第16話 山場を越えたと思っていました

とうとう、最終コーナーへ到着しました。


後方は大型トラックがピッタリ付いてます。

最後に最大のカーブ・・・もはや10kmほどのスピードです。


今思うと、私は学生時代毎日バイクに乗っていたんですが・・・

もちろん、今日の様な雨の日も、今の様な暗い時も、寒い時も。

路面状態の悪い、積雪の日もバイクに乗っていました。

バイク歴は、高校卒業時に原付に乗り出して、小型限定、中型免許と徐々に大きくなっていき、18~31歳ごろまで何らか乗っていました。

好きなバイクはモトクロスで、出足の速さと乗りやすさが快感でした。

一時期バイクにはまり、レースの様な事もしていました。


つまり・・・


そこそこ自信がありました。

思い出は、時が過ぎれば過ぎるほど美化されるもので、13年の月日と共に過信に変わってしまたのでしょうか?

もしくは、衰えなのでしょうか?


まさにリピートライダーになるときのアドバイスとして言われていた事です。


自分でもバイクに毎日乗っていたあの頃が本当だったか分からなくなってきました。

もしかしたら、自分自身が自分自身の記憶に対して盛っている状態なのでしょうか?

年上の人が、過去の自分の武勇伝を語るのを聞いたことがあります。

その人は、意図的に話を盛っているのではなく、もしかしたら今の私の様に、自分自身が自分自身の記憶に対して盛っている状態なのではないでしょうか?


13年後の今は、震えながら10kmでカーブを回るチキンライダーです。

この事実を知らない方が、きっと幸せだったかも知れません。。。


疲れ、寒さ、暗さ、老い、雨、怖さ、悔しさ、悲しさ

今は、とにかく早く家族に会いたい。


山道を抜け、ついに大東市へ入れました。


この時、私は、文字通り、この旅の山場を越えたと思っていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る