プレシア勇者譚〜勇者隊、初陣〜【カクヨムコン7短編賞応募作品】

カイ艦長

第1話 シグリズ:宝具授与

 六人で謁見えっけんの間に戻るとすでに国王陛下の姿はなく、全身よろいに青いマントをつけた軍師と六人の侍従じじゅうだけが待ち構えていた。


「顔合わせを終えてまいりました、軍師様」


 ナジャフの礼に俺たち五人が合わせた。


「急な決定で皆も戸惑っているだろうが、職責はしっかりとまっとうしてもらいたい」


 その言葉に顔と気持ちが引き締まる。


「少数精鋭で魔物の残党を討伐する〈勇者隊〉にはこれから数多くの困難な戦いが待ち受けているだろう。そこで皆に適した宝具を授けよう」


 王国軍師は侍従じじゅうに宝具を持ってこさせた。


「これはレフォアに。〈風鳴かざなり〉というめいを付けた魔法の双剣だ」


 男性の正装を着た金髪の女性が進み出て、王国軍師から双剣を受け取る。


「風を切ることで切断突貫能力が高まる魔法を付与ふよしてある。剣舞けんぶの達人であるそなたなら使いこなせる剣だろう」


 次に身の丈は二メートルほどもあり筋骨隆々の男が歩み出る。

「〈渾身の腕輪〉はグラーフに」

 グラーフは受け取ると、それを奇妙に眺めていた。

「右手に付けると集中力が増し、左手に付けると疲れが癒される魔法がかけてある。高い集中力を必要とする秘技〈両断〉を用いるそなたの助けになるはずだ」


 神官服を着た女性が呼ばれた。

「エイシャには〈神の聖印〉を授けよう。神界の金属であるオリハルコン金を用いたもので、奇蹟きせきの効果を数倍に高めてくれるだろう」


「〈マナの首飾り〉はカセリアに。万物の根源たるマナの泉に通じており、魔法をより多く唱えられるだろう」

 黒いローブをまとった青年然とした男性が受け取ると、ナジャフの名が挙がる。


「〈収納の指輪〉はナジャフに。異空間につながっており、さまざまな物をそこに置いておくことができて、いつでもそこから取り出せる。巻物や薬、冒険で手に入れたアイテムなどを保管しておくのに役立つだろう。無論大きさに限度はあるがな」


 王国軍師が長剣を手にとった。

「この長剣には〈封魔ふうまの剣〉というめいを付けた。片方の刃にはミスリル銀に魔法を施し、もう一方は鋼の刃にしてある。この剣はトルーズに」


 長剣を受け取り、その場でさやからわずかに抜いてみると片刃だけがほのかに青白く輝いていた。


 軍師は光っていないほうの刃を指す。


「こちらにある鋼の刃には魔法を吸収する性質がある。敵が放つ魔法をよけずに剣を振るうことができるだろう」

「魔法を吸収……ですか?」

「そして、吸収した魔法を上乗せして相手に叩きつけることもできる。他にもさまざまな使い方ができる剣だ。そなたの成長とともに真価を発揮できればよかろう」


 軍師は俺たちを見渡す。


「これで皆にアイテムが行き渡ったな」


 その言葉に俺たちは静かにうなずいた。


「さっそくで悪いが、最初の任務だ。今すぐって魔物を壊滅かいめつしてもらいたい」


「軍師様、敵はわかっているのですか?」

 ナジャフが問うた。


「首領はシグリズだ。この地図に従えば目的地へたどり着けよう」

「シグリズというと中級のアンデッド・モンスターでございますね。中級といえど通常の魔物では上級に相当しますから、用心してかからねばなりません」


 ただちに軍師から地図を受け取った。

「任務、承りました」



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