第7話

〈伊織視点〉








あの失礼男に会ってから1ヶ月が過ぎ

やるせない日々は続いていて止まる事はない…

サロンには開店前にミーティングがある

当日のご予約の状況説明をして

何をプッシュするのかの話合いが行われるのだ



 

例えば全身10回コースを契約すると

一回でドーンと売り上げも上がるが

次回からはお会計0円になってしまう…

それではダメだからサイドメニューをつけたり

化粧品などの物販を進めたり

チケット回数が残り少なければ追加契約を

進めるなどをして0円で帰らせない為の

ミーティングがあるが、私はコレが苦手だった…




そして…この日…やるせなさは更に募った…

皆んなそれぞれ顧客はいるし

その顧客の中には親しくなってエステティシャンと

お客様という垣根を越えた仲になる人もいる…

私にも何人かいて、その一人が

今日の来店に入っていたのだ…





社「もう一度10回コース契約させろ」





「・・・え!?」





社「あと2回だろ?背中の産毛がまだ少しあります

  とか何とか言って契約させろよ?」





「・・・でも、このお客様は結婚を控えていて

  これ以上の契約は厳しいかと…」




社「誰が言ったんだ?お客様か?

 勝手にそう決めつけているんじゃないのか?」

 




「・・・・・・」





社「契約取れなければ副店長にセット購入して

  もらわないと店もやばいぞ?」





山「・・・・はい…」





「・・・・・・・」







【お客様の財布の中身を勝手に決めるのは失礼よ】



入社したばかりの時に

当時の店長から言われた言葉だ…


高いか安いか判断するは

お客様で私達が勝手に判断してはいけない…


分かっているけど辛い…






山「・・・・昔聞いた事があります…

  エステと保険屋は友達を無くすって…」




「・・・・楽しい時もあるんだけどね…」






お客様から感謝をされたり


「スタッフさんを信じてやってみて良かったです」


こんな言葉をかけられた時は

この仕事をやってて良かったと心から感じるのに…





山「移転してから辛いです…」





私も山下と同じ意見だった…

社長の移転計画はあまりにも無謀でちゃをとした

計画もなく、商売繁盛どころか

もしかしたら潰れてしまうかもしれない…





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