チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【27】ジェシカだ……【なずみのホラー便 第114弾】

なずみ智子

ジェシカだ……

※注意※ この問題には猟奇的な表現が含まれています。


【問題】


 デイジーは愛する夫、ひとり娘のポピー、そして夫の姪のジェシカと暮らしていました。

 ポピーとジェシカは同い年の17歳、その外見もまるで姉妹のごとく似ていて、とても仲良しでした。

 デイジーも夫も、彼女たち2人を分け隔てなく可愛がっていました。

 ある夜、友人の家で開かれたパーティーに連れだって出かけたポピーとジェシカは、その帰り道で行方不明になってしまいました。

 彼女たちの無事な帰宅を祈り続けるデイジーと夫の元に、小包が届けられました。

 その中に入っていたのは、切断された人間の遺体の一部でした。

 それを見た夫は「ジェシカだ……」と呻きました。

 夫の言う通り、鑑識の結果、それはジェシカの遺体の一部であると判明しました。

 それから数日後、警察によって監禁されていたポピーは救出され、ジェシカの遺体の残り部分も発見されました。

 その後、デイジーは夫と離婚しました。

 夫がどれだけ懇願しようと、デイジーは夫を二度と娘に会わせるつもりはありませんでした。

 さて、デイジーはなぜ夫と離婚したのでしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : ……猟奇的な事件ですね。これは、デイジーさんの夫こそがこの事件の犯人だったんですよね?。姪を殺害、その遺体を切断するという猟奇的な犯行に及んでも、さすがに自分の娘だけは殺せなかったと……


チエコ先生 : NO。夫は事件の犯人じゃない。


キクちゃん : そうなると、彼女たちがこんな事件に巻き込まれてしまった原因は夫にあったということをデイジーさんは知ってしまった? 夫はどこかで恨みを買っていたんでしょうか?


チエコ先生 : NO。犯人は夫にもデイジーにもポピーにもジェシカにも面識はなかった。通りすがりのサイコパス男の犯行よ。獲物となる若くて可愛い娘を探して車で徘徊していたら、たまたま一気に2人も手に入れられてラッキーと思ったらしいわ。警察の救出があと少し遅ければ、ポピーも間違いなく殺害されていたでしょうね。


キクちゃん : ……あ、分かりました。ポピーさんの方は命は助かりましたが、心には深い傷が残っています。残っていないはずがありません。よって、彼女は自分の父親であっても、男性が怖くなってしまい……デイジーさんはポピーさんの心を守るためにも離婚という苦渋の選択をするしかなかったんでしょうか?


チエコ先生 : NO。それも”厳密に言うと”違うわ。


キクちゃん : だとすると、どうしてだろう? うーん、うーん……


チエコ先生 : キクちゃん、バラバラにされた遺体の身元が”一目で分かる”部位ってどこだと思う?


キクちゃん : うぅ……それはやっぱり、顔というか頭部ですよ。


チエコ先生 : 届いた小包に入っていたのがジェシカの頭部なら、夫だけでなくデイジーも一目でジェシカだと分かったはずよ。いくら、ポピーとジェシカが姉妹のように似ているとはいっても、瓜二つというわけではないから間違えはしないわ。母親なら、なおさらね……小包に入っていたのはね、切り取られた片方の乳房だったの。


キクちゃん : ……私、もう吐いてしまいそうです。でも、そうなると、なぜ夫は一目で姪のジェシカさんの乳房だと分かったんでしょうか? 普通は分からなくないですか? ……あ! 夫は届けられた乳房を見て「ジェシカだ……」と一目で分かるほどに性的関係を結んでいたというか、彼女に対して日常的な性的虐待を行っていたんですね?


チエコ先生 : YES。正解よ。家の中にも、ケダモノはいたのよ。


キクちゃん : 自分の娘と同い年の少女に手を出すなんて気持ち悪い……というか、その少女が自分の姪だったのも余計に気持ち悪いです。さらに、その姪の外見が自分の娘によく似ていたのも何もかもが気持ち悪いし、これはもう絶対に許せる余地など微塵もありませんね。


チエコ先生 : そうね。私がもしデイジーの立場であっても、彼女と同じ選択をしていたと思うわ。


(完)

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