第47話
「素晴らしい! やはり日本の女性は丁寧だ。清楚! 優美! 優雅!」
「そうでしょ、パパ! わたしの言った通りだったでしょう! コハルは丁寧な子だって!」
所長の言葉に、コーヒーを並べていたジェニファーが同意する。何の事か分からず、固まっていると、疲れた様子の楓さんが説明してくれる。
「小春。こちらはこのロング法律事務所の所長だ」
「初めまして、所長のデイビッド・ロングだ。主に労働問題に関する裁判を担当している。ついでにここにいるジェニファーの父親だ」
所長が片手を差し出してきたので、私も手を握り返す。力強く、皮の硬い大きな手から、温かい熱を感じた。
「よろしくお願いします」
そう言われて顔をじっくり見てみると、顔形がジェニファーに似通っていた。
「ニューヨークはどうだい? 毎日が賑やかだろう」
「はい。とても陽気で、活気に溢れています」
「そうだろう。そうだろう。日本とは大違いだ」
「日本をご存知なんですか?」
「大学院の頃に日本に留学したんだ。そこで楓の父親と知り合って、今じゃ家族ぐるみの付き合いさ」
「パパはね。毎年夏になると、カエデのお祖父さんに会いに行っていたの。わたしも一緒よ。カエデのお祖父さん、有名な裁判官だったから」
「そうなんですね……」
私の知らない楓さんの家族の話を聞いて、なんとも言えない気持ちになる。
やっぱり、私と楓さんの間にはまだまだ距離があるらしい。
「私とパパが日本語を話せるのはそういう事なの。と言っても、わたしはパパと違って、平仮名と片仮名くらいしか読めなくて、漢字は少ししか読めないけどね」
「ジェニファーも日本映画を観て勉強すれば良いんだ。日本映画は素晴らしいぞ。特にサムライやニンジャが出る作品は最高だ!」
「あら、私は日本のアニメや漫画で勉強しているのよ。最近は通販で日本の漢字ドリルだって買ったんだから!」
言い争う親子に苦笑していると、楓さんは慣れているのか、そっとコーヒーに口をつけていた。私もソファーに座ると、ジェニファーが持って来てくれた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます