀よくしてたのに、どこでこんなに嫌われたんだよ……最初からか。


「そりゃそーだよな、ほとんどあった事の無い親戚を預かるなんて、その時点で面倒だよな」


 地面に大の字で寝転ぶと、太陽が目に入る。

 まぶしい、もう昼近くなのか? そういえば今は何時だろう。

 スマホを探すと少し離れた所に落ちていた。


 一応は電波の届く所まで行けば助けを呼べるし、今の生命線ともいえる。

 投げ捨てちまったけど、壊れてないか?

 拾おうと手を伸ばすと電話が鳴った。


「うお!? 電波が届いたのか!?」


 急いで拾い上げると、画面には変な文字が表示されていた。

 ――世界の管理者――

 は? 誰だよそれ、そんな名前で登録したヤツなんていないぞ?

 しかし今は誰でもいいから助けを呼びたい、わらにもすがる思いで電話に出ると、男の電子音声が聞えて来る。


「もしも――」

『やあ、細かいことはアプリに従ってくれ。知らない世界に来たばかりで悪いが、急がないと君の身が危険だ。それでは』


 ツーツー。

 ……え? これなに? 何いってんのこいつ。

 通話の切れたスマホを眺め、俺は警察に助けを呼ぼうとする……のだが、圏外になっていた。


「なんで!? たった今電話してたじゃん! おい電波仕事しろよ!」


 電波を探してスマホをあちこちに向けるが、やはり圏外のままだ。

 どういう事だよ、結構な音声で声が聞えたんだから、電波が来てたんじゃないのか?

 スマホの画面を見ると、知らないアイコンが増えていた。

 

 何だこれ? 『異世界の手引き』? 知らないぞこんなの。

 ふとさっきの声が蘇る。

 『細かいことはアプリに従ってくれ』『知らない世界に来たばかり』『君の身が危ない』だったっけ?


 ……ひょっとして本当にヤバイ状況?

 慌ててアイコンをタップすると、使用許諾書がズラズラと表示される。


「こういうのはいいから! 早く本題に入れよ!」

 

 『同意する』にチェックを入れ、俺は画面に食いつく様に読み始める。


「えーっと、この世界は君が生まれ育った世界とは違う世界だ」


 この世界は『アローヘッド』。君たちの世界でいう剣と魔法のファンタジーの世界だ。

 君は元の世界に不満があったようだから、私の実験に付き合ってもらうために召喚した。

 難しい事は無い、この世界で生き抜いて見せてくれ。

 

 しかし君の能力でこの世界を生き抜くには厳しいものがある。

 なので手助けになる様に、いくつかの力をこのスマートフォンに入れておいた。

 それを活用し、見事私の実験のかてとなってくれ。


 ここで文章は終わっていた。

 実験? なんで実験に付き合わされなきゃならないんだ!?


「おい! 何ふざけたこと言ったんだよお前は! な、なんで俺が……こんな……こんな……」


 ガクリと座り込むが、今はそんな事をしてる場合じゃない。

 スマホを見ると知らないアイコンが増えていた。


「ん? これってツブヤイッターじゃないのか? こっちは通販サイトのアイコンだ」


 ツブヤイッターのアイコンをタップすると、俺のアカウントが表示される。

 うん、これは俺のだな。

 少し前に動物園に行ったときに撮った黒ヒョウがアイコンになってる。

 えーっと、何か書きこんで見るか……っていっても何書こう。


「こんな事真面目にはかけないからな……異世界なう、っと」


 投稿をタップし、直ぐに俺の書き込みが表示される。

 はぁ、こんな事で助けが来るはずもないだろうけど、気休めにはなるかな。


 ポンっとスマホから音が出る。

 画面を見ると知り合いが俺の書き込みを見たらしく、返信が来ていた。


耕二こうじ? おい耕二なのか! お前どこにいるんだよ!!』

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