【呪い】のせいで無能と思われていた俺は、勇者パーティー追放された。~【呪い】の制約で仕方なくお前らと同じタイミングで敵を倒しては、お前らを回復させていたのだが……俺がいなくなってホントに大丈夫か!?~

青空あかな

「第一章:別れと出会い編」

第1話:勇者パーティー追放宣言

「おい、アスカ・サザーランド!お前は今日で、このパーティーをクビだ!でかいだけのゴミクズ野郎が!とっとと出ていけ!」


ここはレンブルク王国の、とある冒険者ギルドの酒場だ。そこで俺は今、なぜかパーティーメンバーに罵倒されている。


「てめえ、聞いてんのか!荷物を持つことしかできない無能は、今すぐ消えろと言っているんだ!戦闘中何もしないで、ボーっと突っ立てるだけのデカブツが!」


目の前で叫んでいる金髪の男は、リーダーで<勇者>のゴーマン。剣術に優れ、“王国一の剣士”の名をほしいままにしている。王国の名門貴族エレファンテ家の跡取り息子だ。


そして、こいつは俺のことを戦闘中何もしていないと言っている。しかし、それについては何度も説明した。


「いや、すでに何回も言ったはずなんだが、俺はお前らの攻撃に合わせて……」


「うるせえ!また訳のわからねぇことを言いやがって!だいたいお前は<荷物持ち>なんだから、剣なんて使えるわけねぇだろーが!」


ゴーマンはさらに罵倒してくる。俺の能力についても、パーティに入るとき散々話した。だが、こいつらは全く理解してくれない。


「だから、俺は<荷物持ち>ではないぞ。剣術も魔法もできる<魔導剣士>で……」


「剣も魔法もできる奴なんているわけないじゃん。あんたは<魔導剣士>なんかじゃなくて、<荷物持ち>なの!現実が嫌になって、ずっと妄想してるんじゃない?」


いつもの耳ざわりな声で言ってきたのは、<魔法使い>のバルバラ。魔力が豊富なことを示す、紫色の髪が特徴だ。《ファイヤーボール》の魔法が特に得意で、あらゆる敵を一瞬で焼き尽くす。二つ名は“業火の魔女”だ。


「こんな人とずっとパーティを組んでいたなんて、私の一生の汚点でございますわ」


すまし顔のこいつは、<神官>のカトリーナだ。魔力の消費量が大きい回復魔法を、一手に引き受けている。その長い金髪も相まって、“地上に舞い降りた天使”と冒険者の男どもは噂している。


「アスカ、皆がお前に迷惑してるんだよ。そんなこともわからないのか?」


メンバーの中で最も冷静沈着で、“最強歩兵”とも言われている<重装兵>のダンまで罵ってくる。


うーむ、どうしたものか……。彼らは汚物を見るような目で睨んできている。そんな光景を前に、俺は一人途方に暮れていた。さっきのクエストで俺にかけられた【呪い】は解けたから、もうこのパーティーにいる必要はないのだが……。


俺がいなくなった後、こいつらの行く末が心配でならない。


「おい、何とか言えよ!ゴミアスカ!聞いてんのか!無能でバカでクズの間抜けが!」


まずは、<勇者>のゴーマン。お前は本当に剣術が上手いのか?構えも隙だらけだし、自分の間合いすら理解できてないじゃないか。俺は十分すぎるほど指摘していたはずなんだがな。お前は女の口説き方の前に、剣術の基本的な修行が必要だ。


「あんた、口もきけなくなっちゃったわけぇ?悔しかったら、何とか言い返してみなさいよ!このノロマ!」


次に、<魔法使い>のバルバラ。もしかしてお前、《ファイヤーボール》しか使えないんじゃないのか?別の魔法が発動できたところを、今まで見たことがない。俺がフォローしていたから良かったものの、それではこの先厳しいぞ。それに、魔力を練る訓練をちゃんとやってないだろ。その程度では、Cランクモンスターでさえ倒せないからな。


「はぁ、もう相手にするのもバカバカしいですわ。いい加減にして頂きたいものですね」


そして、<神官>のカトリーナ。どんなに小さな傷でも、かっこつけて全回復の魔法で治そうとするな。俺も一緒に回復させていたから魔力の消費量は少なかっただろうが、そんなんじゃすぐにバテるぞ。だいたい、お前は露出が多すぎだ。回復役が簡単にダメージを受けそうな格好をしていてどうする。


「お前が何も言わないせいで、皆の時間が取られているんだぞ。わかってるのか?俺たちはお前に迷惑しているんだ」


最後に、<重装兵>のダン。見栄を張って、まともに扱えない武器を装備してるんじゃない。お前がいつも自慢している斧や大盾は、重すぎて持つだけで精一杯だろ。言っておくが、お前の攻撃が当たったことは一度もなかったぞ。そして、クエスト中にバルバラとカトリーナばかり見るな。目の前にモンスターがいるのに、女の体をチラチラ見ているやつがあるか。


「だから、黙ってないで何とか言えって!このゴミクズ<荷物持ち>が!」


「何であたしらは、こんなバカを雇っちゃったんだろうね」


「ウンザリしすぎて、私はもう疲れてきてしまいました」


「いくら言い訳を考えたところで、お前の無能さはごまかせないからな」


だが、こいつらは俺にいなくなってほしいみたいだ。しかたがない、最後に聞くだけ聞いて出て行くか。こんなことなら、あの時幼馴染のノエルと一緒に行けば良かったな……。


「別に俺はこのパーティーを抜けても全く構わないんだが、俺がいなくなってお前らホントに大丈夫か?」

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